米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

文字の大きさ
5 / 156
ようこそ異世界へ

ようこそ異世界へ②

しおりを挟む
 目を瞑ったきり、うんともすんとも言わなくなった少年を放置し、マリ達はキャンプカーの中を一通りチェックする。車内は三百万ドル程かけているだけあって高級ホテルのスィートルーム並みに豪華で、機能が充実している。それだけに、異世界の地でまとも動くのか不安だったものの、杞憂だったようだ。キッチンもシャワー&バスルームも、なんの問題も無かった。
 とはいえ、キャンプカーで料理をした事の無いマリは、試しに使ってみたいという思いがまさり、軽食を作ってみることにする。

 棚や巨大な冷蔵庫を開いてみると、昨日ストロベリーフィールド家の使用人が総出で買い出しに行っただけあって、食材がみっちりと詰まっている。当面は何も買わなくても生きていけそうな感じではある。

 熱したお湯に昆布を入れ、出汁を取る間にアワビを塩を使って洗い、殻から外す。出汁の中にニューヨークで炊いてきた白米や薄くスライスしたアワビ、こんぶ茶を入れ、一煮立ちさせたら完成だ。
 平行して作っていた卵スープを器に入れ、テーブルに運ぶ。
 いつもは自分や両親の分しか作らないが、今回は特別なのでセバスちゃんの分も用意した。

「セバスちゃん! ご飯にしよう」

「おお……お……。まさかマリお嬢様の手料理を味わえる日が来るとは! 異世界にきて初めてテンション上がってます」

「代わりにアンタが後片付けしてね」

「勿論! 勿論!」

「アンタって、実は家事魔法? 使えるの?」

 カーナビに表示され、気になっていた事を聞いてみる。セバスちゃんの祖母がこの世界への移転場所を知っていた事から、彼がマリに隠してアレコレ出来たとしても不思議ではない。さっき、白髪の少年の謎の力を目にしただけに、目の前の執事が不審な術を使い出しても驚かないかもしれない。

「家事魔法がどういうものか知りませんけど、私は魔法なんて使えませんよ。そういうマリお嬢様はどうなんですか? 錬金術使えます? 昔のジャパニーズアニメの義手の主人公みたいに」

「私もそんなの使えない。ていうか、錬金術ってどんなものなの?」

「何か薬を作ったりするんじゃないですか??」

「何それ、全然わかんない」

「ですよねぇ……」

 取り敢えず腹ごしらえを先にしようと、お粥を口に含むと、昆布茶の出汁の香りと、優しい味わいに自然笑顔になる。
 アワビは噛むとコリコリしていて、食感が楽しい。
 一昨日からずっとドタバタしていただけに、美味しいアワビ粥を食べて漸く一息つけた様な感覚だ。

 テーブルを挟んで、向かい側に座るセバスちゃんも、しきりに「美味しい、美味しい」と呟き、涙までこぼしている。
 調理した事に、やり甲斐を感る。

 笑顔のマリがスープの器を手に持つと、ドア側から視線を感じた。そちらを向くと、白髪の少年がマリ達の様子を眺めていたようだ。

「まさか、アンタも食べたいの?」

 声をかけると、フイッと顔を背けられる。

「……」

「マリ様、アイツに食べさせるんですか?」

 さっきの彼の行いを思えば、正直放置したい。だけど、力づくで追い出せない以上、何日もキャンプカーに居座られる事になるだろうけど、このまま彼に何も食べさせなかったら、餓死するんだろうか? 寝覚めが悪くなりそうだ。

「空腹な奴のそばで食事したら、どんなに美味しい料理でも不味く感じるだろうね」

 マリはため息を吐き、立ち上がる。キッチンスペースでアワビ粥と卵スープを器に盛って、レンゲをつっこみ、少年から三十センチ程離れた所に置いてやった。

 紫色の瞳がマリの顔を写した。面食らっているようだ。

「残さず食べる事!」

 マリの命令に、少年はコクリと頷く。

(素直だと、調子狂うな)

「マリお嬢様、優しくなりましたね。三年程前なら私ともどもアイツを放置したでしょう」

「単なる気まぐれだから。それに、出て行ってもらう事はかわりない」

 セバスちゃんの煽りに顔を赤くする。慣れない事をして鳥肌が立ちそうなのに、追い討ちをかけないでほしい。

「アンタが後片付けしてる間、私が運転する」

「それはいいんですけど、これからどこに行くんです? 目的地は?」

「取り敢えず大きめな街に行こう。アレックスから連絡が来なくても、情報が集まる所にいたら、アイツを探し出しやすいかもしれないから」

「なるほど、良いと思いますよ」

(それにしてもアレックス、何でさっさとメッセージを送って来ないんだろ? 用がありそうだったのに)

 マリに何の働きを期待しているのかは不明だが、それをさっさと終わらせ、アレックスをニューヨークに連れ戻したい。そして婚約を解消し、まともな人と自由に恋愛するのだ!

「でも、大きな街にいけたとしても、そもそも、住人と言葉通じますかね?」

「うー。分かんないけど、アレックスごときが何とか生活してそうだし、通じるんじゃない?」

「ああ、確かにあの人のメッセージは、現地人と意思疎通しないと書けなそうな内容ですよね」

 大人しくしているのは、マリの性に合わない。腹も満たされた事だし、行動あるのみだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...