鉛の矢を持ったキューピッド~なぜか婚約破棄に巻き込まれる留学生たち~

尾形モモ

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聖女とは結婚できませんよ?~王子の盛大なる勘違い~

リン・フウカ③

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 会場のざわめきが、ぴたりと収まった。


 けれど、私が口にしたことはたぶん間違っていないはず。彫刻のように固まってしまったセシリア様と王子、それからアンナ様に私は説明する。

「この国のことはまだまだ勉強不足ですが、この国は教会と国家の結びつきが非常に強く近年はそれを疑問視する声があると学びました。そこで国は急速に政教分離を進めようとし、そのうちの一つとして『国を統治する王族の人間は聖女と結婚することを禁ずる』という法律が三年前にできたと聞いていたのですが、それは違うのでしょうか?」

 三年前といえば、ちょうど私が留学生としてこの国に派遣されたばかりの頃だ。



 当時は今より教会の力が強く、特に聖女に対する民衆の人気はすさまじいものだった。

 聖女として教会で正式に認められた女性はその肖像画が大量生産され、それは瞬く間に売り切れる。聖女に関連する土地は「○○聖女の出身地」「○○聖女の生家」として観光地扱いされるようになり、王家ですらその虜となっているところがあった。



 しかし。政治とは常に中立であらねばならず、どこかの勢力だけを贔屓するのは本来許されることではない。

 それは不正の温床となり、国民の脅かすものであるからだ。個人の自由は尊重されるが、公的なものはそういったものに囚われてはならない。他国を見た先代の国王は慌ててそう思い、政治と宗教が区別されるようそんな法律を作ったのだ。



 だが、勢い任せで作られたそれは弊害ももたらすものだった。



「何を言っている! 私の伯父上、カルロ様は聖女のリリアン様と結婚したばかりではないか!」

「はい、仰る通りです。ちょうど私がこの国に留学してきたばかりの頃、二人は教会の祝福を得て幸せにご結婚なさりました」

 噛みつくように叫ぶエドアルド王子へ、私はつとめて冷静に返す。彼の言うことは何も間違っていなかった。
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