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最終話 冒険者はやりがいのある仕事です
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『お久しぶりです。京介です。
先日はお便りありがとうございました。
正直に言って、動揺する気持ちもありましたが、それでも久しぶりにあなたの言葉が聞けてとてもうれしく感じました。
色々と大変な苦労があったようですが、それでも一つ一つ前向きに乗り越えて、様々なことが良い方向に向かっているようで安心しました。
貴女にはそうやって問題をしっかりと解決する力があるということは、長く一緒に過ごした者としてはわかっていたつもりです。
それでも本人としては思い悩むことも多々あっただろうと思います。勿論こちらとしても思うところもなくは無いのですが、それでも無事に新しい居場所にたどり着けたと聞き、ほっとしました。
私と過ごした日々をとても大切に思っていてくれることも、光栄に感じます。
お手紙の中で当時の私の行動へ送ってくれた感謝の言葉の数々、おもはゆいばかりです。
当時の未熟な自分が、それでも懸命に尽くしてきたことが、過分なまでに報われたような思いです。
さて本題ですが。
いつかもう一度会って謝りたいと言ってくれた申し出につきまして。
大変申し訳ないですが、謹んでお断りします。
誤解をしないでください。
私はあなただけに非があると思っているわけではありません。
あなたの落ち度を過大に評価し、自分を一方的な被害者とみなして、もう顔も見たくないほどの恨みや憎しみを持って、拒絶しているなどと言う風には思わないでください。
実際に決め手となる行動をとったのは確かにあなたの方でしたが、それでも夫婦の問題について片方だけが100%の原因となるなどと言う事はきっとありえないのです。
その状況を招いた原因の半分は、私にあります。
きっとあの時の私たちは、2人とも、大人の真似事をするには幼すぎたのです。
別れ際にあなたから受けた言葉の数々。
あなたはそれを、何の正当性もない言葉と手紙の中で表現しましたが、きっとあれらこそが真実だったのだと今は思っています。
男として、夫として、大人として。
私の日々の言動は、決してその役割を十分に果たすものではありませんでした。
なので、もし会って謝ると言うのであれば、あなたから一方的にと言うのではなく、私の方からも謝らなければならないのでしょう。
では、なぜ会うことを断るのか。
それはやはり、私たちが会う事はお互いにとって良いことではないと思うからです。
上で述べたことと矛盾するかもしれませんが、それでもやはり私はあなたのとった行動を許すことができません。
理屈で考えれば、別の結論が出るはずです。
私自身の落ち度を認めるのであれば、水に流すとまでは言わないまでも、当時のあなたの気持ちを汲み取り、笑って許すのが大人の男の振る舞いとして正しいのかもしれません。
少なくとも、私が今でもあなたの夫なのであれば、そうすることが適切でしょう。
実際、何度もそうするべきではないかと思いました。
今自分が感じている感情を押し殺して、大人の男としてあるべき考えに則るべきではないのかと。
しかしどうあれ、私たちは違う道を歩むことを選択しました。
もしも、私たちがもう一度会ってしまったら。
飛躍しすぎているかもしれませんが、もしもまた私たちが一緒になってしまったら。
きっとまたあの時の私たちに戻ってしまうのではないか。
そうでなくとも。
私は、過去の自分の振る舞いから何を直せば良いのかということばかり考えて。
あなたは、自分の過去の行動に対する罪悪感にさいなまれ続けて。
2人とも、未来に向かって前向きに生きることができないのではないかと思います。
今のあなたがそうであるように、私も今、多くの人たちに支えられて生きています。
私を助けてくれる人。逆に私が守ってやらなくてはならない人。
彼ら彼女らに対して誠実に己の役割を果たすためにも、過去に巻き戻るようなことはやはり適切ではないかと思います。
そのために私は、あなたを許すことができない自分を許すことにしました。
あの時の事を、許すことはできません。
しかし忘れることで、恨みつらみから離れることはできます。
しかし、もしも私たちが会ってしまったら、いやでもあのことを思い出さずにはいられないでしょう。
私にとっても、一緒に暮らしたあの日々はとても幸せなものでした。
そのことには感謝しつつ、起こった出来事からは学びをもらいつつ、辛かった出来事は忘れる。
お互いが歩いている道を全うするためには、それが最善ではないでしょうか。
きっと2人とも、この先もままならないことも多いことかと思います。
それでも、あの頃の大切な思い出を胸に、それぞれの人生を歩んでいきましょう。
もう会う事はありませんが、あなたの幸せを祈っています。
綺麗事ではなく、本当に。
こんな器の小さな男ですが、これだけは本当にそう思っています。
追伸
寒い日々が続きますね。
この時期にあなたがよく喉を痛めて、私が作った蜂蜜生姜茶を喜んでくれたことを思い出します。
レシピを同封するので、具合の悪い時など試してみてください。
どうかお元気で。
京介』
—-
「ほな、確かに渡したからな」
大山さんの声が、とても遠く私の耳に響いた。
自分がどんな表情をしているのか。
彼のばつの悪そうな態度から、なんとなく推測できる。
彼にとっても私は、決して印象の良い相手ではないだろうに。
それでも気を使わずにはいられないほど、惨めな顔しているのだろう。
「前にも言いましたが、僕たちが連絡役になるのもこれで最後です。
ウツミんにももう連絡を繋がないよう言われていますので」
「やめとけやヨッキー。こんな時に余計なこと言わんでええやろ。
まぁ、じゃぁ、俺らはこれで行きますんで」
都内某所の喫茶店。
京介からの手紙を持ってきてくれた大山さんと芳木さんは、恐縮する私を手で制し、伝票を持って出口へ向かった。
私といえば、その場から立ち上がることができず、ただ座り込んでいた。
「あー。それにしてもウツミん、結局富山に残っちゃったかー」
「やはり女子高生は強し、やな」
「まったくだよ。
あー、いっそ俺も冒険者になっちゃおうかな。
なんだかうちの会社もどんどん居心地が悪くなってきたし」
「いや、真に受けんなや。
ちゅうか、お前みたいなモヤシにあんな肉体労働が務まるわけないやろ。
別に冒険者をしとれば女子高生と出会えるちゅうわけではないやろうし」
「そりゃそうだけどさ。
でもやっぱり、またウツミんと一緒に3人で働きたかったよ」
「そりゃしゃーないわ。
時間は前に流れとるんや。来た道を振り返ってもしゃあないわ」
レジに並びながらの彼らの会話が聞こえてくる。
……。一応、丸聞こえなことを伝えるべきだろうか。
「でもすごいよね。
ウツミん、なんかテレビで取り上げられるみたいだよ。地方の期待の新人的な扱いで。
ほら、神崎直人が毎週コメンテーターやってる冒険者番組のやつ」
「あー、そういえばなんかそんなこと言うとったな。あれいつ放送やったっけ?」
「来週の土曜だね。
もし暇だったら俺の家で一緒に見る?」
「おお、ええな。
ビールとか買ってくわ」
そんなことを言いながら、会見をすませた2人は店の外と出て行った。
手持ち無沙汰になった私は、おかわりのコーヒーを注文しようと、店員さんに呼びかけようとして。
そこで、声が出せない自分に気づいた。
喉元が上擦って。手も震えて。
「京介……」
ポタリ。ポタリ。
テーブルに、大粒の熱い雫がこぼれ落ちる。
自分の顔を拭うことすらできず、私はただ項垂れた。
「京介……ごめんなさい、ごめんなさい……!」
周囲の視線が突き刺さることを感じながらも。
私はしばらくの間、嗚咽を止めることができなかった。
—-
「お兄ちゃん!もう、遅いわよ!
番組が始まっちゃったらどうするの!」
「いや、まだ大丈夫やろ。あと10分ぐらいはあるし。
そもそも、京介の出番は番組後半のコーナーやぜ」
「そんなこと言って、もし京ちゃんの出番が終わっちゃったらどうするの!
ほら、早く手を洗ってらっしゃい。ちゃんと石鹸を使うのよ!テーブルでお父さんも待ってるから!」
いや、子供やないんやからさ。
久々の実家やけど、母さんの中では俺の印象が高校生位で止まっとるんがじゃぁないやろか。
「おう、よく来たな。まあ座れ。
今日は奥さんは大丈夫なのか?」
「ああ、チビども連れて向こうの実家に遊びに言っとるわ。
あいつら、俺が出かける言ったらうれしそうにしやがって。
まったく父親をなんやと思っとんがよ」
「ふん、情けない。
大の男がそんな威厳のないことでどうする」
偉そうなこと言ってるオヤジだが、さっきからそわそわと貧乏ゆすりをして落ち着きのないことこの上ない。
ようこれで威厳がどうとか言えたもんやぜ。
ま、自分の子供がテレビに出るってなったらこうなってしまうのもわからんでもないけどな。
それも、ずっと心配してた末っ子がとなると、推して知るべきって奴やろう。
俺としても、あの頼りない弟がテレビに出るなんて、今でも現実感ないしな。
親父の手術は成功した。
なんや難しい事はよくわからんけど、ブラッドパッチ療法だかなんだかがドンピシャに上手く効いて、もうすっかり健康体や。
もう手術の2日後には普通に仕事に戻っとったからな。
どうせ日頃の疲れが溜まってるんやろうし、とうちっとおとなしくしとれやと思ったけど。
お、始まったわ。
『さて、今週もコメンテーターに神崎直人さんをお呼びしています。
神崎さん、今回から神崎さん発案の新コーナー、“一芸さんを探せ!“が始まりますが』
『ええ。
日本各地から有望な新人冒険者を発掘するという趣旨です。
スタッフの皆さんには多大な協力をいただき、感謝しています』
『毎回、神崎さんが掲げたテーマにあった冒険者をスタッフ総出で日本各地から捜索し、紹介するというものです。
毎回共通するテーマは、“地方在住“、“30代“、“新人1年目“と言う事ですが、神崎さん、こちらの趣旨は?』
『ええ。
やはり冒険者と言うと、皆さん若くて馬力のあるイケイケの人物を想像してしまいがちですが。
実際には、30代以上の方が第二のキャリアとして冒険者の道を選ぶことも少なくないですからね。
そうした方々の活躍に目を向けて、しっかりと応援しながら彼らの力を生かすことが、これからのこの業界に絶対必要なことだと感じています。
それも、体力抜群などのわかりやすい長所ではなく。その人ならではの個性や経験に注目することで、より自分らしく活躍できるような、そんな業界を作っていきたい。
そんな思いから、このコーナーを立ち上げました』
『なるほど。
それで今回、“目の良い冒険者“と言うテーマを選択されたのですね。
ところで、地方在住と言うのはどのような趣旨でしょうか?』
『情報の取りやすい都会からでは見つからなかったので……。
あ、いえその、普段注目を抜けられないような現場で活躍するような方々を応援することから、この国全体の冒険者業界を盛り上げていきたいと言う思いが込められています』
なんや、爽やかそうな面して、どうにも胡散臭いやっちゃな。
「素敵な人ねぇ。
こんな人に認めてもらえるなんて、やっぱり京ちゃんはすごいわ」
「うむ。
男子たるもの、常に社会全体のことを考えねばならん。
京介もこの人のような一人前の男になってもらわなければな」
年寄りウケは抜群みたいやな。
親父も色々と考えとるようで、こーゆーわかりやすいものにころっと引っかかるようなところがあるからな。
まぁ、そう言うても別世界の人や。
なんせ雑誌によると、この3年間で100億円とか稼いでるような人やからな。
俺らや京介の人生に関わってくる事はないやろう。
—-
「ほら、ヒロ君!
ウツミんさんの出番が始まったよ!早くこっちきて一緒に見なきゃ!」
「はいはい。今行くよ」
マリ姉ちゃんの呼びかけに応えて、俺は宿題を切り上げてリビングに向かう。
テーブルにはモミジとカエデが用意したお茶と茶菓子が並べられ、兄弟総出でテレビの前に臨戦態勢で座っていた。
「あれ、ママは?」
「うん、見たがってたけどね。
でもやっぱり、大事な講習会があるからそっちに出るって。
録画してるから、夜にまたみんなで一緒に見よう」
録画してるんなら、俺も後で見るんでもいいんだけどな。
とか言っても、マリ姉ちゃんににらまれるだけだから言わないけど。
ママは少し前に仕事を変えた。
近所の税理士事務所がパートを募集していて、そこの先生とウツミんさんが前の仕事で少し進行があった人らしく、紹介してもらってパートとして働いている。
今はコンビニバイトとあまり変わらないような時給での仕事だけれど、少なくとも生活リズムはとても安定した。
それに簿記やファイナンシャルプランナーの資格を取れば時給を上げてくれると言う話だし、働きぶり次第では正規雇用に格上げしてくれると言われ、柄にもなくママは張り切っている。
もともと、家計の管理や生活設計のために、その辺を勉強したいと言う動機があったから、いろんな意味でもってこいの話だった。
とは言え仕事も勉強も大変らしく、3日に1度は疲れただのしんどいだのと泣き付いてくるけれど。
昔の状況思えば、愚痴を聞いてやったり肩を揉んでやったりする位何でもない。
「あ!ウツミんさんだ!
映った!映った!カメラの前で喋ってる!
やばい、超かっこいい!」
「いや、かっこよくはねぇだろ……」
しっかり者のマリ姉ちゃんだけど、ウツミんさんに対してだけは相当ラリってんだよな。
断言するが、ウツミんさんは絶対にイケメンでは無い。
見慣れた人がテレビに映ると、なんか変な感じするもんだね。
今も何でもない質問をされてるだけなのに、緊張してめっちゃ早口になっているし。
ほら、また鼻の頭をかいた。
余裕なさすぎ。やっぱかっこよくはねえよなぁ……。
番組が進行する。
ウツミんさんの普段の生活や活動内容。
さすがに迷宮の中まではカメラは入れないが、ヤンキーっぽい人やお爺さんへのインタビューも交えながら、ウツミんさんの活躍ぶりが紹介されていく。
「やばいよぉ、めっちゃいい声……。
ウツミんさんの良さが全国に知れ渡っちゃうよぉ……。
どうしよう、見つかっちゃうよぉ。世間に見つかって、ウツミんさんが遠くに行っちゃうよぉ……」
「ウツミんなんかに注目するのはマリ姉ちゃんだけだと思うぜ……」
「モミジもそう思うの。
ウツミんが輝くのは、無邪気系エリート後輩に性的に弄ばれている時だけなの……」
こいつらはこいつらでどうなんだ。
普段の生活でもあんだけお世話になってんのに。
とはいってもさすがに最近は忙しいらしくて、家に来ることもずいぶん減ったけど。
カメラがスタジオに戻ってくる。
『なるほど。
目が良いと迷宮の中でこんなことまでできちゃうんですね。
こういう方はやはり珍しいんでしょうか神崎さん?』
『……見つけた』
『……神崎さん?』
『……ああ、いえ。
そうですね。あまりこのようなケースは聞きませんが』
『やはりそうなんですね。
しかし、良い生活ですね。完全週休2日。昼休みも2時間とって、残業ゼロ。
それでこの収入だと言うのですから、ワークライフバランスといいますか、やはり才能のある方は生活にもゆとりが出るものですね。
我々もあやかりたいものです』
『そうですね……。
ゆとりある生活……せいぜい今のうちに楽しんでおけ……。
ああ、いえ、その。いずれは有名になって活躍することになるかもしれませんね』
ぞわり。
マリ姉ちゃんから突如、冷凍ビームみたいな緊張感が放射される。
目つきとかめっちゃ鋭いし。
それバスケやってる時の顔じゃん。
「この人、神崎直人っていうの……?
—-要注意人物ね」
—-
カメラを降ろされて気が抜けた瞬間、自分でも驚くぐらい重いため息を吐き出した。
レポーターの地方局の女子アナさんがいたわるような視線を向けてくる。
「大丈夫ですかね?ちゃんと話せていましたか?」
「うーん……。
まあ、一般の方はみんなこんな感じですよ!
大丈夫大丈夫。後はスタジオがいい感じにしめてくれます!」
どうやらだいぶヤバかったらしい。
全身から吹き出る汗をハンカチで拭いつつ、もう手遅れなのに1人反省会を脳内で始めてしまう。
全国ネットで生き恥を晒してしまったのか……。
脇の下とかグッチョグチョじゃん。
まぁしゃーない。切り替えていこう。
「これで出番はおしまいですか?」
「いえ、もう少ししたら最後に冒険者志望の皆さんへのメッセージを語ってもらいます。
冒険者のキャリアに興味はありながらも、あと1歩が踏み出せない。そんな人達へ伝えたいことなど自由に語ってください」
冒険者志望者に伝えたいことか。
ねえな(即答)。
こちとら自分が生きてるだけで精一杯だ。
優秀な人は参入してこないでください、なんて言うわけにもいかないしなぁ。
「そろそろ出番です。
スタンバってくださーい!」
考える暇もないうちに、こっちにカメラが返ってくる。
こういうの事前に伝えておいてくれよ。
こういうとこ、地方は本当に仕事が雑だよな。
「それではウツミさん。
冒険者志望の方々に一言、エールをお願いします!」
「……冒険者は、過酷な仕事です」
不意にそんな言葉が出てきた。
「肉体的にも重労働でどれだけ慣れても毎日くたくたになるまで疲れ果てます。
そして、常に命の危険が隣り合わせの仕事です。
それでいて、決して世間で言われているほど儲かるわけでもありません」
スタッフたちの間にピリッと緊張感が走るのかわかる。
冒険者を増やしたいのにネガティブキャンペーンをやってどうする、って感じだろうか。
「命を落とした仲間がいました。
一生ものの負傷した仲間がいました。
過酷な状況で、道を踏み外してしまった仲間がいました。
……彼らも皆、いわゆる普通のサラリーマンとしての生活をしていればそんなことにはならなかったことでしょう」
「あの、ウツミさん。
志望者の皆さんへのエールですから……」
「ですが」
考えて話しているわけではない。
心の中から自然に出てきた言葉が、口を通して外されている。
「一方で、たくさんの人の心の奥に触れることができました。
危険で過酷な環境で、精一杯の勇気を振り絞って戦う人たち。
生活の為、夢の為、誇りの為、家族の為。
冒険者として活動する中でそんな人たちを支えることができて誇らしく思いますし、同時に自分が何をしたいのかということを、今になって初めて懸命に考えることができるようになったように思います」
一言のエール、と言うことだったのに俺が長々と話し始めたのでスタッフの方々が困り顔を見せる。
だが、責任者らしき人がハンドサインで「そのまま続けさせろ」と全体に指揮を飛ばす。
「でも考えてみればそれは、冒険者に限ったことではないんです。
サラリーマンでも、主婦でも、スポーツ選手でも、漫画家でも。
きっとみんな大切な何かのために、今の自分の殻を破って日々懸命に戦っている。
そんな当たり前の事に、ようやく気づくことができました。
そして冒険者の活動を通して得られた資源がそんな人たちの生活を支えていると思うと、日々の苦労にも、何とか立ち向かう気力が湧いてくる」
綺麗事だな、と自分でも思う。
同時に、そんな綺麗事を、それでも曲がりなりにも自分の口から発する気持ちになれていることに驚く。
「冒険者はやりがいのある仕事です。
金では買えないものを得られました。
今では本気でそう思っています」
コスパ厨のアラサー男、嫁の不倫とリストラを機に子供部屋おじさんになる ~税金対策に週三でダンジョン潜ってたら脳筋女子高生とバディ組んだ話~
—-完—-
ご愛読ありがとうございました。
よければ、感想やブクマなどお願いいたします。
先日はお便りありがとうございました。
正直に言って、動揺する気持ちもありましたが、それでも久しぶりにあなたの言葉が聞けてとてもうれしく感じました。
色々と大変な苦労があったようですが、それでも一つ一つ前向きに乗り越えて、様々なことが良い方向に向かっているようで安心しました。
貴女にはそうやって問題をしっかりと解決する力があるということは、長く一緒に過ごした者としてはわかっていたつもりです。
それでも本人としては思い悩むことも多々あっただろうと思います。勿論こちらとしても思うところもなくは無いのですが、それでも無事に新しい居場所にたどり着けたと聞き、ほっとしました。
私と過ごした日々をとても大切に思っていてくれることも、光栄に感じます。
お手紙の中で当時の私の行動へ送ってくれた感謝の言葉の数々、おもはゆいばかりです。
当時の未熟な自分が、それでも懸命に尽くしてきたことが、過分なまでに報われたような思いです。
さて本題ですが。
いつかもう一度会って謝りたいと言ってくれた申し出につきまして。
大変申し訳ないですが、謹んでお断りします。
誤解をしないでください。
私はあなただけに非があると思っているわけではありません。
あなたの落ち度を過大に評価し、自分を一方的な被害者とみなして、もう顔も見たくないほどの恨みや憎しみを持って、拒絶しているなどと言う風には思わないでください。
実際に決め手となる行動をとったのは確かにあなたの方でしたが、それでも夫婦の問題について片方だけが100%の原因となるなどと言う事はきっとありえないのです。
その状況を招いた原因の半分は、私にあります。
きっとあの時の私たちは、2人とも、大人の真似事をするには幼すぎたのです。
別れ際にあなたから受けた言葉の数々。
あなたはそれを、何の正当性もない言葉と手紙の中で表現しましたが、きっとあれらこそが真実だったのだと今は思っています。
男として、夫として、大人として。
私の日々の言動は、決してその役割を十分に果たすものではありませんでした。
なので、もし会って謝ると言うのであれば、あなたから一方的にと言うのではなく、私の方からも謝らなければならないのでしょう。
では、なぜ会うことを断るのか。
それはやはり、私たちが会う事はお互いにとって良いことではないと思うからです。
上で述べたことと矛盾するかもしれませんが、それでもやはり私はあなたのとった行動を許すことができません。
理屈で考えれば、別の結論が出るはずです。
私自身の落ち度を認めるのであれば、水に流すとまでは言わないまでも、当時のあなたの気持ちを汲み取り、笑って許すのが大人の男の振る舞いとして正しいのかもしれません。
少なくとも、私が今でもあなたの夫なのであれば、そうすることが適切でしょう。
実際、何度もそうするべきではないかと思いました。
今自分が感じている感情を押し殺して、大人の男としてあるべき考えに則るべきではないのかと。
しかしどうあれ、私たちは違う道を歩むことを選択しました。
もしも、私たちがもう一度会ってしまったら。
飛躍しすぎているかもしれませんが、もしもまた私たちが一緒になってしまったら。
きっとまたあの時の私たちに戻ってしまうのではないか。
そうでなくとも。
私は、過去の自分の振る舞いから何を直せば良いのかということばかり考えて。
あなたは、自分の過去の行動に対する罪悪感にさいなまれ続けて。
2人とも、未来に向かって前向きに生きることができないのではないかと思います。
今のあなたがそうであるように、私も今、多くの人たちに支えられて生きています。
私を助けてくれる人。逆に私が守ってやらなくてはならない人。
彼ら彼女らに対して誠実に己の役割を果たすためにも、過去に巻き戻るようなことはやはり適切ではないかと思います。
そのために私は、あなたを許すことができない自分を許すことにしました。
あの時の事を、許すことはできません。
しかし忘れることで、恨みつらみから離れることはできます。
しかし、もしも私たちが会ってしまったら、いやでもあのことを思い出さずにはいられないでしょう。
私にとっても、一緒に暮らしたあの日々はとても幸せなものでした。
そのことには感謝しつつ、起こった出来事からは学びをもらいつつ、辛かった出来事は忘れる。
お互いが歩いている道を全うするためには、それが最善ではないでしょうか。
きっと2人とも、この先もままならないことも多いことかと思います。
それでも、あの頃の大切な思い出を胸に、それぞれの人生を歩んでいきましょう。
もう会う事はありませんが、あなたの幸せを祈っています。
綺麗事ではなく、本当に。
こんな器の小さな男ですが、これだけは本当にそう思っています。
追伸
寒い日々が続きますね。
この時期にあなたがよく喉を痛めて、私が作った蜂蜜生姜茶を喜んでくれたことを思い出します。
レシピを同封するので、具合の悪い時など試してみてください。
どうかお元気で。
京介』
—-
「ほな、確かに渡したからな」
大山さんの声が、とても遠く私の耳に響いた。
自分がどんな表情をしているのか。
彼のばつの悪そうな態度から、なんとなく推測できる。
彼にとっても私は、決して印象の良い相手ではないだろうに。
それでも気を使わずにはいられないほど、惨めな顔しているのだろう。
「前にも言いましたが、僕たちが連絡役になるのもこれで最後です。
ウツミんにももう連絡を繋がないよう言われていますので」
「やめとけやヨッキー。こんな時に余計なこと言わんでええやろ。
まぁ、じゃぁ、俺らはこれで行きますんで」
都内某所の喫茶店。
京介からの手紙を持ってきてくれた大山さんと芳木さんは、恐縮する私を手で制し、伝票を持って出口へ向かった。
私といえば、その場から立ち上がることができず、ただ座り込んでいた。
「あー。それにしてもウツミん、結局富山に残っちゃったかー」
「やはり女子高生は強し、やな」
「まったくだよ。
あー、いっそ俺も冒険者になっちゃおうかな。
なんだかうちの会社もどんどん居心地が悪くなってきたし」
「いや、真に受けんなや。
ちゅうか、お前みたいなモヤシにあんな肉体労働が務まるわけないやろ。
別に冒険者をしとれば女子高生と出会えるちゅうわけではないやろうし」
「そりゃそうだけどさ。
でもやっぱり、またウツミんと一緒に3人で働きたかったよ」
「そりゃしゃーないわ。
時間は前に流れとるんや。来た道を振り返ってもしゃあないわ」
レジに並びながらの彼らの会話が聞こえてくる。
……。一応、丸聞こえなことを伝えるべきだろうか。
「でもすごいよね。
ウツミん、なんかテレビで取り上げられるみたいだよ。地方の期待の新人的な扱いで。
ほら、神崎直人が毎週コメンテーターやってる冒険者番組のやつ」
「あー、そういえばなんかそんなこと言うとったな。あれいつ放送やったっけ?」
「来週の土曜だね。
もし暇だったら俺の家で一緒に見る?」
「おお、ええな。
ビールとか買ってくわ」
そんなことを言いながら、会見をすませた2人は店の外と出て行った。
手持ち無沙汰になった私は、おかわりのコーヒーを注文しようと、店員さんに呼びかけようとして。
そこで、声が出せない自分に気づいた。
喉元が上擦って。手も震えて。
「京介……」
ポタリ。ポタリ。
テーブルに、大粒の熱い雫がこぼれ落ちる。
自分の顔を拭うことすらできず、私はただ項垂れた。
「京介……ごめんなさい、ごめんなさい……!」
周囲の視線が突き刺さることを感じながらも。
私はしばらくの間、嗚咽を止めることができなかった。
—-
「お兄ちゃん!もう、遅いわよ!
番組が始まっちゃったらどうするの!」
「いや、まだ大丈夫やろ。あと10分ぐらいはあるし。
そもそも、京介の出番は番組後半のコーナーやぜ」
「そんなこと言って、もし京ちゃんの出番が終わっちゃったらどうするの!
ほら、早く手を洗ってらっしゃい。ちゃんと石鹸を使うのよ!テーブルでお父さんも待ってるから!」
いや、子供やないんやからさ。
久々の実家やけど、母さんの中では俺の印象が高校生位で止まっとるんがじゃぁないやろか。
「おう、よく来たな。まあ座れ。
今日は奥さんは大丈夫なのか?」
「ああ、チビども連れて向こうの実家に遊びに言っとるわ。
あいつら、俺が出かける言ったらうれしそうにしやがって。
まったく父親をなんやと思っとんがよ」
「ふん、情けない。
大の男がそんな威厳のないことでどうする」
偉そうなこと言ってるオヤジだが、さっきからそわそわと貧乏ゆすりをして落ち着きのないことこの上ない。
ようこれで威厳がどうとか言えたもんやぜ。
ま、自分の子供がテレビに出るってなったらこうなってしまうのもわからんでもないけどな。
それも、ずっと心配してた末っ子がとなると、推して知るべきって奴やろう。
俺としても、あの頼りない弟がテレビに出るなんて、今でも現実感ないしな。
親父の手術は成功した。
なんや難しい事はよくわからんけど、ブラッドパッチ療法だかなんだかがドンピシャに上手く効いて、もうすっかり健康体や。
もう手術の2日後には普通に仕事に戻っとったからな。
どうせ日頃の疲れが溜まってるんやろうし、とうちっとおとなしくしとれやと思ったけど。
お、始まったわ。
『さて、今週もコメンテーターに神崎直人さんをお呼びしています。
神崎さん、今回から神崎さん発案の新コーナー、“一芸さんを探せ!“が始まりますが』
『ええ。
日本各地から有望な新人冒険者を発掘するという趣旨です。
スタッフの皆さんには多大な協力をいただき、感謝しています』
『毎回、神崎さんが掲げたテーマにあった冒険者をスタッフ総出で日本各地から捜索し、紹介するというものです。
毎回共通するテーマは、“地方在住“、“30代“、“新人1年目“と言う事ですが、神崎さん、こちらの趣旨は?』
『ええ。
やはり冒険者と言うと、皆さん若くて馬力のあるイケイケの人物を想像してしまいがちですが。
実際には、30代以上の方が第二のキャリアとして冒険者の道を選ぶことも少なくないですからね。
そうした方々の活躍に目を向けて、しっかりと応援しながら彼らの力を生かすことが、これからのこの業界に絶対必要なことだと感じています。
それも、体力抜群などのわかりやすい長所ではなく。その人ならではの個性や経験に注目することで、より自分らしく活躍できるような、そんな業界を作っていきたい。
そんな思いから、このコーナーを立ち上げました』
『なるほど。
それで今回、“目の良い冒険者“と言うテーマを選択されたのですね。
ところで、地方在住と言うのはどのような趣旨でしょうか?』
『情報の取りやすい都会からでは見つからなかったので……。
あ、いえその、普段注目を抜けられないような現場で活躍するような方々を応援することから、この国全体の冒険者業界を盛り上げていきたいと言う思いが込められています』
なんや、爽やかそうな面して、どうにも胡散臭いやっちゃな。
「素敵な人ねぇ。
こんな人に認めてもらえるなんて、やっぱり京ちゃんはすごいわ」
「うむ。
男子たるもの、常に社会全体のことを考えねばならん。
京介もこの人のような一人前の男になってもらわなければな」
年寄りウケは抜群みたいやな。
親父も色々と考えとるようで、こーゆーわかりやすいものにころっと引っかかるようなところがあるからな。
まぁ、そう言うても別世界の人や。
なんせ雑誌によると、この3年間で100億円とか稼いでるような人やからな。
俺らや京介の人生に関わってくる事はないやろう。
—-
「ほら、ヒロ君!
ウツミんさんの出番が始まったよ!早くこっちきて一緒に見なきゃ!」
「はいはい。今行くよ」
マリ姉ちゃんの呼びかけに応えて、俺は宿題を切り上げてリビングに向かう。
テーブルにはモミジとカエデが用意したお茶と茶菓子が並べられ、兄弟総出でテレビの前に臨戦態勢で座っていた。
「あれ、ママは?」
「うん、見たがってたけどね。
でもやっぱり、大事な講習会があるからそっちに出るって。
録画してるから、夜にまたみんなで一緒に見よう」
録画してるんなら、俺も後で見るんでもいいんだけどな。
とか言っても、マリ姉ちゃんににらまれるだけだから言わないけど。
ママは少し前に仕事を変えた。
近所の税理士事務所がパートを募集していて、そこの先生とウツミんさんが前の仕事で少し進行があった人らしく、紹介してもらってパートとして働いている。
今はコンビニバイトとあまり変わらないような時給での仕事だけれど、少なくとも生活リズムはとても安定した。
それに簿記やファイナンシャルプランナーの資格を取れば時給を上げてくれると言う話だし、働きぶり次第では正規雇用に格上げしてくれると言われ、柄にもなくママは張り切っている。
もともと、家計の管理や生活設計のために、その辺を勉強したいと言う動機があったから、いろんな意味でもってこいの話だった。
とは言え仕事も勉強も大変らしく、3日に1度は疲れただのしんどいだのと泣き付いてくるけれど。
昔の状況思えば、愚痴を聞いてやったり肩を揉んでやったりする位何でもない。
「あ!ウツミんさんだ!
映った!映った!カメラの前で喋ってる!
やばい、超かっこいい!」
「いや、かっこよくはねぇだろ……」
しっかり者のマリ姉ちゃんだけど、ウツミんさんに対してだけは相当ラリってんだよな。
断言するが、ウツミんさんは絶対にイケメンでは無い。
見慣れた人がテレビに映ると、なんか変な感じするもんだね。
今も何でもない質問をされてるだけなのに、緊張してめっちゃ早口になっているし。
ほら、また鼻の頭をかいた。
余裕なさすぎ。やっぱかっこよくはねえよなぁ……。
番組が進行する。
ウツミんさんの普段の生活や活動内容。
さすがに迷宮の中まではカメラは入れないが、ヤンキーっぽい人やお爺さんへのインタビューも交えながら、ウツミんさんの活躍ぶりが紹介されていく。
「やばいよぉ、めっちゃいい声……。
ウツミんさんの良さが全国に知れ渡っちゃうよぉ……。
どうしよう、見つかっちゃうよぉ。世間に見つかって、ウツミんさんが遠くに行っちゃうよぉ……」
「ウツミんなんかに注目するのはマリ姉ちゃんだけだと思うぜ……」
「モミジもそう思うの。
ウツミんが輝くのは、無邪気系エリート後輩に性的に弄ばれている時だけなの……」
こいつらはこいつらでどうなんだ。
普段の生活でもあんだけお世話になってんのに。
とはいってもさすがに最近は忙しいらしくて、家に来ることもずいぶん減ったけど。
カメラがスタジオに戻ってくる。
『なるほど。
目が良いと迷宮の中でこんなことまでできちゃうんですね。
こういう方はやはり珍しいんでしょうか神崎さん?』
『……見つけた』
『……神崎さん?』
『……ああ、いえ。
そうですね。あまりこのようなケースは聞きませんが』
『やはりそうなんですね。
しかし、良い生活ですね。完全週休2日。昼休みも2時間とって、残業ゼロ。
それでこの収入だと言うのですから、ワークライフバランスといいますか、やはり才能のある方は生活にもゆとりが出るものですね。
我々もあやかりたいものです』
『そうですね……。
ゆとりある生活……せいぜい今のうちに楽しんでおけ……。
ああ、いえ、その。いずれは有名になって活躍することになるかもしれませんね』
ぞわり。
マリ姉ちゃんから突如、冷凍ビームみたいな緊張感が放射される。
目つきとかめっちゃ鋭いし。
それバスケやってる時の顔じゃん。
「この人、神崎直人っていうの……?
—-要注意人物ね」
—-
カメラを降ろされて気が抜けた瞬間、自分でも驚くぐらい重いため息を吐き出した。
レポーターの地方局の女子アナさんがいたわるような視線を向けてくる。
「大丈夫ですかね?ちゃんと話せていましたか?」
「うーん……。
まあ、一般の方はみんなこんな感じですよ!
大丈夫大丈夫。後はスタジオがいい感じにしめてくれます!」
どうやらだいぶヤバかったらしい。
全身から吹き出る汗をハンカチで拭いつつ、もう手遅れなのに1人反省会を脳内で始めてしまう。
全国ネットで生き恥を晒してしまったのか……。
脇の下とかグッチョグチョじゃん。
まぁしゃーない。切り替えていこう。
「これで出番はおしまいですか?」
「いえ、もう少ししたら最後に冒険者志望の皆さんへのメッセージを語ってもらいます。
冒険者のキャリアに興味はありながらも、あと1歩が踏み出せない。そんな人達へ伝えたいことなど自由に語ってください」
冒険者志望者に伝えたいことか。
ねえな(即答)。
こちとら自分が生きてるだけで精一杯だ。
優秀な人は参入してこないでください、なんて言うわけにもいかないしなぁ。
「そろそろ出番です。
スタンバってくださーい!」
考える暇もないうちに、こっちにカメラが返ってくる。
こういうの事前に伝えておいてくれよ。
こういうとこ、地方は本当に仕事が雑だよな。
「それではウツミさん。
冒険者志望の方々に一言、エールをお願いします!」
「……冒険者は、過酷な仕事です」
不意にそんな言葉が出てきた。
「肉体的にも重労働でどれだけ慣れても毎日くたくたになるまで疲れ果てます。
そして、常に命の危険が隣り合わせの仕事です。
それでいて、決して世間で言われているほど儲かるわけでもありません」
スタッフたちの間にピリッと緊張感が走るのかわかる。
冒険者を増やしたいのにネガティブキャンペーンをやってどうする、って感じだろうか。
「命を落とした仲間がいました。
一生ものの負傷した仲間がいました。
過酷な状況で、道を踏み外してしまった仲間がいました。
……彼らも皆、いわゆる普通のサラリーマンとしての生活をしていればそんなことにはならなかったことでしょう」
「あの、ウツミさん。
志望者の皆さんへのエールですから……」
「ですが」
考えて話しているわけではない。
心の中から自然に出てきた言葉が、口を通して外されている。
「一方で、たくさんの人の心の奥に触れることができました。
危険で過酷な環境で、精一杯の勇気を振り絞って戦う人たち。
生活の為、夢の為、誇りの為、家族の為。
冒険者として活動する中でそんな人たちを支えることができて誇らしく思いますし、同時に自分が何をしたいのかということを、今になって初めて懸命に考えることができるようになったように思います」
一言のエール、と言うことだったのに俺が長々と話し始めたのでスタッフの方々が困り顔を見せる。
だが、責任者らしき人がハンドサインで「そのまま続けさせろ」と全体に指揮を飛ばす。
「でも考えてみればそれは、冒険者に限ったことではないんです。
サラリーマンでも、主婦でも、スポーツ選手でも、漫画家でも。
きっとみんな大切な何かのために、今の自分の殻を破って日々懸命に戦っている。
そんな当たり前の事に、ようやく気づくことができました。
そして冒険者の活動を通して得られた資源がそんな人たちの生活を支えていると思うと、日々の苦労にも、何とか立ち向かう気力が湧いてくる」
綺麗事だな、と自分でも思う。
同時に、そんな綺麗事を、それでも曲がりなりにも自分の口から発する気持ちになれていることに驚く。
「冒険者はやりがいのある仕事です。
金では買えないものを得られました。
今では本気でそう思っています」
コスパ厨のアラサー男、嫁の不倫とリストラを機に子供部屋おじさんになる ~税金対策に週三でダンジョン潜ってたら脳筋女子高生とバディ組んだ話~
—-完—-
ご愛読ありがとうございました。
よければ、感想やブクマなどお願いいたします。
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