Soldaten! (ゾルダーテン!)

柴崎きりを

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第四章 青海の檻

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 自分達の身がどうなるか分からないという極度の緊張下、こんなどうでもいい事を話している。
冷蔵室の外では今にも厨房に突入すべく追手達がバリケードを崩そうとする大きな音が響いているというのに、隼と話をしていて不思議とそういった不安や恐れみたいなものが薄くなっていく。
五分にも満たないたったわずかな時間、だがそれだけで美優は隼を信用に足る人物だと確信した。

 そして美優はもう一つ気になる事を、思い切って聞いてみることにした。
「それとさ、もう一つ気になってるんだけど、赤羽くんさ、その、どこで銃の撃ち方とか覚えたの?それにさっき迷い無く人に撃ったりしてたけど…」
「…これか」
 そういって冷蔵室の扉を背にしたまま、だらりと下げた右手の先の銃に二人の視線が集まる。銃は相変わらず黒く鈍い光を放っている。
「……ふぅ。それこそ何から話せばいいものか、だな」
はじめて見せる隼の困惑顔。左手で顎をさすりながら、口をへの字に曲げ口ごもる。
「あ、あの言いにくい事だったら別にいいんだけど…」
「いや、そういう訳じゃないんだがな」
やや遠慮がちに伺う美優に、軽く返す隼。
 ふう、と一息つき、再び隼はゆっくりと口を開きだす。

「俺は元々傭兵でね」
「…えっ?ヨーヘー?」
 一瞬、素っ頓狂な声で、美優。そしてそれにお構いなしに続ける隼。
「ああ。だから俺は高校生でも何でもない」
「??? ちょ、ちょっと待って。意味わかんないんだけど…。っていうかお父さんとお母さんは?お父さんのお仕事で海外に居たっていうのは…」
「父とか母とかそんな者はいない。物心ついたときから傭兵団で銃を握らされていた」
「そんな…」

 隼の予想だにせぬ答えに驚きを隠せない美優。
傭兵なんてものは映画やゲームの世界の世界でしか聞いたことの無い言葉だ。しかしそれが目の前に、それも自分と年恰好も同じくらいの少年の口から出てきた事に混乱して、どんな言葉を返していいか分からない。

「じゃあ、赤羽君は何で日本に来たの?傭兵ってその、戦争してるところに行くんでしょ?日本は別にどこの国とも戦争とかしてないよ?」
「傭兵は戦争だけが仕事じゃない。要人のガード、美術品や宝飾品の護送なんかも俺達傭兵が請け負う事もある。今回はその類で日本に来た」
 そこまで言って隼は一息つき、そして次の言葉を美優に伝えるべきかどうか逡巡する。
ある人物からの依頼で美優を守りに来た、という事を口にすべきか否か。

 本来の依頼内容は美優にそれと知られずに、影に徹して守ってくれという事だった。
美優本人はあくまで一般人、何事も無ければそれに越したことは無く、そのまま静かに生活していてくれれば良いという配慮もあった。
 が、これまでの状況が状況だっただけに、今更取り繕ったり、とぼけたりしても美優は納得しないだろう。
 この先乗り切るには美優の隼に対する確とした信頼と、彼女自身のある程度の自衛手段と協力が必要になる。
 そう判断した隼は美優に力のこもった眼の光を向けると、再び口を開きだす。
(続く)
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