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もう一度 2
しおりを挟む第2話 もう一度
四時間位時が過ぎただろうか?そこには、相変わらず、二人の姿があった。一人は、真鍮色の髪の少女、もう一人は、小太りな男、その男は、横に倒れている。真鍮色の髪の少女、時乃は、お腹の減りに限界を感じていた。最初の理解者にと思った小太りの男を失神状態にしてしまったので、動きが取れない。自分の感情を抑えきれずに、剣を抜いたことに後悔を覚えていた。
「そろそろ罪の呪縛から解放されるはずだ」
そう言うと、小太りの男、健一のところに歩み寄った。時乃は、手を軽く健一の額にあてた。
十五分ほど経過した時、健一は、ゆっくりと目を覚ました。剣の目を見る前のような、感情的な状態ではなくて、すっかり落ち着いている。
「どうやら俺は、考えを変えないといけない。こんな超常現象や魔法じみたことありえないと思っていたのに、これはどうしたことだ」
「それは、ありがたい。そこで頼みがあるのだが、何か食べ物を貰えると助かるのだが」
健一は、それまでは見せなかった笑顔で、時乃の手をとり一階へと降りていく、真鍮色の髪が、この世界ではありえない輝きを放ちながら左右に揺れる。
健一がダイニングキッチンへの扉を開けると、健一の父、五郎と孫の輝が、テレビを観ながら食事の用意をしていた。母は、二年前に他界していた。今日は、鉄板焼きのようで、五郎は、かぼちゃを薄く切っていた。健二の息子、輝は、テレビを必死に観ている。この家族は、町では呪われた家系と言われている。病の者が多く早くに死を迎える者が多いから、人々は、つぶやくのだろう。その家族の中に、祝福なのか呪いなのか、時乃澄香が行く。
五郎と輝は、時乃に目が行った。まるで、時が一瞬止まったようであった。
「輝君、おはよう」時乃が話しかけた。
「おねいちゃん、誰?」
輝は、頭に?マーク。五郎は、昨日のことを思いだし小刻みに震えている。小太りの男、健一は、その間に割って入って。
「お父さん、この人は、時乃澄香と言って、ごく普通のお腹を空かせた人間なんだ。健二の生まれ変わりでもない!だから食事をさせてほしい」
時乃は、この健一の発言に、違和感を感じた。
(剣眼の副作用が大きかったのか、わたしは、異世界人だと言ったのに)
「挨拶遅れました。わたしは、時乃澄香!異世界人だ。わたしに友好的であるなら、災いは遠のくだろう」
日本人は、宇宙人とか異世界人とか、その手の話は、作り話であって、信じていない人間がほとんどであると認識していた。それは、健二の記憶の一部を共有していたからである。
五郎は、しばらく下を向いていたが、顔を上げテレビを止めた。
「二人とも座りなさい。ご飯を食べよう。健一、時乃さんを席に」
五郎は、そう言うと「カ~ラ~ス何故なくの!」と鼻歌を歌いだした。第二次世界大戦で兵士を経験し、高度成長期を支え、家族から精神病患者を出し、人々からは呪われた家族と言われ、多くの困難を乗り越えてきた。だからか!時乃のことを意外にさらりと受け入れた。
時乃は、食べた。遠慮なく食べた。さすがに五郎もきつい目をしていた。時乃は、ふと我に返り、五郎の目を見た。時乃の澄んだ茶色の瞳には、年取った老人の姿が写り、色の付いた空気が軽く流れた。
(五郎は、肉は、子供のためのもの。肉は、輝のもの。そう言いたいのか)
時乃は、空間に漂う思念を読む力を働かせた。超能力からは、ほど遠いものだが、外に出てきた思念を読み取ることは、少しは、可能なのである。
時乃は、重い空気を打開すべく。
「輝君お肉あげる!」
できる限り可愛く言ってみた。
すると五郎は、テレビのリモコンを取出し国営放送の教育番組をつける。子供向けの長者番組が放送されていた。
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