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第一章 黒の少年
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こちらに向かってくるモノは、間違いなく人だった。
ただ、その辺に転がっている兵士の死体を銃弾の盾代わりにしながら突っ込んできたため、遠目では何が向ってくるのか判別できなかったのだ。
盾代わりになっている死体は銃撃を受ける度、糸で吊るされている操り人形の様に、だらしなく手足を跳ねさせ、血肉を飛び散らせる。
二人の眼前十五メートルまで近づいた時、二人は銃撃をアサルトライフルから拳銃に切り替えた。これ以上懐に潜り込まれるならば、拳銃の方がより的確に獲物を狙いやすい。
ロバートはアサルトライフルを捨て、ガンホルスターからベレッタM9を取り構えようとした時、視界が不意に暗くなった。黒い敵はさっきまで盾代わりにしてきた死体を向ってきた勢い以上にロバートへ投げつけてきたのだ!
予想だにしない事態にロバートは一瞬反応が遅れ、回避できずにモロに死体のダイブを体で受け止めてしまう。
その衝撃で視界から敵を逃し、死体を薙ぎ払い慌てて周囲を見回そうとした時にホウジョウから切迫した怒号が響いた。
「ロブ!右だ!」
悲鳴に近いホウジョウの叫び声の甲斐なく、敵はロバートの視界の死角に回り込み、そこから一気に間合いを詰めてロバートの顎に強烈な掌打アッパーを叩きこんだ!
強烈な一撃で脳を揺らされ、そのまま意識を根こそぎ持ってかれたロバートの腰から黒い敵はコンバットナイフを手早く引き抜き、そのまま一気に喉元を掻き切ろうとする。
刹那、鋭い殺気と発砲音が響いたと同時に敵はロバートから大きく飛び離れた。ホウジョウが間一髪で両手に持つ拳銃でけん制したのだ。
黒い敵の殺気は一気にホウジョウに集中しだした。肩で荒く息をつき、獣のような唸り声をあげつつ、ロバートから奪ったコンバットナイフをもった右腕はだらりと下げている。
隙あらばホウジョウの喉元に食らいつこうかとゆらゆらとナイフを揺らしている。
ホウジョウも敵を睨みつけながら拳銃をしまい、右逆手にゆっくりとコンバットナイフを構えた。
先程までの相手の異常なスピードを目にしたホウジョウは、拳銃での応戦よりナイフでの近接格闘を選んだ。
懐に潜りこまれた時の一瞬の隙が、間違いなく命取りになると判断したからだ。
コンバットナイフへ滾るような体温が伝わっていき、やがて自身の体に馴染んでいく。
やがて右手に持ったコンバットナイフを正手に持ち替え、その切っ先は上を向いた形で前に、左手は開き手でやや胸元に引いた形で構え、真っ直ぐに相手を見据えつつも力を抜いた姿勢で構えていた。
空手の前羽の構えのような型だ。
ホウジョウはゆっくりと視線を相手の頭頂から足先まで視界に収める。
黒い黒いと思っていた相手の格好は、どうやら自分と同じ戦闘服を着ているようだ。
ただその黒色はすべて、全身に浴びた返り血がそのまま乾いてしまったようだった。
距離数メートルで相対してても物凄い異臭が相手から伝わってくる。思わず自分の鼻をもぎ取りたくなるほどだ。
何より心中で驚いたのは、敵の容貌が明らかに少年の顔つきだった事だ。
年の頃なら十四・十五歳くらい。無造作に伸びた髪の毛を後ろに束ね、顔もやはり血が乾いてあちこちバリバリにひび割れた、どす黒い顔色になっている。
少年兵自体はさほど珍しいものではない。
内戦地帯の反政府側の兵士の中には、これぐらいの年の少年兵が混ざってるのは当たり前にあることだ。
しかし目の前に相対する少年からは、今まで目にしてきた兵士の中でも群を抜くプレッシャーを感じる。
これほどまでに強烈な殺気を放つ少年兵に会ったことはない。
そもそも表情は正気を失っているような、狂乱じみた様子で目の焦点は合っておらず、口からは絶えず涎と獣の唸り声しか出てこない。
(薬物にやられてるか…?)
少年を一瞥し激しく回るホウジョウの思考の中で、ふと疑問が沸き起こった。
…今立っているこの広場を覆うように転がっている兵士の死体の数々。
…もしやこの少年が一人でやったのではないか?
そう思った瞬間にホウジョウの背中に今まで感じたことのない戦慄が走る。
それは眼前の阿鼻叫喚の光景をたった一人の少年が作り出したという畏怖感、そしてそれを確実に全うする技量と胆力。
もしそうであればコイツは非常に危険だ。
心中で呟きつつ口から息を細く吐き、少年の肩が上がる荒い息にリズムを合わせていく。
数刻互いに息を整え、そして少年とホウジョウが息を目一杯に肺に蓄えた時、先に少年が黒い弾丸となって低い体勢で飛び込んできた。
ただ、その辺に転がっている兵士の死体を銃弾の盾代わりにしながら突っ込んできたため、遠目では何が向ってくるのか判別できなかったのだ。
盾代わりになっている死体は銃撃を受ける度、糸で吊るされている操り人形の様に、だらしなく手足を跳ねさせ、血肉を飛び散らせる。
二人の眼前十五メートルまで近づいた時、二人は銃撃をアサルトライフルから拳銃に切り替えた。これ以上懐に潜り込まれるならば、拳銃の方がより的確に獲物を狙いやすい。
ロバートはアサルトライフルを捨て、ガンホルスターからベレッタM9を取り構えようとした時、視界が不意に暗くなった。黒い敵はさっきまで盾代わりにしてきた死体を向ってきた勢い以上にロバートへ投げつけてきたのだ!
予想だにしない事態にロバートは一瞬反応が遅れ、回避できずにモロに死体のダイブを体で受け止めてしまう。
その衝撃で視界から敵を逃し、死体を薙ぎ払い慌てて周囲を見回そうとした時にホウジョウから切迫した怒号が響いた。
「ロブ!右だ!」
悲鳴に近いホウジョウの叫び声の甲斐なく、敵はロバートの視界の死角に回り込み、そこから一気に間合いを詰めてロバートの顎に強烈な掌打アッパーを叩きこんだ!
強烈な一撃で脳を揺らされ、そのまま意識を根こそぎ持ってかれたロバートの腰から黒い敵はコンバットナイフを手早く引き抜き、そのまま一気に喉元を掻き切ろうとする。
刹那、鋭い殺気と発砲音が響いたと同時に敵はロバートから大きく飛び離れた。ホウジョウが間一髪で両手に持つ拳銃でけん制したのだ。
黒い敵の殺気は一気にホウジョウに集中しだした。肩で荒く息をつき、獣のような唸り声をあげつつ、ロバートから奪ったコンバットナイフをもった右腕はだらりと下げている。
隙あらばホウジョウの喉元に食らいつこうかとゆらゆらとナイフを揺らしている。
ホウジョウも敵を睨みつけながら拳銃をしまい、右逆手にゆっくりとコンバットナイフを構えた。
先程までの相手の異常なスピードを目にしたホウジョウは、拳銃での応戦よりナイフでの近接格闘を選んだ。
懐に潜りこまれた時の一瞬の隙が、間違いなく命取りになると判断したからだ。
コンバットナイフへ滾るような体温が伝わっていき、やがて自身の体に馴染んでいく。
やがて右手に持ったコンバットナイフを正手に持ち替え、その切っ先は上を向いた形で前に、左手は開き手でやや胸元に引いた形で構え、真っ直ぐに相手を見据えつつも力を抜いた姿勢で構えていた。
空手の前羽の構えのような型だ。
ホウジョウはゆっくりと視線を相手の頭頂から足先まで視界に収める。
黒い黒いと思っていた相手の格好は、どうやら自分と同じ戦闘服を着ているようだ。
ただその黒色はすべて、全身に浴びた返り血がそのまま乾いてしまったようだった。
距離数メートルで相対してても物凄い異臭が相手から伝わってくる。思わず自分の鼻をもぎ取りたくなるほどだ。
何より心中で驚いたのは、敵の容貌が明らかに少年の顔つきだった事だ。
年の頃なら十四・十五歳くらい。無造作に伸びた髪の毛を後ろに束ね、顔もやはり血が乾いてあちこちバリバリにひび割れた、どす黒い顔色になっている。
少年兵自体はさほど珍しいものではない。
内戦地帯の反政府側の兵士の中には、これぐらいの年の少年兵が混ざってるのは当たり前にあることだ。
しかし目の前に相対する少年からは、今まで目にしてきた兵士の中でも群を抜くプレッシャーを感じる。
これほどまでに強烈な殺気を放つ少年兵に会ったことはない。
そもそも表情は正気を失っているような、狂乱じみた様子で目の焦点は合っておらず、口からは絶えず涎と獣の唸り声しか出てこない。
(薬物にやられてるか…?)
少年を一瞥し激しく回るホウジョウの思考の中で、ふと疑問が沸き起こった。
…今立っているこの広場を覆うように転がっている兵士の死体の数々。
…もしやこの少年が一人でやったのではないか?
そう思った瞬間にホウジョウの背中に今まで感じたことのない戦慄が走る。
それは眼前の阿鼻叫喚の光景をたった一人の少年が作り出したという畏怖感、そしてそれを確実に全うする技量と胆力。
もしそうであればコイツは非常に危険だ。
心中で呟きつつ口から息を細く吐き、少年の肩が上がる荒い息にリズムを合わせていく。
数刻互いに息を整え、そして少年とホウジョウが息を目一杯に肺に蓄えた時、先に少年が黒い弾丸となって低い体勢で飛び込んできた。
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