ブラックライダー

土橋絵里④

「――っん！？！？」

　自分の髪が引っ張られたのだ、と気がついた土橋絵里は悲鳴を上げようとする。




　だが叫ぶより早く、土橋絵里の口へ乱暴に布を押し当てられる。

　何者かの襲撃を受けている、と察した土橋絵里は半狂乱になってじたばたと手足を動かすが黒い皮手袋を嵌めた腕はびくともしなかった。そのうち、足元を掬われた土橋絵里は強引に地面へと身体を叩きつけられる。

「がはっ……！」

　前面から、うつ伏せとなる形で押し倒された土橋絵里は痛みに悶える。その間に全身黒ずくめの襲撃者、ブラックライダーは彼女の体へ馬乗りになった。身の危険を感じ、何とか逃げ出そうとする土橋絵里だがその度に黒い拳が容赦ない打撃を与えてきた。



　このままでは、何をされるか――恐ろしくなった土橋絵里の両足が、頑丈なロープで縛られる。

　かと思えば、ふいに土橋絵里の体が軽くなった。「ひっ……」と短い悲鳴を上げながら土橋絵里が振り向けば、立ち上がるブラックライダーの姿が見える。

「や、た、助け……！」

　土で汚れた制服を気にする余裕もなく、這うように動きながら立ち上がろうとする。



　なんとかして、この場から逃げなければ。これ以上、危害を加えられる前になんとかしなければ。



　そう考え、行動しようとする土橋絵里の耳に無情なエンジン音が聞こえてきた。