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空間の鼓動 3
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3
時乃とフラットは、大空を飛んでいる。デジタル迷彩で人からは何も見えない。二人の片手には大きなジュラルミンケース。どうみても反政府組織の軍資金である。
ふわりと後藤家の庭に降り立つ。時乃の武装は解除される。フラットは、重い装備を抱えながら家に入る。何時の間にか、時乃達の隠れ家と化していた。
時乃は、静かに二階にあがり、七畳半の部屋に入るとフィンが迎える。
「おかえり。澄香、フラット」
フラットは、目を細めて。
「聞いてよ、フィン。澄香こんなこと言うんだぜ!バンパイアの空中散歩とか。笑っちまうよ。ほんとに」
フィンは、苦笑しながら。
「んー。健二さんの記憶の影響ですね。完全に元に戻ることは、無理かもね」
フィンは、アンドロイドだが、全てが人工物ではない。脳に類するところは、普通の人の思考である。
部屋は、無数の端末が配置され、フィンと接続されている。フィンは、同じ姿勢のまま。
「服を用意しましたので、着替えて下さいね。皆さんのブースに置いてあります。澄香の記憶をベースに作ったので、問題ないとは思いますけど」
フラットは目を吊り上げて。
「問題あるに、決まっているだろ!」
フラットは相変わらず、むすっとしている。決して、服が異常なデザインであったわけではない。地球人からみたら、ごく普通の女の子の服。
「何故に!こんなひらひらの服を着ないといけないわけ」
時乃は嬉しそうに、半回転とかしている。
「まあ。この星では、性別はどちらかだしーわたしの外見は、どうみても女だしー」
フラットは目を吊り上げて。
「女言葉でしゃべるな!澄香」
「まあ。弱点は、胸が極端に貧乳なことだ」
時乃は自分の胸を手で押さえている。黒と白のツーピース綺麗なフリルの袖。黒のオーバーニーが似合うミニスカート。真鋳色の長いツインテールが、ゆらゆら揺れている。
彼女らは、異世界の御使い。その世界で失敗し朽ちていく運命であったが、神からのリバイバルを受けてる。時乃は、己を帝として、その力は同族の中でも大きかった。馬頭星雲第一次大戦、このとき弟、真奈の裏切りにより、アンテオカス帝に捕らえられ、処刑される。
時乃は、死ぬ直前に、空間跳躍の詠唱に入っていた。それは、死と同時に発動した。魂とプログラムの飛び込む先はランダム。そして、飛び込んだ先が、後藤健二というわけである。このような説明を五人は、幾度となく後藤家の皆に語った。
「言葉よりも、現実に何かを示したほうが効率いいのではないか、ほとほと疲れた。わたしは、休憩するぞ」
時乃は、そう言うと、地球仕様に手を加えたPCの前に座る。人差し指で入れる。地球の常識では考えられない速度で、立ち上がる。地球の生活に慣れるため、手打ちタイピングに心がける。ネットゲームのアイコンをクリックする。ディスプレイにパスワードの要求が出る。健二の記憶の一部を共有しているため、パスは覚えている。
『チャットルームにティが入りました』
フラットが目を細めて。
「これが、帝と呼ばれた澄香の姿か!嘆かわしい」
時乃は、チャットをしながら。
「嫌、そう言うかもしれないが、これが意外に日本征服の足掛かりにできるかもしれない」
さらにフラットは、目を吊り上げて。
「ゲームにそんな希望はない!」
※
フィンとメイティ、メルティが、有明からダンボールの箱を運び出してきた。
「澄香、フラット、OS完成しましたよ。あとは、この間のお金で宣伝するだけですね」
現在ある地球のOSよりも二十年先を行く、恐ろしく性能の良いもの。商品名は、健二の記憶から『風林火山』となった。
フラットもダンボール運びを手伝う。
「しかし、四百八十番ゲートとは、製造エリアから遠い」
フラットは、体を動かすことが好きである。こういう作業を率先してするのは、彼女の良いところである。
「んーバトルPの解凍エラー。LANも途中で遮断されるぅ。アンチウィルスの影響かも。澄香、バイタルプラントまで行ってくるので、あとよろしくぅ」
時乃は、ゲームをしながら。
「水生モンスター倒したら、わたしも手伝おうか」
「あはは。いいですよ。私の分野ですから」
そう言ってフィンは、有明に入っていった。
時乃は、ゲームをログアウトすると、大きく背筋を伸ばし。
「OSを売ったお金で、ネットゲームの運営開発もいいかもな」
『澄香様!緊急回線接続』
(了解、繋げ)
フィンの慌てた声。
(澄香!バトルPもバイタルプラントもウィルスに感染しているぅ。ブロックごとパージしないと)
時乃の白い顔が、青みかかる。
(同胞は、全滅なのか?)
(残念ながら、皆の死亡を確認しました)
時乃は、力を抜き。
(ウィルスのデーターは、取れそうか?)
(無理です。接続すれば、アリスも感染します。もちろん私もぅ)
(わかった)
「フラット、メイティ、メルティ、バトルP及びバイタルプラントがウィルスに感染。同胞の死亡を確認。有明の感染エリアをパージする」
メルティは、泣き崩れた。メイティは、うつむき。フラットは、遠くを見つめた。
時乃は、冷静。に
(フィン。パージ実行)
(了解、澄香)
亜空間の闇の中に、それは消えて行った。多くの仲間の棺となって。
時乃とフラットは、大空を飛んでいる。デジタル迷彩で人からは何も見えない。二人の片手には大きなジュラルミンケース。どうみても反政府組織の軍資金である。
ふわりと後藤家の庭に降り立つ。時乃の武装は解除される。フラットは、重い装備を抱えながら家に入る。何時の間にか、時乃達の隠れ家と化していた。
時乃は、静かに二階にあがり、七畳半の部屋に入るとフィンが迎える。
「おかえり。澄香、フラット」
フラットは、目を細めて。
「聞いてよ、フィン。澄香こんなこと言うんだぜ!バンパイアの空中散歩とか。笑っちまうよ。ほんとに」
フィンは、苦笑しながら。
「んー。健二さんの記憶の影響ですね。完全に元に戻ることは、無理かもね」
フィンは、アンドロイドだが、全てが人工物ではない。脳に類するところは、普通の人の思考である。
部屋は、無数の端末が配置され、フィンと接続されている。フィンは、同じ姿勢のまま。
「服を用意しましたので、着替えて下さいね。皆さんのブースに置いてあります。澄香の記憶をベースに作ったので、問題ないとは思いますけど」
フラットは目を吊り上げて。
「問題あるに、決まっているだろ!」
フラットは相変わらず、むすっとしている。決して、服が異常なデザインであったわけではない。地球人からみたら、ごく普通の女の子の服。
「何故に!こんなひらひらの服を着ないといけないわけ」
時乃は嬉しそうに、半回転とかしている。
「まあ。この星では、性別はどちらかだしーわたしの外見は、どうみても女だしー」
フラットは目を吊り上げて。
「女言葉でしゃべるな!澄香」
「まあ。弱点は、胸が極端に貧乳なことだ」
時乃は自分の胸を手で押さえている。黒と白のツーピース綺麗なフリルの袖。黒のオーバーニーが似合うミニスカート。真鋳色の長いツインテールが、ゆらゆら揺れている。
彼女らは、異世界の御使い。その世界で失敗し朽ちていく運命であったが、神からのリバイバルを受けてる。時乃は、己を帝として、その力は同族の中でも大きかった。馬頭星雲第一次大戦、このとき弟、真奈の裏切りにより、アンテオカス帝に捕らえられ、処刑される。
時乃は、死ぬ直前に、空間跳躍の詠唱に入っていた。それは、死と同時に発動した。魂とプログラムの飛び込む先はランダム。そして、飛び込んだ先が、後藤健二というわけである。このような説明を五人は、幾度となく後藤家の皆に語った。
「言葉よりも、現実に何かを示したほうが効率いいのではないか、ほとほと疲れた。わたしは、休憩するぞ」
時乃は、そう言うと、地球仕様に手を加えたPCの前に座る。人差し指で入れる。地球の常識では考えられない速度で、立ち上がる。地球の生活に慣れるため、手打ちタイピングに心がける。ネットゲームのアイコンをクリックする。ディスプレイにパスワードの要求が出る。健二の記憶の一部を共有しているため、パスは覚えている。
『チャットルームにティが入りました』
フラットが目を細めて。
「これが、帝と呼ばれた澄香の姿か!嘆かわしい」
時乃は、チャットをしながら。
「嫌、そう言うかもしれないが、これが意外に日本征服の足掛かりにできるかもしれない」
さらにフラットは、目を吊り上げて。
「ゲームにそんな希望はない!」
※
フィンとメイティ、メルティが、有明からダンボールの箱を運び出してきた。
「澄香、フラット、OS完成しましたよ。あとは、この間のお金で宣伝するだけですね」
現在ある地球のOSよりも二十年先を行く、恐ろしく性能の良いもの。商品名は、健二の記憶から『風林火山』となった。
フラットもダンボール運びを手伝う。
「しかし、四百八十番ゲートとは、製造エリアから遠い」
フラットは、体を動かすことが好きである。こういう作業を率先してするのは、彼女の良いところである。
「んーバトルPの解凍エラー。LANも途中で遮断されるぅ。アンチウィルスの影響かも。澄香、バイタルプラントまで行ってくるので、あとよろしくぅ」
時乃は、ゲームをしながら。
「水生モンスター倒したら、わたしも手伝おうか」
「あはは。いいですよ。私の分野ですから」
そう言ってフィンは、有明に入っていった。
時乃は、ゲームをログアウトすると、大きく背筋を伸ばし。
「OSを売ったお金で、ネットゲームの運営開発もいいかもな」
『澄香様!緊急回線接続』
(了解、繋げ)
フィンの慌てた声。
(澄香!バトルPもバイタルプラントもウィルスに感染しているぅ。ブロックごとパージしないと)
時乃の白い顔が、青みかかる。
(同胞は、全滅なのか?)
(残念ながら、皆の死亡を確認しました)
時乃は、力を抜き。
(ウィルスのデーターは、取れそうか?)
(無理です。接続すれば、アリスも感染します。もちろん私もぅ)
(わかった)
「フラット、メイティ、メルティ、バトルP及びバイタルプラントがウィルスに感染。同胞の死亡を確認。有明の感染エリアをパージする」
メルティは、泣き崩れた。メイティは、うつむき。フラットは、遠くを見つめた。
時乃は、冷静。に
(フィン。パージ実行)
(了解、澄香)
亜空間の闇の中に、それは消えて行った。多くの仲間の棺となって。
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