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第四章 青海の檻
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「俺が日本に来たのは、栗林美優、お前を護衛するという依頼の為に来た」
「…はあっ?私ぃっ?!」
またもや素っ頓狂な声の美優。何で私を???と顔で訴えてくる。
「ちょ、ちょっと誰?そんなこと赤羽君にお願いした人って?そんなの聞いてないよ!!何で私を…」
その時同時に冷蔵室の外から鉄が爆ぜるような一際大きい音が響いてきた。厨房入口のバリケードが崩されたようだ。
その音にハッとする美優と、一気に引き締まった表情に戻る隼。
「しっ。お喋りはここまでだ。奴らが来るぞ」
「ど、どうするの?!どうやってここから…」
「栗林、さっき渡したアレはちゃんと水に濡らしてあるか?」
「え?エプロンのこと?え、ええ。それなら2枚ちゃんと水に濡らして絞ってあるけど」
「よし、その一枚を俺に、もう一枚はお前が持て。それを広げて頭と体を覆うようにしろ」
「???」
「それとこれをお前に渡しておく。3Dプリンター製の粗末な銃だが、何も無いよりマシだろう。もしもの時はこれを使え」
そう言って隼は白色で見た目がまるで三角定規のような、簡素な作りの拳銃を美優に渡す。
「こ、これって…」
「大した威力は無いが、万が一の時はそれを使え」
冷蔵室の外から、怒号と敵の侵入してくる気配が伝わってくる。
隼は美優を真っ直ぐ見据え、力強く声を掛ける。
「よし、いいか。これからオレが合図したら、扉を開けてここから出る。お前は身を屈めながら俺にしっかりついて来い。いいか、何があっても怯まずについて来るんだ。いいな?」
やや不安気な表情見せていた美優だが、力強い眼の光とどっしり落ち着いた声の隼に勇気づけられ、肚を決める。
「…うん、わかった!」
* * *
厨房の扉を男二人が幾度も体当たりして、その度に鉄と鉄がぶつかり合い喧嘩する派手な音が響く。
隼と美優を追ってきた教団の兵士達は、二人を厨房まで追い詰めたまでは良かったが、隼が即席で築いたバリケードに思いがけず足止めされていた。
隼たちを追ってきたのは七人。扉に体当たりしてこじ開けようとしている二人と、扉横両サイドの壁に張り付いて警戒している四名、そしてそれらを指示しているヘッドセットを付けた男の計七名。片山がヘッドセットの無線でB-1と呼んでいたのは、この男のようだ。
男達は皆一様に殺気立っている。今回の仕事はガキのお守りとタカをくくっていたのが、まさかの抵抗に遭い仲間数人が殺られている。
普段から血の小便が出るほどの過酷な訓練を片山から叩き込まれてる男達は、片山同様に一戦士としての矜持がある。それが得体の知れないネズミに仕事を邪魔され、挙句に仲間を殺されたとあっては、黙っていられる訳がない。男達の目に暗くどす黒い怒りの火がちろちろと燃えている。
扉に幾度目かの体当たりをした二人の男のうち、片方が声を上げる。
「っ、おし!次の体当たりで扉の向こうの邪魔なモンが崩せそうだ!」
続いて横で厨房内の気配を探っていた男が口を開く。
「室内から特に物音や気配はしません。突入の際には十分に注意した方が良いかと」
六人の男達の視線は一斉にヘッドセットのリーダーへと集中する。
「よし、室内突入後は三手に分かれネズミを追い詰める。いいか、間違っても小鹿は殺すなよ。殺るのはネズミだけだ、そこだけは徹底しておくぞ」
「「了解」」
男達の統率された返事。そしてそれぞれが自分の持ち場に着き、次のアクションへの準備をする。ここからは全員ハンドサインととアイコンタクトで連携をとる。こちらからの無駄な物音はカットして、相手へこちらの狙いと動きを察知させないようにする為だ。
扉の前に再び男二人が体当たりの構えをとる。そしてリーダーに視線を送り、コクリと頷く。扉の横に張り付いてる男達もSMGを構えた状態で、いつでも突入できるとサインを送る。
六人の準備が整ったのを確認すると、リーダーの男は音も無く、しかし鋭い動きで突入の合図を送る。
合図と同時に二人の男が渾身の力で厨房の扉に体当たりを掛ける。体格の大きい二人の男が扉にぶち当たると、派手な音を立てて扉は壊れ、そしてその衝撃のままに奥のバリケードが大きく崩れ、厨房内への道が開けた。
扉が破壊され中のバリケードも崩れた感触が伝わると、男達は一斉に内部に突入しようとする。
(続く)
「…はあっ?私ぃっ?!」
またもや素っ頓狂な声の美優。何で私を???と顔で訴えてくる。
「ちょ、ちょっと誰?そんなこと赤羽君にお願いした人って?そんなの聞いてないよ!!何で私を…」
その時同時に冷蔵室の外から鉄が爆ぜるような一際大きい音が響いてきた。厨房入口のバリケードが崩されたようだ。
その音にハッとする美優と、一気に引き締まった表情に戻る隼。
「しっ。お喋りはここまでだ。奴らが来るぞ」
「ど、どうするの?!どうやってここから…」
「栗林、さっき渡したアレはちゃんと水に濡らしてあるか?」
「え?エプロンのこと?え、ええ。それなら2枚ちゃんと水に濡らして絞ってあるけど」
「よし、その一枚を俺に、もう一枚はお前が持て。それを広げて頭と体を覆うようにしろ」
「???」
「それとこれをお前に渡しておく。3Dプリンター製の粗末な銃だが、何も無いよりマシだろう。もしもの時はこれを使え」
そう言って隼は白色で見た目がまるで三角定規のような、簡素な作りの拳銃を美優に渡す。
「こ、これって…」
「大した威力は無いが、万が一の時はそれを使え」
冷蔵室の外から、怒号と敵の侵入してくる気配が伝わってくる。
隼は美優を真っ直ぐ見据え、力強く声を掛ける。
「よし、いいか。これからオレが合図したら、扉を開けてここから出る。お前は身を屈めながら俺にしっかりついて来い。いいか、何があっても怯まずについて来るんだ。いいな?」
やや不安気な表情見せていた美優だが、力強い眼の光とどっしり落ち着いた声の隼に勇気づけられ、肚を決める。
「…うん、わかった!」
* * *
厨房の扉を男二人が幾度も体当たりして、その度に鉄と鉄がぶつかり合い喧嘩する派手な音が響く。
隼と美優を追ってきた教団の兵士達は、二人を厨房まで追い詰めたまでは良かったが、隼が即席で築いたバリケードに思いがけず足止めされていた。
隼たちを追ってきたのは七人。扉に体当たりしてこじ開けようとしている二人と、扉横両サイドの壁に張り付いて警戒している四名、そしてそれらを指示しているヘッドセットを付けた男の計七名。片山がヘッドセットの無線でB-1と呼んでいたのは、この男のようだ。
男達は皆一様に殺気立っている。今回の仕事はガキのお守りとタカをくくっていたのが、まさかの抵抗に遭い仲間数人が殺られている。
普段から血の小便が出るほどの過酷な訓練を片山から叩き込まれてる男達は、片山同様に一戦士としての矜持がある。それが得体の知れないネズミに仕事を邪魔され、挙句に仲間を殺されたとあっては、黙っていられる訳がない。男達の目に暗くどす黒い怒りの火がちろちろと燃えている。
扉に幾度目かの体当たりをした二人の男のうち、片方が声を上げる。
「っ、おし!次の体当たりで扉の向こうの邪魔なモンが崩せそうだ!」
続いて横で厨房内の気配を探っていた男が口を開く。
「室内から特に物音や気配はしません。突入の際には十分に注意した方が良いかと」
六人の男達の視線は一斉にヘッドセットのリーダーへと集中する。
「よし、室内突入後は三手に分かれネズミを追い詰める。いいか、間違っても小鹿は殺すなよ。殺るのはネズミだけだ、そこだけは徹底しておくぞ」
「「了解」」
男達の統率された返事。そしてそれぞれが自分の持ち場に着き、次のアクションへの準備をする。ここからは全員ハンドサインととアイコンタクトで連携をとる。こちらからの無駄な物音はカットして、相手へこちらの狙いと動きを察知させないようにする為だ。
扉の前に再び男二人が体当たりの構えをとる。そしてリーダーに視線を送り、コクリと頷く。扉の横に張り付いてる男達もSMGを構えた状態で、いつでも突入できるとサインを送る。
六人の準備が整ったのを確認すると、リーダーの男は音も無く、しかし鋭い動きで突入の合図を送る。
合図と同時に二人の男が渾身の力で厨房の扉に体当たりを掛ける。体格の大きい二人の男が扉にぶち当たると、派手な音を立てて扉は壊れ、そしてその衝撃のままに奥のバリケードが大きく崩れ、厨房内への道が開けた。
扉が破壊され中のバリケードも崩れた感触が伝わると、男達は一斉に内部に突入しようとする。
(続く)
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