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第四章 青海の檻
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* * *
吐く息が白くなる。冷蔵室の室温は三度、暖かな外の気温から一気に寒冷地のような室温の中に入れられるが、先程まで死に物狂いで走ってた美優には、まだ火照りの残る体に心地よい冷たさだ。
冷蔵室の中は美優の想像以上に広く、大人三人が両腕伸ばして横一列に並んでも十分に余裕のある幅で、奥行きもかなりある。美優達の泊まっている船室より遥かに広い事は確かだ。室内壁は棚状になっており、仕込んだ料理や食材などが棚の上にぎっしりと並んでいる。
美優は冷蔵室に入ると緊張の糸が途切れた様にぺたりと座り込み、大きく息をつく。隼は扉をしっかりロックしそのまま扉に背を預け、外の追手の動きに聞き耳を立てて警戒している。
二人きりの空間、二人の間に何となく微妙な空気が流れる。というより美優の方が隼に対して困惑している様子だ。船が乗っ取られてから今迄に自分降りかかった災厄についてもそうだが、その自分の窮地から救ってくれた隼の、その得体の知れなさ。普段教室では見せたことのない鋭い視線と無機質な声音、それにここまで逃げるまでに垣間見せた同年代の男子とは思えない身体能力の高さ。なによりも
当たり前の様に銃を扱えて
当たり前の様に人を撃つ
その事に美優は戸惑いと怖れを感じずにはいられなかった。
だがその隼のお陰で今自分はここにこうして無事でいられる。その事に感謝の気持ちが有るのも事実。
そんな様々な感情が綯交ぜとなって、どう接していいか分からない。ただ一つはっきりしてるのは、目の前の少年は自分を傷つけることは無いという事だけだ。
(ううう、どうしよ、なんか話した方がいいかな…?)
なんとも重い空気の中で口を開くことも無く、冷蔵ファンの大きく規則的な音だけが響いている。が、ついにその重い沈黙に耐えきれず美優が口を開く。
「あ、あのっ。えっと、その…」
「……?」
「…さっきは助けてくれてありがとう。赤羽君が来てくれなかったら私…」
「気にするな。そういう役目だからな」
「本当に…、って、え?役目??なにそれ…?」
「……」
隼から思わぬ返答が返ってきて、ぽかんとする美優。自分を助ける役目とはどういう事か聞き返そうとしたが、隼から発する雰囲気からは美優の疑問に答えてくれそうな気配はない。キャップと口元を覆うバンダナのせいで、その表情も伺うこともできない。
「……」
「……」
再び沈黙が室内を支配する。気まずい。
「あの、さ」
「なんだ」
美優は再び隼に声を掛ける。黙っていると不安と恐怖で心が押しつぶされそうになる。今までこんなにまで自分の命が危険になるなんて状況に遭遇したことなんて無い。心に押し寄せる恐怖と不安を誤魔化したい一心で、美優は何を話せばいいか一心不乱に考える。
(続く)
吐く息が白くなる。冷蔵室の室温は三度、暖かな外の気温から一気に寒冷地のような室温の中に入れられるが、先程まで死に物狂いで走ってた美優には、まだ火照りの残る体に心地よい冷たさだ。
冷蔵室の中は美優の想像以上に広く、大人三人が両腕伸ばして横一列に並んでも十分に余裕のある幅で、奥行きもかなりある。美優達の泊まっている船室より遥かに広い事は確かだ。室内壁は棚状になっており、仕込んだ料理や食材などが棚の上にぎっしりと並んでいる。
美優は冷蔵室に入ると緊張の糸が途切れた様にぺたりと座り込み、大きく息をつく。隼は扉をしっかりロックしそのまま扉に背を預け、外の追手の動きに聞き耳を立てて警戒している。
二人きりの空間、二人の間に何となく微妙な空気が流れる。というより美優の方が隼に対して困惑している様子だ。船が乗っ取られてから今迄に自分降りかかった災厄についてもそうだが、その自分の窮地から救ってくれた隼の、その得体の知れなさ。普段教室では見せたことのない鋭い視線と無機質な声音、それにここまで逃げるまでに垣間見せた同年代の男子とは思えない身体能力の高さ。なによりも
当たり前の様に銃を扱えて
当たり前の様に人を撃つ
その事に美優は戸惑いと怖れを感じずにはいられなかった。
だがその隼のお陰で今自分はここにこうして無事でいられる。その事に感謝の気持ちが有るのも事実。
そんな様々な感情が綯交ぜとなって、どう接していいか分からない。ただ一つはっきりしてるのは、目の前の少年は自分を傷つけることは無いという事だけだ。
(ううう、どうしよ、なんか話した方がいいかな…?)
なんとも重い空気の中で口を開くことも無く、冷蔵ファンの大きく規則的な音だけが響いている。が、ついにその重い沈黙に耐えきれず美優が口を開く。
「あ、あのっ。えっと、その…」
「……?」
「…さっきは助けてくれてありがとう。赤羽君が来てくれなかったら私…」
「気にするな。そういう役目だからな」
「本当に…、って、え?役目??なにそれ…?」
「……」
隼から思わぬ返答が返ってきて、ぽかんとする美優。自分を助ける役目とはどういう事か聞き返そうとしたが、隼から発する雰囲気からは美優の疑問に答えてくれそうな気配はない。キャップと口元を覆うバンダナのせいで、その表情も伺うこともできない。
「……」
「……」
再び沈黙が室内を支配する。気まずい。
「あの、さ」
「なんだ」
美優は再び隼に声を掛ける。黙っていると不安と恐怖で心が押しつぶされそうになる。今までこんなにまで自分の命が危険になるなんて状況に遭遇したことなんて無い。心に押し寄せる恐怖と不安を誤魔化したい一心で、美優は何を話せばいいか一心不乱に考える。
(続く)
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