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第四章 青海の檻

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その先には一同怯え震えている生徒や船員の姿が映し出された。
「…今ここに映っているのが何なのか分かるか?愚民ども。お前たちの宝とも言える子供たちが我々の手の内にある。…これが何を意味するか分かるか?」
そう言って今度は冷たい笑みを浮かべながら右手の拳銃を子供たちの方に向けながら口を開く。
銃口を向けられた生徒達は一斉に涙混じりの悲鳴を上げだす。

「日本政府並びに全国民に告ぐ。お前たちが捕えてる天祖・天海光耀と我らの同志達を解放することを我ら真なるメシアは命ずる。一時間以内だ。」
一時間以内という言葉に囚われの生徒や船員たちは騒然とする。国中を騒然とさせた犯罪者達を釈放するなんて大それた事、それも一時間以内になんて出来る訳がない。

「今言った通り一時間以内に我々の要求が遂行されなかった場合、十分に二人ずつ、魂を天祖の贄としていく」
つまりは人質を殺す、という事だろう。直接言葉にしなくても佐々岡の様子と状況からして誰もが容易に想像できる。
この後も滔々とうとうと自分達が何故こんな事をするのか、そしてそれは誰の為で誰の所為せいか、そんな中身の無い内容の演説を延々と繰り返しだす。
多くの生徒や生徒たちは、銃を突きつけられている恐怖、そしてすぐそこに転がっている血まみれの肉塊になってしまった航海士が視界の隅に入り、次は自分の番じゃないかという恐れに皆一様に小さくなっている。
…が、一人、佐々岡の演説を沸々と胸の内に怒りに変えている者がいた。

栗林美優。

佐々岡が一人悦に入って熱弁を振るってる中すっくと立ち上がり、指差しながら叫び出す。

(続く)
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