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第二章 ある少女の非日常
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「ご苦労様でした、ファルコン」
通りを走る車中、ハンドルを握るロバートが助手席に座る少年――ファルコンに労いの声をかけた。
「彼女らは?」
「ビルを出た後、運良く直ぐに流しのタクシーが来ましたので、それに乗っていきましたよ」
「そうか」
彼女らの無事を確認し、助手席のシートにどっしりと体重を預けるファルコン。ここで初めて張りつめていた緊張の糸を解く。街のチンピラ相手に後れを取ることは無いとはいえ、やはり戦闘ともなれば傭兵としての本能が揺り起こされる。
「…余計な心配かもしれませんが、あの手のチンピラは中途半端にやられたら、ひどく逆恨みして彼女らをまた攫って復讐するかもしれませんよ?」
信号が赤に変わりゆっくりとブレーキを踏みながら、ロバート。
「…………」
ロバートの問いに答えないファルコン。
その視線は車の窓から覗く煌びやかな街並みや、お喋りしながら楽しそうに通りを歩く人々の平和そうな様子に吸い寄せられていた。
ブティックや居酒屋、企業広告のネオンが鮮やかに赤くなりつつある夕空を彩り、買い物帰りの主婦、デートの最中のカップル、仕事帰りのサラリーマン、行き交う人々の表情には、死と生ギリギリの境界で生きているような荒んだ影はない。
「……この国は、この国の人々は本当に平和なんだな……」
誰にともなく呟くファルコン。
ファルコンが今まで生きてきた世界を知るが故、ロバートもまたその独り言に言葉を返すことは無い。
信号が青に変わり、再びゆっくりアクセルを踏みだす。
流れる街並みに視線を預けていたが、やがて空白となっていた思考に再び光が灯りだす。
「……やはり保険は掛けとくべきだよな」
ファルコンがゆっくりと口を開く。
その眼に宿るものはもう先程の様な精気の抜けた空っぽのものではなく、戦場を駆け回る戦士のそれだ。
「ですね。それではとっとと済ませてしまいましょうか」
ファルコンの言葉に同意するロバート。
すかさずロバート、次の交差点でハンドルを切って急にUターンすると、先程までの穏やかな運転とはうって変わり、荒々しくアクセルを踏み、エンジンから凄まじい回転音を上げながら元来た道を勢いよく戻って行った。
通りを走る車中、ハンドルを握るロバートが助手席に座る少年――ファルコンに労いの声をかけた。
「彼女らは?」
「ビルを出た後、運良く直ぐに流しのタクシーが来ましたので、それに乗っていきましたよ」
「そうか」
彼女らの無事を確認し、助手席のシートにどっしりと体重を預けるファルコン。ここで初めて張りつめていた緊張の糸を解く。街のチンピラ相手に後れを取ることは無いとはいえ、やはり戦闘ともなれば傭兵としての本能が揺り起こされる。
「…余計な心配かもしれませんが、あの手のチンピラは中途半端にやられたら、ひどく逆恨みして彼女らをまた攫って復讐するかもしれませんよ?」
信号が赤に変わりゆっくりとブレーキを踏みながら、ロバート。
「…………」
ロバートの問いに答えないファルコン。
その視線は車の窓から覗く煌びやかな街並みや、お喋りしながら楽しそうに通りを歩く人々の平和そうな様子に吸い寄せられていた。
ブティックや居酒屋、企業広告のネオンが鮮やかに赤くなりつつある夕空を彩り、買い物帰りの主婦、デートの最中のカップル、仕事帰りのサラリーマン、行き交う人々の表情には、死と生ギリギリの境界で生きているような荒んだ影はない。
「……この国は、この国の人々は本当に平和なんだな……」
誰にともなく呟くファルコン。
ファルコンが今まで生きてきた世界を知るが故、ロバートもまたその独り言に言葉を返すことは無い。
信号が青に変わり、再びゆっくりアクセルを踏みだす。
流れる街並みに視線を預けていたが、やがて空白となっていた思考に再び光が灯りだす。
「……やはり保険は掛けとくべきだよな」
ファルコンがゆっくりと口を開く。
その眼に宿るものはもう先程の様な精気の抜けた空っぽのものではなく、戦場を駆け回る戦士のそれだ。
「ですね。それではとっとと済ませてしまいましょうか」
ファルコンの言葉に同意するロバート。
すかさずロバート、次の交差点でハンドルを切って急にUターンすると、先程までの穏やかな運転とはうって変わり、荒々しくアクセルを踏み、エンジンから凄まじい回転音を上げながら元来た道を勢いよく戻って行った。
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