鉛の矢を持ったキューピッド~なぜか婚約破棄に巻き込まれる留学生たち~

尾形モモ

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最低の告白~友人が悪役令嬢にされそうになった~

ハナ・ムラサキ⑦

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 ヴィクトリア様が王子の頬をはたいたのだ、と理解したのは真っ赤になった王子の頬を見てからだ。姿勢を正したヴィクトリア様が王子に向かって言葉を投げつける。

「エドワード様。あなたはハナ様が『王子』という肩書きに振り回されず、自分自身を見てくださったから好きになったのでしょう? だったらあなたも、こんな方法ではなく自分自身の魅力で勝負すべきでした。私の尊敬するあなたなら、それだけの努力はできたはずです。それなのにこのような行いをしてしまったこと、もう取り返しがつきません」

 ヴィクトリア様が悲しそうな表情をしているのはエドワード王子の思い人が自分じゃなかったからなのか、あるいは仮にも婚約者がこのようなことをしてしまったからなのか。どちらなのかわからない私にヴィクトリア様が向き直り、淑やかに頭を下げる。

「ハナ・ムラサキ様。今回の件ではあなたに、引いてはジェドに多大なる迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。この後のことは、我が国ライジェルで解決いたします。どうかこの場は、お引き取りください」

 暗に出て行ってほしい、と言われているのを汲み取った私は大人しく頭を下げて会場を後にする。

 ヴィクトリア様のことを心配しながら、それでも私が気づいたのはヴィクトリア様が王子を「私が尊敬するあなた」と口にしたことだった。



 ヴィクトリア様がエドワード王子のことを尊敬していたことを、私は今初めて知ったのだ。



 押しつけられるようにジェドに帰された私は、事の顛末を手紙で知ることになった。

 エドワード王子はデューク公爵家に今回の件を糾弾され、辺境へと追いやられることになった。ヴィクトリア様は現在、ジェドも含む様々な国から求婚の誘いが来ていて今後はどうなるのかまだ何もわからないという。



「でも、私はエドワード王子を立派な方だと思っていました。それを告白していれば、今回のような事態は防げていたのでしょうか。今となっては、嘆くことしかできません」

 そう締めくくられた手紙を片手に、私はヴィクトリア様の悲しげな表情を思い出すのだった。
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