帰っては来ない3人

シャン

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作戦II

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3人はレンに助けられ、自分たちの村の出身地を話したりした。

「スタト村か。どっかで聞いたことある村なんだよなぁ」

レンは腕を組み、目を瞑り、上を向いて思い出そうとした。

「ところで君たちはどこまで?」

突然、考えるのをやめて話を変えてきた。

「この先にあるプレーン村です」

ジュンジが村の方向を指で指した。

「お! 俺っちの村やん」

レンは得意そうに言った。

「おぉ。もしよろしければ案内していただけないでしょうか?」

ジュンジは申し訳なさそうにレンに頼んだ。

「あー、やっぱ堅苦しいのは苦手だなぁ…。村までならいいよ、連れてってやる」

レンは苦い顔をしながら案内することにした。

「ありがとうございます」

3人は軽く礼をした。

「いやいや、お礼なんていらんよ。俺も村まで向かってる途中だしね」

レンに続き、3人は村までひたすら歩いた。


村までもう少しというとこで野宿をすることになった。

「随分暗くなったなぁ」

レンが地面に腰を下ろし、星空を見上げて言った。

「結構歩きましたもんね」

ジュンジが火を起こしながら答えた。マリは4人分の食事を用意し、カオルは周辺の見回りに向かっている。

「明日の昼前には村に着くが、君たちは俺っちの村に来て何をする気だい?」

レンは視線を火を起こし終えたジュンジに移した。

「赤い宝玉があると聞いたので、探しに行くためです」

「レンさん、何か知ってることはありませんか?」

マリも身を乗り出して聞いた。

「……」

レンは下を向き、沈黙が続いた。

「お嬢ちゃん、そいつぁ知ってるが渡したくても渡せないんだよ」

レンは残念そうに笑い、マリに顔を向けた。

「ただいま」

カオルが見回りから帰って来た。

「みんな何してるの?」

見回りに行く前よりも元気がなくなっていたみんなにカオルは気づいた。

「さっき、君たちの目的を聞いていたんだよ。そんで、渡したくても渡せないと話したんだ」

(レンの口調が少し違う。何があるんだろ)

「どうにかなりませんか? 俺たちにできることならなんでもします」

カオルもダメとわかっていても頼んだ。

「……」

レンはしばらく口を閉じ、考えた。

「なんでもか…」

ようやく口が開き、3人の顔が下からレンに向けられた。

「今、村は蜂蜜が取れなくて困っている。それをデカンタ(この村が名前をつけた入れ物の名前であって、卓上用ガラス瓶ではない。幅1.5メートル、高さ2メートルの瓢箪をくびれてるところで切ったような形をしたもの)2つ分を取って来てほしい」

地面にデカンタの形を書きながら説明した。

「わかりました。やりましょう」

ジュンジが言うと、カオルもマリも頷いて同意した。

「ありがとう。でも、明日は行かないほうがいい。敵が多いからね」

「ありがとうございます」

4人は飯を食い、そのまま寝た。

次の日カオルが起きると、レンは木の上に座っていた。

「おはよーございます」

カオルは目をこすり、上を向いて言った。

「お、カオルか。おはよー」

レンは木の上から降り、身支度をした。その間にマリとジュンジも起き、身支度をした。

「もう少しで俺っちの村だ!」

レンは村に向かって両手を挙げて叫んだ。

(元気な人だなぁ)

すると、5体のハニービーが現れた。

「久しぶりのお出ましか…」

レンが張り切っている。

「レンさん、ここは僕たちに任せてください。やりたい作戦もあるので」

3人はレンより一歩前に出て武器を構えた。

「わかったよ」

レンはその場に腰を下ろした。

「まだやったことないが、作戦IIだ。マリ周囲の状況と<プロテクト>と<ブースト>頼む」

「わかったわ。<プロテクト><ブースト>」

2人を赤とオレンジの多面体が囲むと、2人はハニービーに突っ込んだ。

「<チェインキル>」

カオルは手前にいた2体を一斬りずつして倒した。

「<大車輪>」

ジュンジはカオルが倒した2体の隣にいた一体を倒した。

「カオル! 後ろに新しいハニービーよ!」

ハニービーが新しくでてきた。

「了解!」

カオルは前転し、後ろを向いた。

「ジュンジ! カオルの後ろにいるハニービーに<河原割り>よ」

「了解!」

カオルが新しくきたハニービーに突っ込んだと同時に、カオルの後ろにいたハニービーに<河原割り>をお見舞いした。カオルも新しくきたハニービーをたおし、残りは1体になった。

「カオル!後ろを向くと同時に<リフレクトガード> 。ジュンジは一旦3歩下がり、ハニービーの動きが止まると同時に突き」

「了解!」
「了解!」

2人は即座に行動に移した。ハニービーは動きが一瞬止まり、ジュンジによって突かれた。

「まだ慣れてない感はあるが、見事な指令だ」

マリの後ろにいたレンはマリを見て感心した。

「マリ、お疲れさん。まさか指令まで来るとは」

ジュンジはマリを褒め、予想外のことに笑った。

「でも、おかげで俺たちには傷ひとつない」

カオルは一応傷ひとつないことを体を叩いて確認した。

「それもそうだな」

ジュンジも一応確認した。

「今の指示があれば昨日の10体も余裕だろ」

レンは一言言うと、足を村に進めた。
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