帰っては来ない3人

シャン

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プレーン村

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2時間くらい歩き続けると小さな集落が見えてきた。

「お、3人とも、あれが俺っちの村だ」

レンが集落を指差して後ろを歩いてる3人に顔を向けた。

「割と小さめですか?」

ジュンジが尋ねた。

「前はもっと人がいたが、ドラゴンに襲われて1/4くらいになってしまった。しかし、ドラゴンに赤い宝玉を見せると帰っていった。だから、この村を守るためにも宝玉を渡すわけにはいかない」

少し重めの話になったが、足の回転は変わらなかった。

「なるほど…」

(村を守る手段だったのか…。一刻も早く封印をしないとな)

「でも、ハニービーのハチミツがあればいい!」

レンは口調を変えて話した。

「なんでですか?」

カオルがレンに聞く。

「ドラゴンは甘いものと苦いものが苦手なんだよ。その証拠に、俺っちは村長がドラゴンに食べられそうになってるとこを、ハチミツの詰まった袋をドラゴンの口に放り込んだんだ。そうすると、上を向いて吠えながら飛んでいった」

「そんなことが…」

この時、3人はあの時にハチミツがあればと悔やんだ。

「3人もドラゴンの被害者なんやな。そうやろ?」

レンは真剣な口調だが、当たったろみたいな感じでもあった。

「はい」

ジュンジが重い返事をした。


村まであと0.5カウト弱地点

「だんだん村に近づいてきたベー」

レンはちょっとした伸びをしながら言った。

「レンさん口調変わりました?」

ジュンジが少し笑いながら聞いた。

「村に近づいてくるとついつい語尾にべーとかが着いちまう」

レンも笑いながら答えた。

「他所にいるときは方言みたいなのが出ないように気をつけてるんですね」

マリも笑った。

「何処の者か悟られたくないしねぇ」

レンは笑ってる目から真剣な眼差しに変えた。

「盗賊か何かに襲われたとかですか?」

「んにゃ、違うよ。これ以上村を不幸にさせないためにな」


村の領地に入り、髭を生やした歳をとった人が出てきた。

「よぉ、レン。随分と遅い帰りだったな」

その人はヨボヨボのおじいさんで、杖をついていた。周りには3人のおじさんが囲むように立っていた。

「お、村長。申し訳ないねぇ。ハチミツ探しに行ってたら迷子になってしもーた」

レンは笑いながら説明をした。

「ところで、その3人は誰じゃ?」

杖でカオルたちを指し、レンに聞いた。

「初めまして、スタト村出身のジュンジです。右隣がカオル、左隣りがマリです」

ジュンジが自己紹介すると、2人は一礼をした。

「スタト村か…。あぁ!サキちゃんがいるとこじゃな!」

村長は考え事をしてるかと思いきや、手のひらを叩き、思い出した。

「はい。そうです」

「あぁ! あのサキさんがいるって村か!」

レンも思い出し、手のひらを叩いた。

「サキちゃんと村長は元気にしとるかね?」

村長は笑顔で聞いた。

「いえ…。数日前に死にました…」

「そーだったか…。まぁえぇ、あの老いぼれらもう歳じゃし、サキちゃんはまた無茶でもしたんだろう…」

笑顔だった顔が一瞬にしてよぼよぼの顔に戻った。

「そんなことよりも、うちへ入りなされ」

村長は後ろを振り向き、歩き出した。

「こっちだべよ」

周りにいたおじさんの案内のもと、村長の家に向かった。


「よっこらせっと」

村長は家に着くと、お茶をすすり、3人を見た。

(村長はべとかは使わなけど、周りの人は使うのか」


「ところでジュンジよ。なんのためにこの村に来たのじゃ」

「それは、赤の宝玉を譲ってもらうためです」

レン、ジュンジ、カオル、マリは正座をして答えた。

「なんのためじゃ。何に使うのじゃ」

「この世界に解き放たれた魔物を封印するためです」

「なるほど。ならば、この村のために何をしてくれる」

村長は断ることはせず、村のメリットを聞いた。

「ハチミツをデカンタ2つ分を3人で集めて来ます」

3人の目は真剣な眼差しで村長の目に集中した。

「レンからハチミツのことを聞いたのだな」

村長は困ったという顔をして、少し俯いた。

「はい」

「いつまでにやれる?」

「明日の夕方までには必ず集めて来ます」

「今日から行くのか?」

「いえ、明日から行くつもりです」

「なるほど」

「……」

「……」

ようやく、2人の言い合いが終わり、あたりは静まり返った。

「よかろう。明日の夕方までにハニービーのハチミツをデカンタ2つ分用意できれば赤の宝玉をやろう」

村長は扇子を取り出し、仰ぎ始めた、

「ありがとうございます!!!」

3人は同時に深く頭を下げた。

「村長、俺っちの家に泊めとくね」

「わかった」

レンは立ち上がり、村長の家を出た。

「しかし、わかってもらえてよかった」

ジュンジが1番安心していた。

「そうだねぇ」

マリも一安心した顔をした。

「3人はこれから何すんのー?」

「スイッチの練習をしようかと思ってます」

「スイッチか。どんなのなんだろうか。楽しみだなぁ」

レンは期待を胸に、わが家へと進んだ。
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