Soldaten! (ゾルダーテン!)

柴崎きりを

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第四章 青海の檻

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「ええと、ええと、あの!」
「…なんだ、さっきから。落ち着いて喋れ」

 隼の落ち着きぶりにまたもやムッとしてしまう美優。だがそれをぐっと呑み込み、先程から感じている隼へのある違和感を口にする。

「あの、さ。なんでそんなに滑らかに喋れるの?日本語。ほらだってさ、いつもはもうちょっとこう、なんて言うのかな。カクカクとした感じの日本語じゃない? あ、いや!今の赤羽君の日本語ってさ、外国の人特有の喋り方というかなんというか…ああもぅ、説明が難しいなっ。…んんと、そう!ネイティブ!私たちと変わらない発音やアクセントで突然喋れるようになってるから、ビックリしてるの!ねぇ、何でなの?!」

 恐る恐る伺うような形で口火を切った美優だが、一度飛び出したら止まらない速射砲のような勢いに、思わずキョトンとする隼。覆面越しから覗く視線もどこか柔らかいものに変わっているのは気のせいか。 

「…ふむ。どう説明したらイイもんかな」
そう言いながら、逆向きに被っていたキャップを脱ぎ、髪をわしゃわしゃと掻きだす隼。外への警戒は相変わらず怠ってはいないが、隼から感じていた、触れると切れそうなまでの鋭い緊張感というのは、幾分薄くなっていると美優は感じる。

「外国語を話すっていうのは、コツさえ掴めばそれほど難しい事じゃない。大事なのは些細な事でも常にその国の言葉で物事を考える事だ」
「…?どういうこと?」
「例えば『腹が減った』とか『眠い』とか、そういった自分の内外で起きている事を、簡単な単語一言でもいいから覚えたい国の言葉で一日中、朝目覚めてから夜眠るまで考える事だ。そしてその言葉を実際に口に出す。そうすれば体も脳もその言葉に順応していって、相手の話す言葉も頭の中でいちいち『文字』として変換するのではなく、具体的な映像やイメージで浮かべることが出来るようになるし、その方が会話も素早くなる。そうなると言語の習得は早く出来る」
「…ほぇ~、そうなんだぁ…」
「少なくとも今の学校の授業で習っているような方法では英語の習得なんてとても時間が掛かるぞ。読み書きというのも大事だが、まずは話す事と聞き取ることが出来る様にならないといけない。文法なんて後で覚えればいいんだ」
「そうなの?文法通りに喋らないと通じないんじゃないの?」
「そんなことは無い。もちろん相手と精度の高い会話をするなら文法は必要だが、君らが言うカタコト言葉でも十分にやっていけるぞ。もっとも文法ばかり気にしていたら、いつまで経っても言葉なんか覚える事は出来ないがな」
「ふ~ん、なるほどぉ。それにしても赤羽くんの日本語があまりにも突然に流暢になり過ぎてビックリなんだけど」
「ああ…、それについては説明が長くなるからまた今度にしてくれ。俺も最初から普通に喋ればいいだろって言ったんだが、アイツ等が色々とキャラ設定だとか五月蠅く言うからな…。悪ノリしやがって」
「アイツら…?」
「ん、ああ、何でもない。気にするな」
 途中から急にしかめっ面で愚痴めいた話をする隼に、思わずプッと吹きだす美優。学校で見せていた表情と違い、そして今までの鋭く厳しい表情とも違う、どこか人間臭さと年相応の少年の表情と仕草に、美優は初めて隼との距離が近くなった
気がした。ここで初めて美優は心から「ああ、この人は敵じゃない」そう思えるようになった。
(続く)
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