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時の鼓動 3
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3
時乃達のハルバ・エボリューション1が、戦闘空域に達したころ、市街地まで火の手は上がっていた。
「フラット攻撃準備」時乃は、指示を出す。
「了解」
「敵零式編隊二十五、攻撃範囲内に入ります」
フィンの体には、無数のコードがコックピット内の端末と繋がっている。
「行け!フラット」
「了解、加速する」
後部の噴射口から、火炎が噴出する。
「デジタル迷彩解除」
敵零式編隊の上空に突然、ハルバ・エボリューション1が現れる。零式のパイロットは、突然現れた機体に慌てたが、手際よく散開する。
「遅い」フラットが言う。
フラットは、翼の下に装着している。シールドウェーブ誘導ミサイルを発射する。ロックオンされたミサイルは、敵を旋回しながら追撃する。
不意を突いたので、十四機撃墜する。残り十一機は、零式の後部座席に乗っていたバトルHMの射撃によりミサイルを撃退していた。
「楽をさせて貰えそうにはないな」
時乃は、右翼上の二百ミリ機関砲を固定しているアームをフリーにする。右手のステックで動作チエックをする。
フラットは、機体をロールしてから、前方を地上に向けた。追撃してきた零式四機と向かい合う。レーザー砲を撃ち込む。見事にRフィールドで消される。そこに、時乃は、二百ミリ機関砲を撃ち込む、薬莢が空中に舞う。轟音と共に打ち出された弾は、Rフィールドの反射で一瞬視界を失ったパイロットを襲う。直撃、爆散する。機関砲のアームを移動させて次のターゲットに撃ち込む。命中、零式は、軌道を変え落下するとバトルHMが脱出する。亜空間戦闘用の機体は、通常の火薬武器が苦手である。逆に通常の火薬武器は、弾切れが早い。レーザーなどの光線武器は、エネルギーの持ちが長い。
ハルバ・エボリューション1には、時乃が乗っているので、母艦からの転送補給が可能なため、有利な通常火薬武器を楽に運用できる。
真奈は、空母の艦橋で、リアルタイム映像とデーターだけの画面を、顔を動かすことなく見ていた。
「お兄様いらっしゃいましたね。山本、私も出る。指揮をまかせます」
「了解です、中将殿」
真奈は、甲板に出ると。
「ブルーハート、SPCを」
『了解』
「空間転移」魔方陣が形成される。瞬間、SPCが装着される。軽く空気を出し、真奈の体が空中に浮く。そして、巡洋艦の甲板に降り、前進することを指示する。
フラットは、零式からのシールドウェーブ誘導ミサイルの追尾を受け、加速していた。
「フィン、ノイズ妨害をたのむ」
「了解」
フィンの体にオレンジ色のラインが、血管の様に走る。ノイズを入れられたミサイルは、軌道が微妙にずれ始める。
フラットは、下部のノズルを前方に向けSPCを噴かす。微妙に機体を動かしながら、ミサイルの後ろに回る。そして、レーザー砲を発射する。ミサイルは、爆散した。
自衛隊の前線部隊では、動けるヘリを集め決戦に挑もうとしていた。ヘリのパイロットが、ハルバ・エボリューション1を目視した。
「あの戦闘機は、味方なのか?」
「いえ、わかりません」
「では何故、宇宙人と戦っている」
「それもわかりません。確認を取る必要があると思われます」
ヘリのパイロットは、救難用の周波数で、交信を試みる。
フィンは、自衛隊の通信を拾った。
「自衛隊の通信繋ぎますぅ」
「そこのアンノン機、所属と目的を問う」
時乃は、コックピット内の通信機で。
「わたしたちは、味方だ、安心しろ。それよりそのような機体で来るな、犬死するだけだ」
「もう少し説明したまえ」
「説明することはない、下がれ」と時乃。
自衛隊のヘリは、バトルHMに撃たれ被弾した。
時乃は、機関砲のアームの向きを変え。自衛隊のヘリを狙ったバトルHMを攻撃する。弾は、命中しバトルHMは、海に落ちた。
自衛隊のヘリは、後方へ下がった。
時乃達は、今の動きで、リズムが乱れた。数を増してきたバトルHMに、付け入る隙を与えた。右翼に被弾、幸い威力の低い武器であったため現状問題にはならなかった。
時間経過と共に、ハルバ・エボリューション1の周りにバトルHMが多くなってきた。
フラットは、加速力を生かし、ヒットアンドウェイをするが、きりが無い。
「フラット、わたしが出る」と時乃。
「了解」
「アーム固定、火器管制渡す」
時乃の座席は、後方へ移動する。外部パネルが開き、床があがる。外へ出た時乃は、SPCを噴かしバランスをとる。
「アリス、百二十ミリライフル」
「了解、送ります」
「空間転移」聖方陣が形成され、瞬間武装される。質量の小さい物を転移するときは、グレートソードは要らないようである。
時乃は、空に舞うと的確に射撃する。バトルHMは、次々爆散し数を減らしていく。フラットも残りの零式を始末した。
トラックが五台、戦闘領域の海岸線に入って来た。
「各自衛隊は戦闘領域を離脱されたし。繰り返す、各自衛隊は、戦闘領域を離脱されたし」
自衛隊の各部隊は、友軍の連絡と確認して後方へ下がる。
トラックは、自衛隊がある程度離れたことを確認すると、物陰から海を目指して加速した。バトルHMがそれを発見し攻撃しようとした。
「日本国万歳」
トラックの運転手は、起爆スイッチを押した。
青白い光が起こり、五台のトラックは、爆散した。鋭い閃光と共に巨大なキノコ雲が海岸線一帯を飲み込み焦土と化した。その核爆発に多くのバトルHMは飲み込まれた。バイタルプラント内のパイロットは、ポットの内で、激しく痙攣して気を失った。
「後方、核爆発」フィンが叫ぶ。
(日本は、何を考えている。核で惨劇を繰り返すとは)
時乃は、SPCのモニターを見ながら通信する。
フラットは、戦闘に集中していた。左右の手で二つのステックを操り、華麗に舞い、攻撃をする。
真奈は、巡洋艦の甲板にいた。日本が核を使ったことに少し驚きを見せた。
「私の知るところ、日本は、核攻撃をしない国ではなかったのか」
(中将、我々の戦力が核により打撃を受けました)
(わかりました。お兄様の機動兵器を残りのバトルHMで足止めするよう指示を)
(了解しました)
「ブルーハート!高レンジ、バスターキャノンを」
(了解)
「空間転移」一回り大きな魔方陣が形成される。瞬間、巨大なバスターキャノンが、装着される。
「空間転移反応」とフィン。
ハルバ・エボリューション1は、敵バトルHMに囲まれ、加速して離脱しようとしていた。
「ブースター点火」とフラット。
加速よりも早く、バトルHMが、ロケットアンカーを翼に撃ち込む。加速方向が乱れ、ロールする。
時乃は、上空から狙撃するが、数が多くて間に合わない。
真奈は、バスターキャノンの発射体制に入っていた。それを見た補佐官は、
(中将、射線上にはバトルHMがいます)
(バトルHMは、ただの人形、幾らでも替えがきくでしょ)
(あなたは、パイロットの負荷を知らないのですか)
(うるさい。黙れ!)
真奈は、トリガーを引いた。バスターキャノンからの高エネルギーが一直線に、ハルバ、エボリューション1を狙う。
「高エネルギー反応」とフィン。
「無理だ、かわせない」とフラット。
バスターキャノンの高エネルギーが、目の前に迫っていた。
フィンは、Rフィールドを使う。
瞬間『バリィ』ハルバ・エボリューション1の前に格子状のシールドが現れる。シールドは、バスターキャノンの高エネルギーを遮った。四散したエネルギーは、バトルHMを薙ぎ払い消えて行った。
ハルバ・エボリューション1も無傷では、なかった。四散したエネルギーの一部があたり、もはや浮かんでいるのがやっとの状態であった。
「フラット脱出を」フィンが言う。
フラットは、少し間を置き。
「了解、脱出する」
コックピットを包んでいたキャノピーを外し、座席下に装備されていた。小型のSPCを装着する。フラットは、SPCを起動し空に浮かぶ。
フィンは、配線を外すと、背中の服が破れるのと同時に、ノズルが飛び出す。軽く空気を出すと、空中に浮かんだ。
ハルバ・エボリューション1は、ゆっくりと落下し、海面で爆発炎上した。
時乃は、二人の脱出を確認し、少し目を潤ませていた。
ふと時乃は、肩に重みを感じた。見ると、黒髪に黒い瞳の少女が、白いゴシック調のドレスを着て、時乃の肩に手を乗せている。よく見ると見覚えのある顔である。同じクラスの高遠美鈴である。
「高遠、高遠美鈴」
高遠は、SPCも装備しないで、時乃と並んで飛んでいる。
「私は、高遠美鈴。でも本当は」
瞬間、高遠美鈴の髪は真鍮色に輝き出し長く伸びる。瞳は金色に輝く。
「ライジング」と高遠は言う。
「御使い!」時乃は、驚き顔になった。
「私は、地球の御使い、本当は、あなたも、あいつも殺す予定でした。しかし、あなたは変わった」
高遠は笑みを浮かべて。
「あなたに力を貸しましょう」
そう言うと、時乃から少し離れて。
『サンダーストライク』
聖方陣が形成され、黄色の球体が形成される。その球体から、エネルギー体が飛び出し、バトルHMを爆散させた。
時乃も攻撃を再開した。ライフルで確実に狙撃する。しかし、疲労もあり動きが鈍くなっていた。バトルHMが銃を撃ってくる。かわしそこねて被弾する。肩とわき腹から、血が噴き出す。高遠の援護を受け、SPCを加速させ体制を整える。前方の敵を爆散させながら進む。
真奈は、二射目のエネルギーパックを挿入して、トリガーを引いた。高エネルギーが、時乃澄香を狙う。
瞬間『バリィ』高遠が、シールドを張った。
高エネルギーは四散した。時乃も高遠も無傷であった。
「あいつを、時乃真奈を殺す」と高遠は言う。
高遠は続けて。
「射程内に入るまで、引きつけてくれ」
「わかった」時乃は、軽くうなずいた。
少し左に旋回しながら、時乃は、真奈を攻撃する。まだ、距離があるので、命中はしない。横から近接武器で飛び込んで来たバトルHMを、回り込み蹴り上げる。わき腹から、グレートソードを取出し突き刺す。バトルHMは、力をなくし落下する。
真奈は、三射目の狙いをつけていた。
瞬間
『クロックアップ』
『マインドブースト』
『アブソルプテイン』
高遠の周りに聖方陣が形成され、真奈の周りを呪文の様な空気が包み込む。
真奈は、あせり銃口を高遠に向けた。しかし、時乃の銃弾がバスターキャノンに命中した。爆発の衝撃で真奈は、吹き飛ばされた。巡洋艦の対空射撃が始まる。
時乃は、砲弾を軽くかわし艦橋へ行き銃弾を叩き込む。艦橋は炎上した。
真奈は、立ち上がろうとした。すると真鍮色の髪が、短くなっていくのを感じた。慌てて頭を押さえる。自分の命が尽きるのを感じた。
「空間転移」小さな魔方陣が展開する。
空間がわずかに歪む。真奈の力を、高遠が吸収したのである。
時乃は、空間の歪を感じ、真奈を素早く狙撃する。弾は、真奈の体を突き抜けた。血が噴出し体は崩れる。そして、空間の歪に真奈の体は吸い込まれていった。
時乃は、高遠美鈴の姿を探したが、何処にもいない。
時乃は、SPCのモニターでフラットの位置を確認し、武器を渡した。
「アリス、SPC対艦装備」
『バックパック送ります』
「空間転移」わき腹からグレートソードを出し空中の足元付近に固定させる。聖方陣が形成され、瞬間、武装が入れ替わる。
「敵艦を排除する」
時乃は、加速し巡洋艦に向かった。艦橋は破壊され機能は失っていたが、止めを刺す。対艦ミサイル発射、命中、爆散。
時乃は、加速し空母及び軽巡洋艦の射程内に入った。対空砲が時乃を狙う。
空母に狙いを定め、少し上昇してから、急降下する。
「空間転移十五秒」時乃の体が少し透ける。
空母の死角になる位置に入ると。
「空間転移通常空間へ」
時乃の体がはっきり見える。レーザブレードを持ち外装に穴を開け、空母内部に入る。時乃は、頭痛を覚えていた力の使い過ぎである。
力を振り絞り、レーザーブレードで切り裂き前に進む、通路に出た!サイレンが鳴り響き、ブロックごとの障壁が下された。時乃は、お構いなしに切り刻み進む。途中、無線発火式の爆弾を置いていく。
何人かの兵士と戦闘になるが、軽く倒す。物陰に隠れて、爆弾を爆発させる。轟音と共に空母の側面に穴が開く、Rフィールド機能も停止した。時乃は、穴から外に出た。直ぐに粒子砲を構える。発射、命中、爆散する。空になったエネルギーパックを、レバーを引いて空中に投げ出し装鎮する。
軽巡洋艦に、対艦ミサイルを撃つが撃ち落とされる。空になった、ミサイルポッドを切り離す。SPCの能力を最大値に使い、対空砲をかわしながら、艦橋を目指す。対空砲が何発かあたり、体の防護パッドが吹き飛ばされる。
「まだいける」
真鍮色の髪が、空に舞う。太陽の光を受け輝く。時乃は、艦橋に取り付き、レーザーブレードで突き破る。Rフィールドを失った艦橋へ粒子砲を叩き込む。ノズルを前に出し、空気の塊を噴出し後方へ移動する。
「空間転移十五秒」
軽巡洋艦は、ゆっくり落ちて行き爆散した。
時乃達のハルバ・エボリューション1が、戦闘空域に達したころ、市街地まで火の手は上がっていた。
「フラット攻撃準備」時乃は、指示を出す。
「了解」
「敵零式編隊二十五、攻撃範囲内に入ります」
フィンの体には、無数のコードがコックピット内の端末と繋がっている。
「行け!フラット」
「了解、加速する」
後部の噴射口から、火炎が噴出する。
「デジタル迷彩解除」
敵零式編隊の上空に突然、ハルバ・エボリューション1が現れる。零式のパイロットは、突然現れた機体に慌てたが、手際よく散開する。
「遅い」フラットが言う。
フラットは、翼の下に装着している。シールドウェーブ誘導ミサイルを発射する。ロックオンされたミサイルは、敵を旋回しながら追撃する。
不意を突いたので、十四機撃墜する。残り十一機は、零式の後部座席に乗っていたバトルHMの射撃によりミサイルを撃退していた。
「楽をさせて貰えそうにはないな」
時乃は、右翼上の二百ミリ機関砲を固定しているアームをフリーにする。右手のステックで動作チエックをする。
フラットは、機体をロールしてから、前方を地上に向けた。追撃してきた零式四機と向かい合う。レーザー砲を撃ち込む。見事にRフィールドで消される。そこに、時乃は、二百ミリ機関砲を撃ち込む、薬莢が空中に舞う。轟音と共に打ち出された弾は、Rフィールドの反射で一瞬視界を失ったパイロットを襲う。直撃、爆散する。機関砲のアームを移動させて次のターゲットに撃ち込む。命中、零式は、軌道を変え落下するとバトルHMが脱出する。亜空間戦闘用の機体は、通常の火薬武器が苦手である。逆に通常の火薬武器は、弾切れが早い。レーザーなどの光線武器は、エネルギーの持ちが長い。
ハルバ・エボリューション1には、時乃が乗っているので、母艦からの転送補給が可能なため、有利な通常火薬武器を楽に運用できる。
真奈は、空母の艦橋で、リアルタイム映像とデーターだけの画面を、顔を動かすことなく見ていた。
「お兄様いらっしゃいましたね。山本、私も出る。指揮をまかせます」
「了解です、中将殿」
真奈は、甲板に出ると。
「ブルーハート、SPCを」
『了解』
「空間転移」魔方陣が形成される。瞬間、SPCが装着される。軽く空気を出し、真奈の体が空中に浮く。そして、巡洋艦の甲板に降り、前進することを指示する。
フラットは、零式からのシールドウェーブ誘導ミサイルの追尾を受け、加速していた。
「フィン、ノイズ妨害をたのむ」
「了解」
フィンの体にオレンジ色のラインが、血管の様に走る。ノイズを入れられたミサイルは、軌道が微妙にずれ始める。
フラットは、下部のノズルを前方に向けSPCを噴かす。微妙に機体を動かしながら、ミサイルの後ろに回る。そして、レーザー砲を発射する。ミサイルは、爆散した。
自衛隊の前線部隊では、動けるヘリを集め決戦に挑もうとしていた。ヘリのパイロットが、ハルバ・エボリューション1を目視した。
「あの戦闘機は、味方なのか?」
「いえ、わかりません」
「では何故、宇宙人と戦っている」
「それもわかりません。確認を取る必要があると思われます」
ヘリのパイロットは、救難用の周波数で、交信を試みる。
フィンは、自衛隊の通信を拾った。
「自衛隊の通信繋ぎますぅ」
「そこのアンノン機、所属と目的を問う」
時乃は、コックピット内の通信機で。
「わたしたちは、味方だ、安心しろ。それよりそのような機体で来るな、犬死するだけだ」
「もう少し説明したまえ」
「説明することはない、下がれ」と時乃。
自衛隊のヘリは、バトルHMに撃たれ被弾した。
時乃は、機関砲のアームの向きを変え。自衛隊のヘリを狙ったバトルHMを攻撃する。弾は、命中しバトルHMは、海に落ちた。
自衛隊のヘリは、後方へ下がった。
時乃達は、今の動きで、リズムが乱れた。数を増してきたバトルHMに、付け入る隙を与えた。右翼に被弾、幸い威力の低い武器であったため現状問題にはならなかった。
時間経過と共に、ハルバ・エボリューション1の周りにバトルHMが多くなってきた。
フラットは、加速力を生かし、ヒットアンドウェイをするが、きりが無い。
「フラット、わたしが出る」と時乃。
「了解」
「アーム固定、火器管制渡す」
時乃の座席は、後方へ移動する。外部パネルが開き、床があがる。外へ出た時乃は、SPCを噴かしバランスをとる。
「アリス、百二十ミリライフル」
「了解、送ります」
「空間転移」聖方陣が形成され、瞬間武装される。質量の小さい物を転移するときは、グレートソードは要らないようである。
時乃は、空に舞うと的確に射撃する。バトルHMは、次々爆散し数を減らしていく。フラットも残りの零式を始末した。
トラックが五台、戦闘領域の海岸線に入って来た。
「各自衛隊は戦闘領域を離脱されたし。繰り返す、各自衛隊は、戦闘領域を離脱されたし」
自衛隊の各部隊は、友軍の連絡と確認して後方へ下がる。
トラックは、自衛隊がある程度離れたことを確認すると、物陰から海を目指して加速した。バトルHMがそれを発見し攻撃しようとした。
「日本国万歳」
トラックの運転手は、起爆スイッチを押した。
青白い光が起こり、五台のトラックは、爆散した。鋭い閃光と共に巨大なキノコ雲が海岸線一帯を飲み込み焦土と化した。その核爆発に多くのバトルHMは飲み込まれた。バイタルプラント内のパイロットは、ポットの内で、激しく痙攣して気を失った。
「後方、核爆発」フィンが叫ぶ。
(日本は、何を考えている。核で惨劇を繰り返すとは)
時乃は、SPCのモニターを見ながら通信する。
フラットは、戦闘に集中していた。左右の手で二つのステックを操り、華麗に舞い、攻撃をする。
真奈は、巡洋艦の甲板にいた。日本が核を使ったことに少し驚きを見せた。
「私の知るところ、日本は、核攻撃をしない国ではなかったのか」
(中将、我々の戦力が核により打撃を受けました)
(わかりました。お兄様の機動兵器を残りのバトルHMで足止めするよう指示を)
(了解しました)
「ブルーハート!高レンジ、バスターキャノンを」
(了解)
「空間転移」一回り大きな魔方陣が形成される。瞬間、巨大なバスターキャノンが、装着される。
「空間転移反応」とフィン。
ハルバ・エボリューション1は、敵バトルHMに囲まれ、加速して離脱しようとしていた。
「ブースター点火」とフラット。
加速よりも早く、バトルHMが、ロケットアンカーを翼に撃ち込む。加速方向が乱れ、ロールする。
時乃は、上空から狙撃するが、数が多くて間に合わない。
真奈は、バスターキャノンの発射体制に入っていた。それを見た補佐官は、
(中将、射線上にはバトルHMがいます)
(バトルHMは、ただの人形、幾らでも替えがきくでしょ)
(あなたは、パイロットの負荷を知らないのですか)
(うるさい。黙れ!)
真奈は、トリガーを引いた。バスターキャノンからの高エネルギーが一直線に、ハルバ、エボリューション1を狙う。
「高エネルギー反応」とフィン。
「無理だ、かわせない」とフラット。
バスターキャノンの高エネルギーが、目の前に迫っていた。
フィンは、Rフィールドを使う。
瞬間『バリィ』ハルバ・エボリューション1の前に格子状のシールドが現れる。シールドは、バスターキャノンの高エネルギーを遮った。四散したエネルギーは、バトルHMを薙ぎ払い消えて行った。
ハルバ・エボリューション1も無傷では、なかった。四散したエネルギーの一部があたり、もはや浮かんでいるのがやっとの状態であった。
「フラット脱出を」フィンが言う。
フラットは、少し間を置き。
「了解、脱出する」
コックピットを包んでいたキャノピーを外し、座席下に装備されていた。小型のSPCを装着する。フラットは、SPCを起動し空に浮かぶ。
フィンは、配線を外すと、背中の服が破れるのと同時に、ノズルが飛び出す。軽く空気を出すと、空中に浮かんだ。
ハルバ・エボリューション1は、ゆっくりと落下し、海面で爆発炎上した。
時乃は、二人の脱出を確認し、少し目を潤ませていた。
ふと時乃は、肩に重みを感じた。見ると、黒髪に黒い瞳の少女が、白いゴシック調のドレスを着て、時乃の肩に手を乗せている。よく見ると見覚えのある顔である。同じクラスの高遠美鈴である。
「高遠、高遠美鈴」
高遠は、SPCも装備しないで、時乃と並んで飛んでいる。
「私は、高遠美鈴。でも本当は」
瞬間、高遠美鈴の髪は真鍮色に輝き出し長く伸びる。瞳は金色に輝く。
「ライジング」と高遠は言う。
「御使い!」時乃は、驚き顔になった。
「私は、地球の御使い、本当は、あなたも、あいつも殺す予定でした。しかし、あなたは変わった」
高遠は笑みを浮かべて。
「あなたに力を貸しましょう」
そう言うと、時乃から少し離れて。
『サンダーストライク』
聖方陣が形成され、黄色の球体が形成される。その球体から、エネルギー体が飛び出し、バトルHMを爆散させた。
時乃も攻撃を再開した。ライフルで確実に狙撃する。しかし、疲労もあり動きが鈍くなっていた。バトルHMが銃を撃ってくる。かわしそこねて被弾する。肩とわき腹から、血が噴き出す。高遠の援護を受け、SPCを加速させ体制を整える。前方の敵を爆散させながら進む。
真奈は、二射目のエネルギーパックを挿入して、トリガーを引いた。高エネルギーが、時乃澄香を狙う。
瞬間『バリィ』高遠が、シールドを張った。
高エネルギーは四散した。時乃も高遠も無傷であった。
「あいつを、時乃真奈を殺す」と高遠は言う。
高遠は続けて。
「射程内に入るまで、引きつけてくれ」
「わかった」時乃は、軽くうなずいた。
少し左に旋回しながら、時乃は、真奈を攻撃する。まだ、距離があるので、命中はしない。横から近接武器で飛び込んで来たバトルHMを、回り込み蹴り上げる。わき腹から、グレートソードを取出し突き刺す。バトルHMは、力をなくし落下する。
真奈は、三射目の狙いをつけていた。
瞬間
『クロックアップ』
『マインドブースト』
『アブソルプテイン』
高遠の周りに聖方陣が形成され、真奈の周りを呪文の様な空気が包み込む。
真奈は、あせり銃口を高遠に向けた。しかし、時乃の銃弾がバスターキャノンに命中した。爆発の衝撃で真奈は、吹き飛ばされた。巡洋艦の対空射撃が始まる。
時乃は、砲弾を軽くかわし艦橋へ行き銃弾を叩き込む。艦橋は炎上した。
真奈は、立ち上がろうとした。すると真鍮色の髪が、短くなっていくのを感じた。慌てて頭を押さえる。自分の命が尽きるのを感じた。
「空間転移」小さな魔方陣が展開する。
空間がわずかに歪む。真奈の力を、高遠が吸収したのである。
時乃は、空間の歪を感じ、真奈を素早く狙撃する。弾は、真奈の体を突き抜けた。血が噴出し体は崩れる。そして、空間の歪に真奈の体は吸い込まれていった。
時乃は、高遠美鈴の姿を探したが、何処にもいない。
時乃は、SPCのモニターでフラットの位置を確認し、武器を渡した。
「アリス、SPC対艦装備」
『バックパック送ります』
「空間転移」わき腹からグレートソードを出し空中の足元付近に固定させる。聖方陣が形成され、瞬間、武装が入れ替わる。
「敵艦を排除する」
時乃は、加速し巡洋艦に向かった。艦橋は破壊され機能は失っていたが、止めを刺す。対艦ミサイル発射、命中、爆散。
時乃は、加速し空母及び軽巡洋艦の射程内に入った。対空砲が時乃を狙う。
空母に狙いを定め、少し上昇してから、急降下する。
「空間転移十五秒」時乃の体が少し透ける。
空母の死角になる位置に入ると。
「空間転移通常空間へ」
時乃の体がはっきり見える。レーザブレードを持ち外装に穴を開け、空母内部に入る。時乃は、頭痛を覚えていた力の使い過ぎである。
力を振り絞り、レーザーブレードで切り裂き前に進む、通路に出た!サイレンが鳴り響き、ブロックごとの障壁が下された。時乃は、お構いなしに切り刻み進む。途中、無線発火式の爆弾を置いていく。
何人かの兵士と戦闘になるが、軽く倒す。物陰に隠れて、爆弾を爆発させる。轟音と共に空母の側面に穴が開く、Rフィールド機能も停止した。時乃は、穴から外に出た。直ぐに粒子砲を構える。発射、命中、爆散する。空になったエネルギーパックを、レバーを引いて空中に投げ出し装鎮する。
軽巡洋艦に、対艦ミサイルを撃つが撃ち落とされる。空になった、ミサイルポッドを切り離す。SPCの能力を最大値に使い、対空砲をかわしながら、艦橋を目指す。対空砲が何発かあたり、体の防護パッドが吹き飛ばされる。
「まだいける」
真鍮色の髪が、空に舞う。太陽の光を受け輝く。時乃は、艦橋に取り付き、レーザーブレードで突き破る。Rフィールドを失った艦橋へ粒子砲を叩き込む。ノズルを前に出し、空気の塊を噴出し後方へ移動する。
「空間転移十五秒」
軽巡洋艦は、ゆっくり落ちて行き爆散した。
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