帰っては来ない3人

シャン

文字の大きさ
上 下
5 / 13

スキル取得

しおりを挟む
3人は森の中でちょっとした広場を見つけ、そこで野宿することにした。ジュンジは火を起こし、カオルはあぐらをかいて剣を肩に立てかけていた。マリは村から持ってきたちょっとした食料をだし、3日分にわけ、今日の分を取り出した。

「ジュンジ、俺たち3人で旅に出たけどさ、これから出てくる強敵に立ち向かえるかなぁ」

カオルは星を見ながらジュンジに問いかけた。

「明日からカオルにはスキルを覚えてもらう。これからの強敵に備え、必ず必要になってくるものだ」

ジュンジはついた火を見つめながら話した。

「2人とも、今日の食料よ。明日も早いことだし早く寝よう。見張りは交代ね」

マリは手に持った2人分の食料を渡し、座った。

「ああ」

2人は食料を受け取ると、黙々と食べていた。

「食べながら聞いてくれ。今日の昼から旅が始まったがさっきのカオルが言った通りまだまだ俺たちは弱い。だから、連携プレイをしようと思う」

「ほぅ」

カオルは膝に肘をつけてジュンジを見た。

「具体的には何をするの?」

マリも興味を示した。

「作戦Iと作戦IIだ。作戦Iは突進してきた敵を僕とカオルで<リフレクトガード>をし、その間からマリが槍で急所を打つ。作戦IIはカオルと俺が総攻撃をする。この時、マリは周囲の状況を教えてくれ」

「<リフレクトガード>ってのはなんだ?」

「防御技だ」

「私にも覚えられる?」

マリが身を乗り出してきた。

「これは刀か剣のスキルなんだよ」

「そーなんだ。私もいつか攻撃とか防御スキルをおぼえたいなー」

マリが上を見ながら残念そうにした。

「さて、寝よか」

ジュンジはそういうと横になり、火に背を向けた。


次の日の朝、カオルが起きると2人はもう起きていた。

「カオルおはよ」

先に声をかけてきたのはマリだった。

「おはよー」

カオルは眠い目をこすり、身支度をした。ジュンジはというと1人で黙々と素振りをしていた。

「お、カオル起きたか。さっそくだが<リフレクトガード>を教える」

「おう」

ジュンジはマリのいる方へ歩いた。

「マリ、俺に向かって槍で本気で突いてくれ」

「わかったわ」

ジュンジは腰を低くし、刀を前に出し、側面を前に向けて斜めで構えた。左手を刀に添え、見たことある防御態勢をとった。

「ジュンジ、いくわよ!」

「おう!」

マリは全力で槍をジュンジに向かって突きに行った!

「<リフレクトガード>」

マリの槍はジュンジの体にも刀にも触れずに止まった。

「か、硬いわ」

マリがいくら力を入れようとそれ以上槍は進まなかった。

「ジュンジ、やり方は?」

「順を追って教えるね」

「マリ、その辺で見てて」

「わかったわ」

私は用済みなのね、みたいな感じで少し離れたところに腰を落とした。

「カオル、見てわかったと思うがこれはサキさんもドラゴンに使ってたスキルだ。これであのドラゴンの力がどんなものかわかっただろ」

「ああ…。すごくよくわかった」

カオルは拳を握りしめ、下を見た。

「カオル、よく見てね。腰を低くし、足に杭がついてると思って、その杭を地面に刺す感じで構える。剣は左に傾け、横にして左手を添える。そしたら体を鉛のように重くし、全身に力を入れる」

ジュンジが教えると、黄緑の盾が出た。この色は出さないこともでき、ある程度使いこなさないと出てしまう。

「大体こんな感じだ」

「やってみる」

カオルも同じようにしたが、何も起きなかった。

「もっと腰を低く、全身に力を込めて」

ジュンジは刀を鞘に戻し、腰に手を当てた。マリは体操座りをしてじっと見ていた。

(腰を低く、剣を斜めに、体を鉛のようにする…。そして全身に力を込める…。)

カオルは心で呟きながら1つ1つこなしていった。

「もっと力を入れて!」

ジュンジの言う通りに力を入れると黄緑の壁が出てきた。しかし盾とは言えず、さらにはすぐに割れてしまった。

「やり方はあってる。あとは実践あるのみだ」

「おぉ…。もう少しで使えるスキルが増えるのか…」

カオルは新しいスキルが覚えられることによって興奮とやる気を出した。


3人は1つ目の村、プレーン村を目指し、足を運んだ。

「カオル」

ジュンジは突然カオルを呼んだ。

「ん?」

カオルは後ろを歩いてるジュンジの方に顔だけ向けて歩いた。

「スライムがくるぞ」

確かに柔らかい物体が跳ねている音がする。

「試しに使ってみるよ」

カオルは立ち止まり、剣を抜いた。スライムは3体でてきた。

「2人は後ろに下がってて」

カオルは剣を構えて後ろの2人に言った。

「はいよ」

2人も了解し、後ろに下がった。
スライムは3体同時に体の部分を突然投げてきた。

「<リフレクトガード>」

すると、さっきよりも濃い黄緑の盾がでてきた。

「カオルやったわね」

後ろからマリの声がし、カオルは盾ですべてのスライムの一部を止め、固まらせて地面に落とした。

(前は斬ったけど、今度はどう倒そう…)

すると、1体のスライムがカオルに向かって跳んできた。

「えい!」

カオルは剣をスライムに突き刺し、それを他のスライムに向かって思いっきり飛ばした。
液体の音がして、2体のスライムが大きめの1体のスライムになった。

「くっつくと1体になるのか」

カオルは感心をし、次の攻撃に備えた。

「カオル、ちょっとこっちこい」

ジュンジはカオルを呼んだ。

「ん? 何?」

カオルはスライムの方を向いて剣を構えながら後ろに下がり、ジュンジに近づいた。

「…」

「おけ」

マリには聞こえないくらいの大きさの声でジュンジはカオルに伝えた。 

(そんなこと俺ができるのだろうか…。でも、やって見たい気持ちもある)

カオルはスライムに向かって走って行き、剣を右手で持って左側に持っていき、構えた。

「うぉりゃ、えい!」

カオルは左から右に水平に切り、後ろを向いたと思ったら剣を上に振り上げて後ろ、要するに前を向きながら剣を上から叩き落として攻撃をした。この時、赤い残光が少しだけ見えた。

「やったな、カオル」

ジュンジはガッツポーズをした。

「おう」

カオルもジュンジと同じようにガッツポーズをした。

「今のは?」

マリはキョトンとしてジュンジに聞いた。

「俺がさっき思いついた攻撃スキルだ。でも、ここまでできるとは思ってなかった」

ジュンジは感心感心と頷き、カオルを褒めた。

「これもこれからの課題だな」

カオルは剣を背中に戻し、荷物を持った。

道中、さっきのスキルの話になり、名前を決めることになった。

「どんな名前がいいかなぁ」

カオルは地面にある石を蹴りながら2人に話し出した。

「2回斬るからねぇ」

マリは少し上を見て考えていた。

「<チェインキル>とかどう?」

「まだ考えてたいから却下ー」

カオルは笑いながら答えた。

「なんだその理由は」

マリもジュンジも笑った。
しおりを挟む

処理中です...