95 / 101
彼女の兄は根っからの犯罪者
彼女の兄は根っからの犯罪者⑥
先程耳にした馬の蹄の音は、ハイネの愛馬の物だった様だ。
馬にまたがった彼に不自然な体制で抱きかかえられているジルは、縛られたままで、彼の力だけにで自分の身体のバランスが保たれているのが落ち着かない。
「ハイネ様、よく場所が分かりましたわね」
「話は後だ。今は安全確保を優先しよう」
彼は短剣でジルの胴や手に巻かれた縄を切ってくれる。
身体が自由になり、開放感が凄い。
「有難うございますっ」
「ここは危険だ。取りあえず山道を抜けるぞ」
「え……、でもマルゴットが……」
「ジル様! 私は大丈夫です。ハイネ様と安全な場所へ行ってください!」
傍まで来ていたマルゴットは目を潤ませてジルを見上げていた。
「近衛達も追いついて来ている。アイツ等に任せよう」
ハイネの言う様に、何時の間にか近衛達がヨナスの周囲を取り囲んでいた。
ヨナスが不機嫌全開な表情でこちらを見る。
「皇太子様でしたっけ?」
「お前ごときにわざわざ自己紹介すると思うな」
「高飛車だな……。まぁ、いいや。ハイネ殿下、俺と取引をしません?」
ヨナスはワームを撫でながら、性質の悪い笑みをその顔に張り付けた。
「取引だと?」
(ヨナス……、どういう風の吹きまわしなの? 取引だなんて……)
「帝国は大陸の統一を考え、周辺諸国と小競り合いを繰り返す。戦争の切り札は多い方がいい。ですよね?」
「……」
何故今その話しを持ち出すのだろうか?
ジルはヨナスの思考が読めず、首を傾げる。
「貴方の為に、この異能の力を貸しますよ。そのかわり、貴方が今、腕に抱く女性を引き渡してもらえませんか?」
ギクリとする。ハイネの野心を思い出したからだ。
彼は出会った当初、ヨナスの言うように、大陸の統一について口にしていた。出来る限り帝国の戦力を増強したち考えているだろう。
ヨナスの能力を目にし、意のままに使いたいと思わないはずがない。
「どうせ、ジル様を愛人くらいに留めておくおつもりですよね? だったら――」
「話にならない。お前とジルを天秤にかけると何故思う? 能力者はいくらでもいるが、ジルの代わりはいない」
ヨナスの言葉に唇を噛みしめたジルだったが、ハイネの言葉で心が温かくなった。
(ちゃんと、一人に人間として、ハイネ様に大事に思ってもらえてたのね)
彼は、近衛に「その男を捕らえろ」と命じ、馬を走らせる。
ジルは腕に添えられた彼の手を握る。
「ハイネ様に、ヨナス以上の価値を提供できるよう、頑張りますわ」
「別に……、アンタは傍にいてくれるだけでいい」
ボソリと告げられた言葉は、ちゃんとジルの耳に届いた。
(嬉しい。私ももっとハイネ様と一緒に居たい……)
「……消えたぞ!」
「一体どこに行ったんだ!?」
後方で近衛達の騒ぎが聞こえ、振り返える。巨大なワームの姿が見えない。ヨナスの姿も――。
「逃げられたのかもしれませんわ」
「はぁ……、異能力者は厄介な存在だな」
「ハイネ様、警備を厚くして下さいね。何か仕掛けてくるかもしれませんから」
「そうだな。考えておく」
野ばらの会は、戦争には関係しないという事をマルゴットから聞いた事がある。
だけど、ヨナスはハイネに戦争への加担を持ち掛けた。あの男にはタブーが無いのだろうか?
心配になり、ハイネの上着の裾をギュッと握りしめる。
「アンタさ、あれだけ俺と一緒に馬に乗りたくなさそうだったのに、今は平気なんだな」
笑い混じりの問いかけに、ジルは自分の今の状況を急に意識し始めた。
ハイネに横抱きにされているのだ。
「もしかして、昨日抱っこしてやったから慣れたとか?」
「ち、違いますわ!」
昨日に比べ、妙に余裕が有る様に見えるハイネが憎たらしい。
(慣れたのはハイネ様の方なのでは!? うーん……悔しいわ。置いて行かれた気分!)
ジルは意趣返しに、彼の首に思いっきり抱きつく。
「……っ!? アンタなぁ!!」
「フフフ……。恥ずかしいでしょう!? ギブしてもいいですわよ!」
「……ギブなんかしない」
馬が止められ、ジルの身体は両腕で抱きしめられる。
「えぇ!?」
ここで狼狽えるのが、ハイネだったはずだ。なのに、何故か持ちこたえた。
嫌がらせのつもりだったのに、このままが良いらしい。
危機感を募らせたジルは、ササっと彼の首から腕を外す。
「最近頭を強く打ったんじゃありませんこと?」
「打つわけないだろ」
「どこに向かっているか分かりませんが、馬を走らせてください」
「好きって言えばいい?」
ハイネはいつも、ジルの言いたい事を酌む人なのに、急に言葉が通じ辛くなった。ジワジワ追い詰められていくような感覚だ。
「そ、……それは……」
「アンタ言ってただろ? 言葉が欲しい、じゃないと恋人同士の行為は受け入れないって」
昨日ハイネに突きつけた言葉を持ち出される。彼なりに色々考えてくれたのは嬉しい。だけど、聞く準備が出来ていない。こういうのは、テーブル等を挟んで、畏まって言い合うものではないのだろうか?
「この話は、また今度にしません?」
「好きだ」
延期の訴えは、聞き届けられなかった。
彼が口にした言葉に頭が真っ白になり、呆けた表情で、少し上にある彼の顔を見つめる。
「好き」
(ひぃ!?)
思い返すと、ジルは誰かにストレートに告白された事がない。それだけに、ハイネの言葉は大変な威力をもっていて、ジルの柔らかい心臓を撃ち抜く。
何度も、何度も。
聞き続けるのが辛くなり、「好き」のバーゲンセール中のハイネの口を、モギュッと手で塞ぐ。
「もう通じましたわ!! 因みに私も好きですけどね! 貴方の事! 一度しか言いません!」
(あぁぁぁ~~!! 言ってしまったわ! もっと情緒ある言い方を考えたかったのに!!)
自分の言葉に内心動揺しながら、挑む様にハイネの灰色の瞳を見つめる。
熱のこもるその目は、細められ、塞ぐジルの手をベリッと剥がした。
「これで、結婚を前提にした付き合いが出来るって事だよな?」
「結婚を前提にするのかどうかは……、何とも言えませんが。その他は……、まぁ、ゴニョゴニョ……」
「一応確認だけど、恋人同士の行為って、キスしたり、食い物を食べさせあったり」
「うーん、そうでしたっけ……?」
座った目でジルを見つめるハイネが怖い。
「お互いの私室で過ごしたり、一緒にベッドで寝たり、風呂に入ったり……、うぐっ!?」
早口で捲し立てられる、その内容に耐えられなくなり、手が出ていた。
思いっきり、頬を摘まむ。
「は、破廉恥です!! 紳士の風上にもおけませんわ! 世間の人達はもっと、ソフトな付き合いをしているのです! ええと、そうですね……手を繋ぐくらいまでかと!」
「嘘をつくな! バシリーはこのくらいの行為は普通だって言ってたぞ!」
力尽くでジルの手を頬から離したハイネは、ニタリと残忍な笑顔を浮かべた。
「なっ!? ハイネ様は騙されていますわ!」
「アンタに騙されようとしてるんだろうな!」
「私よりも、バシリーさんを信じるのですの!? もうバシリーさんと付き合ったらいいのですわ!」
「何言ってんだ!?」
不毛な言い争いは、近衛達が追い付くまで続いたとか……。
馬にまたがった彼に不自然な体制で抱きかかえられているジルは、縛られたままで、彼の力だけにで自分の身体のバランスが保たれているのが落ち着かない。
「ハイネ様、よく場所が分かりましたわね」
「話は後だ。今は安全確保を優先しよう」
彼は短剣でジルの胴や手に巻かれた縄を切ってくれる。
身体が自由になり、開放感が凄い。
「有難うございますっ」
「ここは危険だ。取りあえず山道を抜けるぞ」
「え……、でもマルゴットが……」
「ジル様! 私は大丈夫です。ハイネ様と安全な場所へ行ってください!」
傍まで来ていたマルゴットは目を潤ませてジルを見上げていた。
「近衛達も追いついて来ている。アイツ等に任せよう」
ハイネの言う様に、何時の間にか近衛達がヨナスの周囲を取り囲んでいた。
ヨナスが不機嫌全開な表情でこちらを見る。
「皇太子様でしたっけ?」
「お前ごときにわざわざ自己紹介すると思うな」
「高飛車だな……。まぁ、いいや。ハイネ殿下、俺と取引をしません?」
ヨナスはワームを撫でながら、性質の悪い笑みをその顔に張り付けた。
「取引だと?」
(ヨナス……、どういう風の吹きまわしなの? 取引だなんて……)
「帝国は大陸の統一を考え、周辺諸国と小競り合いを繰り返す。戦争の切り札は多い方がいい。ですよね?」
「……」
何故今その話しを持ち出すのだろうか?
ジルはヨナスの思考が読めず、首を傾げる。
「貴方の為に、この異能の力を貸しますよ。そのかわり、貴方が今、腕に抱く女性を引き渡してもらえませんか?」
ギクリとする。ハイネの野心を思い出したからだ。
彼は出会った当初、ヨナスの言うように、大陸の統一について口にしていた。出来る限り帝国の戦力を増強したち考えているだろう。
ヨナスの能力を目にし、意のままに使いたいと思わないはずがない。
「どうせ、ジル様を愛人くらいに留めておくおつもりですよね? だったら――」
「話にならない。お前とジルを天秤にかけると何故思う? 能力者はいくらでもいるが、ジルの代わりはいない」
ヨナスの言葉に唇を噛みしめたジルだったが、ハイネの言葉で心が温かくなった。
(ちゃんと、一人に人間として、ハイネ様に大事に思ってもらえてたのね)
彼は、近衛に「その男を捕らえろ」と命じ、馬を走らせる。
ジルは腕に添えられた彼の手を握る。
「ハイネ様に、ヨナス以上の価値を提供できるよう、頑張りますわ」
「別に……、アンタは傍にいてくれるだけでいい」
ボソリと告げられた言葉は、ちゃんとジルの耳に届いた。
(嬉しい。私ももっとハイネ様と一緒に居たい……)
「……消えたぞ!」
「一体どこに行ったんだ!?」
後方で近衛達の騒ぎが聞こえ、振り返える。巨大なワームの姿が見えない。ヨナスの姿も――。
「逃げられたのかもしれませんわ」
「はぁ……、異能力者は厄介な存在だな」
「ハイネ様、警備を厚くして下さいね。何か仕掛けてくるかもしれませんから」
「そうだな。考えておく」
野ばらの会は、戦争には関係しないという事をマルゴットから聞いた事がある。
だけど、ヨナスはハイネに戦争への加担を持ち掛けた。あの男にはタブーが無いのだろうか?
心配になり、ハイネの上着の裾をギュッと握りしめる。
「アンタさ、あれだけ俺と一緒に馬に乗りたくなさそうだったのに、今は平気なんだな」
笑い混じりの問いかけに、ジルは自分の今の状況を急に意識し始めた。
ハイネに横抱きにされているのだ。
「もしかして、昨日抱っこしてやったから慣れたとか?」
「ち、違いますわ!」
昨日に比べ、妙に余裕が有る様に見えるハイネが憎たらしい。
(慣れたのはハイネ様の方なのでは!? うーん……悔しいわ。置いて行かれた気分!)
ジルは意趣返しに、彼の首に思いっきり抱きつく。
「……っ!? アンタなぁ!!」
「フフフ……。恥ずかしいでしょう!? ギブしてもいいですわよ!」
「……ギブなんかしない」
馬が止められ、ジルの身体は両腕で抱きしめられる。
「えぇ!?」
ここで狼狽えるのが、ハイネだったはずだ。なのに、何故か持ちこたえた。
嫌がらせのつもりだったのに、このままが良いらしい。
危機感を募らせたジルは、ササっと彼の首から腕を外す。
「最近頭を強く打ったんじゃありませんこと?」
「打つわけないだろ」
「どこに向かっているか分かりませんが、馬を走らせてください」
「好きって言えばいい?」
ハイネはいつも、ジルの言いたい事を酌む人なのに、急に言葉が通じ辛くなった。ジワジワ追い詰められていくような感覚だ。
「そ、……それは……」
「アンタ言ってただろ? 言葉が欲しい、じゃないと恋人同士の行為は受け入れないって」
昨日ハイネに突きつけた言葉を持ち出される。彼なりに色々考えてくれたのは嬉しい。だけど、聞く準備が出来ていない。こういうのは、テーブル等を挟んで、畏まって言い合うものではないのだろうか?
「この話は、また今度にしません?」
「好きだ」
延期の訴えは、聞き届けられなかった。
彼が口にした言葉に頭が真っ白になり、呆けた表情で、少し上にある彼の顔を見つめる。
「好き」
(ひぃ!?)
思い返すと、ジルは誰かにストレートに告白された事がない。それだけに、ハイネの言葉は大変な威力をもっていて、ジルの柔らかい心臓を撃ち抜く。
何度も、何度も。
聞き続けるのが辛くなり、「好き」のバーゲンセール中のハイネの口を、モギュッと手で塞ぐ。
「もう通じましたわ!! 因みに私も好きですけどね! 貴方の事! 一度しか言いません!」
(あぁぁぁ~~!! 言ってしまったわ! もっと情緒ある言い方を考えたかったのに!!)
自分の言葉に内心動揺しながら、挑む様にハイネの灰色の瞳を見つめる。
熱のこもるその目は、細められ、塞ぐジルの手をベリッと剥がした。
「これで、結婚を前提にした付き合いが出来るって事だよな?」
「結婚を前提にするのかどうかは……、何とも言えませんが。その他は……、まぁ、ゴニョゴニョ……」
「一応確認だけど、恋人同士の行為って、キスしたり、食い物を食べさせあったり」
「うーん、そうでしたっけ……?」
座った目でジルを見つめるハイネが怖い。
「お互いの私室で過ごしたり、一緒にベッドで寝たり、風呂に入ったり……、うぐっ!?」
早口で捲し立てられる、その内容に耐えられなくなり、手が出ていた。
思いっきり、頬を摘まむ。
「は、破廉恥です!! 紳士の風上にもおけませんわ! 世間の人達はもっと、ソフトな付き合いをしているのです! ええと、そうですね……手を繋ぐくらいまでかと!」
「嘘をつくな! バシリーはこのくらいの行為は普通だって言ってたぞ!」
力尽くでジルの手を頬から離したハイネは、ニタリと残忍な笑顔を浮かべた。
「なっ!? ハイネ様は騙されていますわ!」
「アンタに騙されようとしてるんだろうな!」
「私よりも、バシリーさんを信じるのですの!? もうバシリーさんと付き合ったらいいのですわ!」
「何言ってんだ!?」
不毛な言い争いは、近衛達が追い付くまで続いたとか……。
あなたにおすすめの小説
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
『「ママは我慢してればいいんでしょ?」と娘に言われた日、私は妻をやめた』~我慢をやめた母と、崩れていく家族、そして再生~
まさき
恋愛
私はずっと「いい妻」でいようとしてきた。
夫に逆らわず、空気を読み、波風を立てないように生きる。
それが、この家を守る唯一の方法だと思っていた。
娘にも、そうであってほしかった。
けれど──
その願いは、静かに歪んでいく。
夫の言葉をなぞるように、娘は私を軽んじるようになった。
そしてある日、夕食の後片付けをしていた私に、娘は言った。
「ママはさ、我慢してればいいんでしょ?」
その一言で、何かが壊れた。
我慢することが、母である証だと思っていた。
だがそれは、私自身をすり減らすだけの“呪い”だった。
──もう、我慢するのはやめる。
妻であることをやめ、母として生き直すために。
私は、自分の人生を取り戻す決意をした。
その選択は、家族を大きく揺るがしていく。
崩れていく夫婦関係。
離れていく娘の心。
そして、待ち受ける“ざまぁ”の行方。
それでも私は問い続ける。
母とは何か。
家族とは何か。
そして──私は、どう生きるべきなのか。
虐げられた伯爵令嬢は獅子公爵様に愛される
高福あさひ
恋愛
リリム王国辺境伯エインズワース伯爵家の長女、ユーニス・エインズワース。伯爵令嬢であるはずなのに、生活は使用人以下で、まともに育てられたことはない。それでも心優しく強かに育った彼女は、ある日、隣国との国境である森で二人の怪我をした男性を見つけて……?※不定期更新です。2024/5/14、18話が抜けていたため追加しました。
【2024/9/25 追記】
次回34話以降は10/30より、他サイト様と同時の更新予定です。