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誘い 8

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 警察から解放された時乃は、一度学校に送ってもらい、荷物をまとめた。鞄の中からスマートフォンを取出し。
「このスマートフォン使うのは、最初で最後かもな」
 時乃は、フラットに電話を入れ、車で迎えに来てもらう。できるかぎり、地球人らしく行動するためである。車の中でフラットから、シールドウェーブの通信機を受け取る。生体USBに差し込み耳に掛ける。
(皆!心配かけた)
(無事でなりよりです。澄香様)とメイティ
(無事でよかったであります)とメルティ
(んー。狙撃者は、何者でしょうね。シールドウェーブの反応は、無かったのですけどぅ)
(澄香が撃たれるとはな。てか、空間転移できただろ)
(そうだな、できたかもな)時乃は、視線を落とした。
(俺の想像だが、澄香、人間をいや日本人を守ろうとしただろ)
(そうかもな)
(以前の澄香なら…いや、いい)
 フラットは、言いかけると、車の運転に集中するような姿勢をとり、後藤家へ向かった。
 時乃、フラット、フィンは、有明の中に移動した。メイティは、SPCで上空に上がり、デジタル迷彩をかけ、警戒している。
 メルティは、後藤家のメイド作業に集中している。
 フィンは、端末を操作している。画面上に今日の虹の原学園体育祭で起こった怪事件のニュースが映る。
「んー。この映像観てもらえる」
 フィンは、コマ送り操作を指でする。
「これ家庭用ビデオカメラで写した映像。写した人は、保護者でも学校関係者でもないようですけど。まあ、それは置いておいて。ここからです」
 本部席後ろ付近から、レーザーが発射されるのが分かる。拡大しても誰かは分からない。そして、時乃に命中する。フィンは、もう一度コマ送りをする。命中する寸前に薄く壁が見える。
「見ての通り、レーザーを撃った敵は、学園関係者がもっとも多い場所にいたこと。これは、そこにいても不自然ではない者、次に、澄香に命中する前に、何者かがシールドを張ったこと。澄香達も分かると思うけど、この出力のレーザーの直撃をまともに受けていたら、死んでいたかもしれない」
「ふむ」時乃は、考え込む。
「澄香は、走るのに集中していたのと、現時点での敵との遭遇は、ありえないと考えていたと思うの。だから無警戒になっていたのね」
 フラットは、時乃をちらりと見て。
「以前の澄香なら、警戒を怠ることは、なかったと思うぞ」
「んー。まあ。フラット、私は、今の澄香のほうが、好きですよ」
 フラットは、少し身じろぎした。時乃は、だまったままである。
「話を進めます。敵は、次どう出るかです」
 時乃は、顔を上げ、少し元気のない目をしながら。
「敵が真奈なら一度失敗したなら、作戦を切り替える」
「そうね。そうかも。でも学園の警戒はしたほうがいいかもね」
「俺が、学園を見張る」
「そうですね。フラットがベストかも、どう澄香」
「わたしは、フラットに任せる」
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