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第四章 青海の檻
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やがてプレジャーボートはゆっくりと船に近づき、船体ギリギリ近くまで寄せると客船に縄梯子が投げ込まれ、客船側にいる教団の人間がそれをしっかり固定すると、下のプレジャーボートの方へ合図した。
その合図をきっかけに、迷彩服に防弾ベスト、そして鈍く硬質な黒色に光るSMGを吊り下げた屈強そうな男達が数人、素早い動きで客船側に乗り込んできた。
客船に乗り込んできた男達はSMGを四方に構え辺りを警戒すると、一斉にデッキの方へと駈け出し、佐々岡の元へと向かっていく。
「お待たせしました、佐々岡司祭」
男達の集団が佐々岡の元に辿り着くと、とりわけ精悍な顔つきの男が一人前に出、佐々岡に声をかけた。
「長崎支部の片山同志ですね。ご苦労様です。長崎支部は教団きっての武闘派ぞろいと聞いてましたが、皆しっかりと訓練されているようで心強いですね」
「長崎の者は私が直々に鍛え込んであります故、皆勇敢な戦士であります。我々がいる以上、万に一つの心配も失敗もありません」
片山と呼ばれた男は佐々岡とがっちり握手をしながら、どっしりとした厚みのある声でそう応えた。
他の迷彩服の男達と格好は同じだが、針金のように固く突き上げた短髪に精悍な顔つき、そして何よりも滲み出てくるような闘気と威圧感は他の者を圧倒し、黒眼に宿る力強い光は、面と向かって話す佐々岡も思わず怯んでしまいそうになる。
「…片山同志、よろしく頼みます。そろそろ此方の準備も出来そうなので、手筈通りお願いします。」
「了解した」
佐々岡の言葉に片山が頷くと同時に、離れたところでカメラやパソコン等の機材の組立と接続をしていた男が、二人に向かってOKのサインを出した。
「では、予定通り始めましょう。一刻の時間も惜しい」
そう言って佐々岡は悠然とカメラに向かって行き、定点に立つと一度目を閉じ、ゆっくりと一度深呼吸をすると再び目を開き、鋭い視線をカメラのレンズへと向け、大きく口を開く。
「…この中継を見ている日本国民並びに偽りの日本政府よ。我々はもう一度この国を浄化すべく立ち上がった『真なるメシア』である。我々の存在を覚えているか?お前たちは我らが天祖、天海光耀の天啓を蔑ろにし、国民総出で姦計を図り、我々を犯罪者扱いしたばかりか天海光耀を始め多くの同志達を捕え、一方的に処刑をしようとしている。何たる悪逆!何たる非道!」
熱を帯びた演説はやがて怒号に変わり、握り拳を振るいながら憤怒の形相でカメラへとまくし立てる佐々岡。
やがて自分が興奮しすぎていることに気付き、一度言葉を切って息を整えてから、もう一度カメラに向かって言葉を紡ぎ出す。
「……我々の声に耳を傾けることなく、この国はエセ指導者共によっていよいよ明日の光無き道を歩もうとしている。この国のたった数百数十の政治家と名乗る愚劣な人間どものせいで、この神国日本は地獄よりなお深い闇に落とされようとしている! たかだか一部の、自らが特権階級と思い込んでる愚かな者たちへ、我々真なるメシアはこの国に聖なる鉄槌を下さねばならない!そして我らが天祖、天海光耀と同志達をこの手に取り戻し、神国日本を導かねばならない!」
顔は烈火の如くに紅潮し、目は血走った凄まじい形相でカメラに向け大演説する佐々岡。
ここで自分の演説に熱くなり過ぎた感情を一度クールダウンさせる様に目を閉じ、今一度息を整え直す。
再び静かに目を開けるといつもの神経質そうな表情に戻り、今度は目線を横に向けて、カメラをそちらの方向に振る。
(続く)
その合図をきっかけに、迷彩服に防弾ベスト、そして鈍く硬質な黒色に光るSMGを吊り下げた屈強そうな男達が数人、素早い動きで客船側に乗り込んできた。
客船に乗り込んできた男達はSMGを四方に構え辺りを警戒すると、一斉にデッキの方へと駈け出し、佐々岡の元へと向かっていく。
「お待たせしました、佐々岡司祭」
男達の集団が佐々岡の元に辿り着くと、とりわけ精悍な顔つきの男が一人前に出、佐々岡に声をかけた。
「長崎支部の片山同志ですね。ご苦労様です。長崎支部は教団きっての武闘派ぞろいと聞いてましたが、皆しっかりと訓練されているようで心強いですね」
「長崎の者は私が直々に鍛え込んであります故、皆勇敢な戦士であります。我々がいる以上、万に一つの心配も失敗もありません」
片山と呼ばれた男は佐々岡とがっちり握手をしながら、どっしりとした厚みのある声でそう応えた。
他の迷彩服の男達と格好は同じだが、針金のように固く突き上げた短髪に精悍な顔つき、そして何よりも滲み出てくるような闘気と威圧感は他の者を圧倒し、黒眼に宿る力強い光は、面と向かって話す佐々岡も思わず怯んでしまいそうになる。
「…片山同志、よろしく頼みます。そろそろ此方の準備も出来そうなので、手筈通りお願いします。」
「了解した」
佐々岡の言葉に片山が頷くと同時に、離れたところでカメラやパソコン等の機材の組立と接続をしていた男が、二人に向かってOKのサインを出した。
「では、予定通り始めましょう。一刻の時間も惜しい」
そう言って佐々岡は悠然とカメラに向かって行き、定点に立つと一度目を閉じ、ゆっくりと一度深呼吸をすると再び目を開き、鋭い視線をカメラのレンズへと向け、大きく口を開く。
「…この中継を見ている日本国民並びに偽りの日本政府よ。我々はもう一度この国を浄化すべく立ち上がった『真なるメシア』である。我々の存在を覚えているか?お前たちは我らが天祖、天海光耀の天啓を蔑ろにし、国民総出で姦計を図り、我々を犯罪者扱いしたばかりか天海光耀を始め多くの同志達を捕え、一方的に処刑をしようとしている。何たる悪逆!何たる非道!」
熱を帯びた演説はやがて怒号に変わり、握り拳を振るいながら憤怒の形相でカメラへとまくし立てる佐々岡。
やがて自分が興奮しすぎていることに気付き、一度言葉を切って息を整えてから、もう一度カメラに向かって言葉を紡ぎ出す。
「……我々の声に耳を傾けることなく、この国はエセ指導者共によっていよいよ明日の光無き道を歩もうとしている。この国のたった数百数十の政治家と名乗る愚劣な人間どものせいで、この神国日本は地獄よりなお深い闇に落とされようとしている! たかだか一部の、自らが特権階級と思い込んでる愚かな者たちへ、我々真なるメシアはこの国に聖なる鉄槌を下さねばならない!そして我らが天祖、天海光耀と同志達をこの手に取り戻し、神国日本を導かねばならない!」
顔は烈火の如くに紅潮し、目は血走った凄まじい形相でカメラに向け大演説する佐々岡。
ここで自分の演説に熱くなり過ぎた感情を一度クールダウンさせる様に目を閉じ、今一度息を整え直す。
再び静かに目を開けるといつもの神経質そうな表情に戻り、今度は目線を横に向けて、カメラをそちらの方向に振る。
(続く)
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