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第三話
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「良いか小僧。貴様はあの日、境内裏の沼で阿呆にボコられて死んだ。いいや、死に掛けておった。それを主様がこうして異界に飛ばす事で、お前をお救いくださった。そして、小僧…」
「はいはい、そうだね紺。」
「良いから聞かぬか。お主には役目が課せられておる。例えお前のちっぽけな命でも、粗末にするな。役目をしっかりと果たさねば…」
「うんうん、そうだね。」
「お前、死ぬぞ。」
狐が俺を脅す様な声でそう言い放った。
俺はさくさく進めていた足を遂にピタリ、と止めた。
ーーーうんざりだ。
そっか。
俺は、うんざりなんだ。
そう気付けば、腹が立つのも我慢出来なかった。
とうとうプッチン切れた俺は、大きな声で狐に言い付けてやった。
「死ぬぞ死ぬぞって言って、俺を脅すのは止めてくれないかなぁ?」
もうたくさんだ。
これ以上は、耳が腐っちまう。
死にたいも、死にたくないも。
もう、後ろ向きな言葉は嫌なんだ。
「俺は生きたいんだ。生きるって決めたんだ。それなのに、なんでお前はそんなに死ぬ死ぬ言うんだ。ふざけるなよ!俺の、塵クズでもミジンコでも良いがその命を軽んじているのは、一体どっちだよコラァ!!」
狐は何も言わなかった。
でも、俺は言いたいことが言えた。
すっきりだ。
あの狐の主人が誰かは知らないけど、俺を生かしてくれたのは本当なんだと思う。
それは、本当に。
「感謝してる。ありがとう、俺を生かしてくれて。ほんと、まじでありがとう。」
だって、ほんと。
俺はもっと、生きたいんだ。
花がきれいとか、風が吹いてるとか、アニメのリアタイとか、漫画の続きとか見たかったけど。
「ここは…何処だ?」
「異界だ、ここはお前の居た日の本では無い。」
「ぁあ?」
「ここは異界だ。我が主人の弟君があらせられる。彼の御方は残念な事に、この地でしか生きられない。」
「だから?」
俺には関係ない話だ。
何処の誰の弟でも、俺の生きる畑に必要無い。
「だが、お主は知っておるはずだ。」
「何を。」
「飛べぬ虫の虫かごの苦しさと座りの悪さを。」
「例え話は好きじゃない。」
「自由に、飛ぶのは嫌いか?」
その質問に、今度は俺が口をつぐむ番だった。
知ってる。本当は知ってるんだ。
暴れそうなくちと、胸のつかえと、時折訳も分からずに溢れて来る涙の理由を、俺は家を出てから、誰にも言っていない。
言えない、その辛さを俺は知っている。
「狐は知らないかも知れないけど。虫が飛ぶには羽がいるんだよ。」
「…お主には、あったのだろう?」
狐がそっと、言う。
俺の側を歩きながら。
「そうだな。俺はでも本当は、ジャンプしただけだったのかも。」
羽があって飛んだんじゃない。
ただ上にジャンプして羽があるように錯覚しただけかも知れない。
本当に、飛べたとは自分でも思ってない。
でも、ジャンプして見えた景色は案外良かったのにな。
ーーー何で、こんなトコ来てるんだ。
「お前なら救えると、主人は仰った。」
「そっか。」
「お前はその命を賭して、主人の願いを聞き届けなければならない。」
俺たちは死にかけの森を歩いた。
歩いて、今晩眠る所を探した。
腹も減ってるし、もう瞼がくっついてしまいそう。
俺たちは、今晩ここで眠る事にした。
夜の森なんて、怖いな。
ここには街灯なんて物はない。
狐は俺の頭の上で寝るらしい。
太々しいやつだ。
「俺は、誰も救えやしないよ。」
「可能だ。我が主人が仰るのだ。お前にはその素質がある。誰も、初めから出来やしない。苦労をするものだ。今の私のようになぁ。」
「なんだよ。俺のせいで苦労してるって言いたいのか。」
「ふむ。感が良いなお主。」
「うるせぇよ。」
それでも、一応。
これからはコイツが旅の仲間って事か。
「おやすみ、紺。」
「お主もな。」
「はいはい、そうだね紺。」
「良いから聞かぬか。お主には役目が課せられておる。例えお前のちっぽけな命でも、粗末にするな。役目をしっかりと果たさねば…」
「うんうん、そうだね。」
「お前、死ぬぞ。」
狐が俺を脅す様な声でそう言い放った。
俺はさくさく進めていた足を遂にピタリ、と止めた。
ーーーうんざりだ。
そっか。
俺は、うんざりなんだ。
そう気付けば、腹が立つのも我慢出来なかった。
とうとうプッチン切れた俺は、大きな声で狐に言い付けてやった。
「死ぬぞ死ぬぞって言って、俺を脅すのは止めてくれないかなぁ?」
もうたくさんだ。
これ以上は、耳が腐っちまう。
死にたいも、死にたくないも。
もう、後ろ向きな言葉は嫌なんだ。
「俺は生きたいんだ。生きるって決めたんだ。それなのに、なんでお前はそんなに死ぬ死ぬ言うんだ。ふざけるなよ!俺の、塵クズでもミジンコでも良いがその命を軽んじているのは、一体どっちだよコラァ!!」
狐は何も言わなかった。
でも、俺は言いたいことが言えた。
すっきりだ。
あの狐の主人が誰かは知らないけど、俺を生かしてくれたのは本当なんだと思う。
それは、本当に。
「感謝してる。ありがとう、俺を生かしてくれて。ほんと、まじでありがとう。」
だって、ほんと。
俺はもっと、生きたいんだ。
花がきれいとか、風が吹いてるとか、アニメのリアタイとか、漫画の続きとか見たかったけど。
「ここは…何処だ?」
「異界だ、ここはお前の居た日の本では無い。」
「ぁあ?」
「ここは異界だ。我が主人の弟君があらせられる。彼の御方は残念な事に、この地でしか生きられない。」
「だから?」
俺には関係ない話だ。
何処の誰の弟でも、俺の生きる畑に必要無い。
「だが、お主は知っておるはずだ。」
「何を。」
「飛べぬ虫の虫かごの苦しさと座りの悪さを。」
「例え話は好きじゃない。」
「自由に、飛ぶのは嫌いか?」
その質問に、今度は俺が口をつぐむ番だった。
知ってる。本当は知ってるんだ。
暴れそうなくちと、胸のつかえと、時折訳も分からずに溢れて来る涙の理由を、俺は家を出てから、誰にも言っていない。
言えない、その辛さを俺は知っている。
「狐は知らないかも知れないけど。虫が飛ぶには羽がいるんだよ。」
「…お主には、あったのだろう?」
狐がそっと、言う。
俺の側を歩きながら。
「そうだな。俺はでも本当は、ジャンプしただけだったのかも。」
羽があって飛んだんじゃない。
ただ上にジャンプして羽があるように錯覚しただけかも知れない。
本当に、飛べたとは自分でも思ってない。
でも、ジャンプして見えた景色は案外良かったのにな。
ーーー何で、こんなトコ来てるんだ。
「お前なら救えると、主人は仰った。」
「そっか。」
「お前はその命を賭して、主人の願いを聞き届けなければならない。」
俺たちは死にかけの森を歩いた。
歩いて、今晩眠る所を探した。
腹も減ってるし、もう瞼がくっついてしまいそう。
俺たちは、今晩ここで眠る事にした。
夜の森なんて、怖いな。
ここには街灯なんて物はない。
狐は俺の頭の上で寝るらしい。
太々しいやつだ。
「俺は、誰も救えやしないよ。」
「可能だ。我が主人が仰るのだ。お前にはその素質がある。誰も、初めから出来やしない。苦労をするものだ。今の私のようになぁ。」
「なんだよ。俺のせいで苦労してるって言いたいのか。」
「ふむ。感が良いなお主。」
「うるせぇよ。」
それでも、一応。
これからはコイツが旅の仲間って事か。
「おやすみ、紺。」
「お主もな。」
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