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殺人鬼のルーティン
しおりを挟む美しい造形が目の前に有る。
店主が測った様に包丁を滑らせてカットしたこの美しく重たい角。
「うん。」
定規も器具も使わずにピタリ、と60度。
「相変わらず美しい。よく出来ているね。」
少し大きめにカットされた60度のケーキは1日にたった6ピースしか作られない。つまり、この一台だけだ。
僕が来た時にはもう3つしか無かった。
だが、この美しさに気付く人間が他にも居るという事だ。
素晴らしい。
それに比べれば、少し雑な味のコーヒーを淹れる。豆は風味を味わうに良い物を使っている筈だが。恐らく湯の温度がなっていない、のだろう。
一口、こくりと飲む。
「うん。」
ここの少し雑なコーヒーが僕のパロメーターになっている。
絶妙に雑な味を穏やかに飲めたなら、今日の僕は調子が良い。
逆に、この味に文句を付けたくて堪らなくなったら、今日の僕は機嫌が悪い。
「まぁまぁだね。いつも通りだ。」
ーーそれなら、プランAで行こうか。
今夜は大事な仕事が有るんだ。
その前には必ず、この造形の美しいケーキと雑な味のするコーヒーを飲んでいる。
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