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害獣からの身の守り方
害獣からの身の守り方②
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「ぎゃんっ!!」
キャンプカーの外から甲高い悲鳴が聞こえた。ぎょっとして窓から様子を伺うと、電気柵の近くにコルルが倒れていた。
マリは慌てて車外に飛び出し、電撃のスイッチを切ってから柵の外側に出た。
「え……、嘘……。まさか死んで……?」
ピクリとも動かない彼女の身体。彼女とはたった1日程度の関係なのに、マリは動揺し、早鐘の様に鼓動が鳴りだす。
ノロノロと彼女の側にしゃがみ込み、口に手を当てる。
手の平に感じるのは、湿った呼気。命はあるらしい。頸動脈を触ってみると、こちらも大丈夫そうだ。
ひとまず胸を撫で下ろす。
「マリお嬢様! 今悲鳴が……。って、コルルさん!?」
遅れてドアから出て来たセバスちゃんはギョッとした顔で立ち竦んだ。
「来るのが遅い!」
「す、すいません……。電気柵で死んでしまったので……?」
これを設置したのはセバスちゃんだ。気が気ではないのだろう。
「命はある」
「良かった……」
本当に良かったのだろうか? 学校で、感電について少し習った事があるが、心肺停止等が起こらなくても、身体の深い部分の組織を壊してしまっていたりするらしい。切断することもあるそうだ。
コルルは目覚めない。寝かせておけば治るのならいいのだが、このままにしておけば、手遅れになる可能性だってある……。
レアネー市の冒険者ギルドまで行き、誰か呼んで来ようかと考えた時、
ーーザクリ……
後方で音がした。こんな時にいったい誰なのかと苛立ちもあらわに振り返る。
夕焼けをバックにボンヤリとした表情で立っていたのは、白髪の少年だ。コルルについて来たのかもしれない。婚約者がマリ達に倒され、どういう心境なのだろうか? それとも何も考えていないのか……。
だけど、その顔を見て、彼が以前マリに治癒魔法を使用した事を思い出さずにいられなかった。
睨む様に強く、彼の目を見つめる。
「アンタ。治癒の魔法使ってたよね?」
「……」
「この子の事助けてあげてよ」
少年はコトリと首を傾げた。
「僕を追い払う為……、その子に健全でいてもらわなきゃいけないから?」
「……っ」
マリの思惑は見抜かれていたらしい。でも言い訳なんて無様な事をする選択はマリの中には無い。
「そうだよっ! アンタに出て行ってほしいんだ! 私は身内しか信じない。今までどれだけ隙を見せた瞬間に騙されて、嵌められて来たと思ってる? 片親が日本人だからって、差別された事だって一度や二度じゃない! だから信用する人しか側におきたくないんだ! アンタは軽蔑するかもしれないけど、こうやって私は自分を守ってきた!」
アメリカの若いセレブ社会で暮らす事の難しさを、この少年にいくら言っても通じないかもしれない。彼はアングロサクソン系の美形の少年だから、マリの立場なんて想像も出来ないだろう。興味のないブランド品を揃えたり、リアリティー番組を逃さず観て話題についていったりする馬鹿らしさなんて、経験しているはずもないだろう。
友人だと思っていた子に、気を許し、素で接したばっかりに、ちょっとしたボケやミスを変な尾ひれ付きで噂にされたりなんか……。
自分の側に異分子を置くのが怖い。でも、この少年はマリの気持ちは分らない。自分を不審者だとすら思っていなさそうだ。マリからの単なる嫌がらせと受け取られている可能性がある。
少年はため息をついた。いつしかその表情は何らかの感情が浮んでいた。
(何を考えてるの……?)
彼はマリの側に腰を下ろし、コルルの額に手をかざした。
「君が初めてだ。そんな風に、僕に強く、複雑な訴えをする人は……。人間はもっと分かりやすいものだと思ってたのに、君の気持ちはいまいち分らない……」
「悪かったね。捻くれてて」
「君に信用されてみたくなった。とても困難そうだから」
彼の言葉の意味を考える。まるで、エベレストに登ってみたい、という達成意欲のみで、マリと向き合おうと考えているみたじゃないか。ムッとして睨むも、彼は目を閉じていたので意味がなかった。
「セラフィムよ……この者に癒しを……」
彼の手から神聖な光が生まれる。それはコルルの額から全身を覆う。無機質で、ただただ眩しい。
一分も経たずして、コルルの顔色が良くなってきた。
光がおさまると、コルルはパチリと目を覚ます。
「あれ……? 何でアタシ倒れて……」
「コルル!」
何事も無かったかのように立ち上がる彼女を呆然と見上げる。
「どうして泣いてるの?」
コルルに指摘され、一瞬誰の事を言っているのか分らなかった。だけど、頰に濡れた感覚があり、自分が泣いている事にようやく気がつく。久し振りに人前で泣いた事に動揺し、慌てて袖で拭った。
「何でもない! この鉄線には触れないで! 危険だから!」
「あ、そっか! アタシここに張られたワイヤーにかかっていた魔法に気がつかなかったんだね。やっぱりアタシ駄目駄目だぁ!」
マリ達を恨むでもなく、頭をかくコルルに胸が痛む。だからポロリと口から謝罪の言葉が出てしまった。
「ごめん……」
「え? 何か言った?」
「べ、別に……。それより何か用? 私達を探してここまで来たんでしょ?」
「あぁ! そうそう。明日の結婚式のお誘いだよ! 朝十時半に街の西側のケヤキの大木の下でやるから、マリとセバスちゃんも来てね!」
「う、うん……」
「行きましょう。この世界の結婚式に興味がありますから」
キャンプカーの外から甲高い悲鳴が聞こえた。ぎょっとして窓から様子を伺うと、電気柵の近くにコルルが倒れていた。
マリは慌てて車外に飛び出し、電撃のスイッチを切ってから柵の外側に出た。
「え……、嘘……。まさか死んで……?」
ピクリとも動かない彼女の身体。彼女とはたった1日程度の関係なのに、マリは動揺し、早鐘の様に鼓動が鳴りだす。
ノロノロと彼女の側にしゃがみ込み、口に手を当てる。
手の平に感じるのは、湿った呼気。命はあるらしい。頸動脈を触ってみると、こちらも大丈夫そうだ。
ひとまず胸を撫で下ろす。
「マリお嬢様! 今悲鳴が……。って、コルルさん!?」
遅れてドアから出て来たセバスちゃんはギョッとした顔で立ち竦んだ。
「来るのが遅い!」
「す、すいません……。電気柵で死んでしまったので……?」
これを設置したのはセバスちゃんだ。気が気ではないのだろう。
「命はある」
「良かった……」
本当に良かったのだろうか? 学校で、感電について少し習った事があるが、心肺停止等が起こらなくても、身体の深い部分の組織を壊してしまっていたりするらしい。切断することもあるそうだ。
コルルは目覚めない。寝かせておけば治るのならいいのだが、このままにしておけば、手遅れになる可能性だってある……。
レアネー市の冒険者ギルドまで行き、誰か呼んで来ようかと考えた時、
ーーザクリ……
後方で音がした。こんな時にいったい誰なのかと苛立ちもあらわに振り返る。
夕焼けをバックにボンヤリとした表情で立っていたのは、白髪の少年だ。コルルについて来たのかもしれない。婚約者がマリ達に倒され、どういう心境なのだろうか? それとも何も考えていないのか……。
だけど、その顔を見て、彼が以前マリに治癒魔法を使用した事を思い出さずにいられなかった。
睨む様に強く、彼の目を見つめる。
「アンタ。治癒の魔法使ってたよね?」
「……」
「この子の事助けてあげてよ」
少年はコトリと首を傾げた。
「僕を追い払う為……、その子に健全でいてもらわなきゃいけないから?」
「……っ」
マリの思惑は見抜かれていたらしい。でも言い訳なんて無様な事をする選択はマリの中には無い。
「そうだよっ! アンタに出て行ってほしいんだ! 私は身内しか信じない。今までどれだけ隙を見せた瞬間に騙されて、嵌められて来たと思ってる? 片親が日本人だからって、差別された事だって一度や二度じゃない! だから信用する人しか側におきたくないんだ! アンタは軽蔑するかもしれないけど、こうやって私は自分を守ってきた!」
アメリカの若いセレブ社会で暮らす事の難しさを、この少年にいくら言っても通じないかもしれない。彼はアングロサクソン系の美形の少年だから、マリの立場なんて想像も出来ないだろう。興味のないブランド品を揃えたり、リアリティー番組を逃さず観て話題についていったりする馬鹿らしさなんて、経験しているはずもないだろう。
友人だと思っていた子に、気を許し、素で接したばっかりに、ちょっとしたボケやミスを変な尾ひれ付きで噂にされたりなんか……。
自分の側に異分子を置くのが怖い。でも、この少年はマリの気持ちは分らない。自分を不審者だとすら思っていなさそうだ。マリからの単なる嫌がらせと受け取られている可能性がある。
少年はため息をついた。いつしかその表情は何らかの感情が浮んでいた。
(何を考えてるの……?)
彼はマリの側に腰を下ろし、コルルの額に手をかざした。
「君が初めてだ。そんな風に、僕に強く、複雑な訴えをする人は……。人間はもっと分かりやすいものだと思ってたのに、君の気持ちはいまいち分らない……」
「悪かったね。捻くれてて」
「君に信用されてみたくなった。とても困難そうだから」
彼の言葉の意味を考える。まるで、エベレストに登ってみたい、という達成意欲のみで、マリと向き合おうと考えているみたじゃないか。ムッとして睨むも、彼は目を閉じていたので意味がなかった。
「セラフィムよ……この者に癒しを……」
彼の手から神聖な光が生まれる。それはコルルの額から全身を覆う。無機質で、ただただ眩しい。
一分も経たずして、コルルの顔色が良くなってきた。
光がおさまると、コルルはパチリと目を覚ます。
「あれ……? 何でアタシ倒れて……」
「コルル!」
何事も無かったかのように立ち上がる彼女を呆然と見上げる。
「どうして泣いてるの?」
コルルに指摘され、一瞬誰の事を言っているのか分らなかった。だけど、頰に濡れた感覚があり、自分が泣いている事にようやく気がつく。久し振りに人前で泣いた事に動揺し、慌てて袖で拭った。
「何でもない! この鉄線には触れないで! 危険だから!」
「あ、そっか! アタシここに張られたワイヤーにかかっていた魔法に気がつかなかったんだね。やっぱりアタシ駄目駄目だぁ!」
マリ達を恨むでもなく、頭をかくコルルに胸が痛む。だからポロリと口から謝罪の言葉が出てしまった。
「ごめん……」
「え? 何か言った?」
「べ、別に……。それより何か用? 私達を探してここまで来たんでしょ?」
「あぁ! そうそう。明日の結婚式のお誘いだよ! 朝十時半に街の西側のケヤキの大木の下でやるから、マリとセバスちゃんも来てね!」
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「行きましょう。この世界の結婚式に興味がありますから」
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