帰っては来ない3人

シャン

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プレーン村までの案内人

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カオルの新スキルは結局<チェインキル>に決まり、次の目的地であるプレーン村まで足を進めた。歩いてる最中、ジュンジが2人にはあることを教えていた。

「2人とも、今度の戦いではスイッチを使おう」

プレーン村まであと1日ってところでジュンジは新しい技の話を持ちかけた。

「スイッチ?」

2人とも疑問に思った。

「簡単に言えば、カオルが敵の攻撃を防いだり、受け流したりする。敵に隙が生まれるから、その隙を見て俺が攻撃をする。要するに攻防を分けようってことだよ」

ジュンジは歩きながら身振り手振りで説明をした。

「なるほどね」

2人とも説明に納得した。

「攻撃役はマリにもお願いしよう。カオルは防ぐことよりも受け流しを重点的に練習する」

防ぐよりも受け流した方が敵の体勢が崩れ、攻撃役の攻撃が入りやすいためだ。

「わかった」


マリがバックの中から地図を取り出し、地図を見始めた。

「マリ、どうかした?」

ジュンジが心配そうにしてはないが、聞いてみた。

「あとどれくらいでプレーン村かなぁって思ってね」

マリは地図と周りの地形を確認しながら言った。

「計算通りならあと1日ってとこかな?」

東側のとても大きい山を見ながらジュンジは答えた。

「お、あと3分の1ってとこね」

マリの顔が和らいだ。

「結構歩いなー。プレーン村ってどんなとこなんだろ」

カオルは遠くを見ながら独り言のように言った。

今歩いてるところは少し深めの森の中で、チラチラと日の光が差してくる。

「カオル! 敵だ!」

進行方向の先からなにやら虫が飛んでくるような音がした。虫といっても蚊や、ハエのような虫の羽の音ではなく、重く、力強さを感じる羽の音がした。

「ハニービーだ!」

ジュンジが叫んだ。 

「ハニービー?」

2人ともキョトンとした顔でジュンジを見た。

「でっかい蜂で、お尻には毒がある」

ジュンジが刀を抜き、攻撃態勢に入った。手には汗がにじみ出、ジュンジの頬に汗が流れた。

「ジュンジには<河原割り>があるだろ?」

カオルも剣を抜いて構えた。

「あれは敵が一体の時に有効な攻撃だ」

緊迫な状況は変わらず、音だけが近づいてくる。

「俺には<チェインキル>があるから大丈夫だよ」

カオルは自分のスキルを思い出して提案した。

「1体や2体の話ではない。10体くらい入るぞ。それとマリ、俺たちの後ろにいてくれ。そして、常時防御力を上げてくれ」

「わかったわ。だけど、完成してないから全然上がらないよ?」

マリは言われた通り後ろに行き、羽の音に負けない大きさで答えた。

「ないよりはマシだ!」

(ジュンジが焦ってる…。今度の敵は毒を持ってるから迂闊に攻撃ができないな…)

「くるぞ!」

ジュンジとカオルの武器を握る手に力が入る。

「<プロテクト>」

マリは槍を体の周りで回しながら叫び、2人の防御力を上げた。2人をオレンジ色の多面形のようなもので囲んだ。
ハニービーが3体横一列に並び、お尻の針を出しながら突進してきた。

「<リフレクトガード>」
「<リフレクトガード>」

2人同時にスキルを発動し、鉄壁の壁を作り出した。

「マリ、攻撃形スキルは?」

体を微動だにせず、聞いた。

「まだ持ってない」

マリは申し訳なさそうに答えた。

「わかった。あとはこっちでやるから回復等々頼む!」

「任せて!」

ついに、鉄壁の壁に3体のハニービーがぶつかった。もちろん針は武器にすら届いておらず、傷一つつかなかった。

「ジュンジ! このあとどーする!」

羽の音が大きく、隣にいても叫ばないと聞こえないくらいだった。

「1体ずつやっていくし……」

ジュンジが言いかけている途中、何者かの声が木の上から聞こえた。

「<エアスラッシュ>」

すると、10体ほどいたハニービーが5体までに減った。

「カオル! 俺に続け!」

ジュンジは残りの5体に突っ込んだ。

「おう!」

カオルもジュンジに続き、走った。

「<ブースト>」

マリも負けまいと少ないながら、攻撃力を上げるスキルを発動した。

「<大車輪>」

ジュンジは突然飛び、宙を2回周り、2体を倒した。

「あとは任せた!」

ジュンジから任されたカオルは奥にいるハニービーに突っ込んだ。ハニービーは前2体、後ろに1体。

「<チェインキル>」

最初の横斬りで前の2体を倒し、いつもより大きく踏み込んで奥の1体を叩きつけるように上から斬りつけた。

「ふぅ」

ひと段落すると、ジュンジはため息をついた。

「お前たち、なかなかやるなぁ。そこのお嬢ちゃんもね」

木から降りてきた謎の人は3人を見て褒めた。

「先ほどは危ないところを助けていただき、有難うございます」

3人は同時に礼をした。

「はっはっは! 気にするでない」

腰に両手を当てて、笑った。

「僕はジュンジといいます。右隣がカオル、左隣がマリです」

ジュンジは丁寧に自己紹介をした。

「俺はレンだ。よろしくぅ」

レンもノリノリで自己紹介をした。
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