悪いけど魔法少女最強は俺♂だから

第一章 誕生

異世界転生に成功したらしい。

死んだ時の話ができるのはなぜか。前世の記憶を持ったまま生まれ変わったからだ。
そう、俺は見事に転生していた。
前世の記憶がある、けれど明らかに前とは異なる世界に生を授かっていた。
間違いなく異世界転生をしていた。

前世ではファンタジー世界に憧れながらも、ファンタジーとは対極の科学一筋で過ごしてきた。科学を志した理由も、魔法に一番近い存在は何かを考えて辿り着いた妥協点だったからに、前世で憧れ続けた魔法のある世界で生まれ変わったというだけで、もう感無量だった。

素晴らしいと思った。
だって、魔法があるのだ。
魔法を自分の意のままに使えたら、なんて素敵だろう。
前世の記憶は引き継いでいるが、まぁ赤ちゃんがいきなり喋りだしたりとかしたら怪しいし、子どもが哲学をいきなり語り出したりしたら変だろう。世の中実にその辺はうまくできていて、幼少期の間は、前世の記憶を持った人格と身体本体が持つ人格とか並立して存在して、TPOに合わせて人格を入れ替えて行動していたとでも言えば分かりやすいだろうか。
独立した二つの人格が時間をかけて融合されてきたという説明の方がしっくりくるかも知れない。とにもかくにも、前世の記憶を持ったままでファンタジー世界に転生して、未来に期待を馳せながら幼少期を過ごした。
そして、言葉と文字はこっそり誰もいない所で本を読んだりしながら、勉強をした。そんなある日に、ある本を読み衝撃の事実を知ることになる。

本の名前は、「魔法少女の素質と聖獣の選び方」だった。
読んでみると衝撃の事実が書かれていた。

まず、魔法は女性にしか使えないのだそうだ。理由は単純明快だった。
魔法使いとなるには、聖獣と契約を交わす必要があるが、人間と契約する聖獣はオスのみであり、聖獣のオスは人間の若い女性としか契約しないからなのだそうだ。

なぜ女性としか聖獣が契約をしないのかという理由までは本に書いていなかった。

愕然とするしかなかったが、理由が分からない以上、諦めるにはまだ早いと思った。
取り急ぎ、聖獣と契約するために必要なこととして本に書かれていることは全て試すことにした。

・髪を長く伸ばすこと。
・常にスカートを着用すること。
・フリルがあしらわれている服など、女の子らしい服装をすること。

書かれていたことは全て守って生活した。
そうしたところ、ついに聖獣が俺の前に姿を現したのだった。