米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

文字の大きさ
44 / 156
食材ゲット

食材ゲット③

しおりを挟む
「さて、土の神殿側はいつ頃出発の準備が整うのかな? こちらとしてはなるべく急いでほしいね」

 沈黙を破り、公爵が話を切り出す。彼は長椅子に脚を組んで座り、余裕ある態度だ。

「術者達には既に伝達してある。だが、近隣の村に行っている者達がいてな……。今いる者達だけなら今日の夜出発する事も出来るだろうが、今居ない者達の方が熟練しているし、現場慣れしている。だから出発は明日の朝だ」

「なるほどね。了解だよ。明日の朝から馬の足で二日か……。マリちゃん、僕達は先にキャンプカーで戻ろうか?」

 話を振られたマリは、先程思いついた案を提案する事にした。

「二日かからず連れて行けると思う」

「どうする気かな? あ、もしかしてキャンプカーに乗せる?」

「何人かはキャンプカーに乗せる事も出来ると思う。でも、全員だと鮨詰め状態になるから、馬車の客車? だけ使って、キャンプカーで牽引したいんだ」

「なるほど。いいかもしれない。曲がり角を曲がる時だけ気をつけたら、そこそこ安全に、かつ早くレアネーまで連れて行ける!」

「貴様ら……。危険な話を持ちかけようとしていないだろうな……?」

「そこまで危険じゃない! はず!」

 眉間に皺を寄せるエイブラッドに二人掛かりで説明する。
 そうこうしているうちに、執務室にはゾロゾロと術者達が集まり、簡単なミーティングを行う事になった。状況説明や、浄化の割り当て等を話し合っていると、結構時間がかかり、夕方になってしまっていた。

 昼過ぎに行った青空市で依頼したアボガドは意外と早く土の神殿まで届けられ、マリ達三人は、陽が沈む前に大量の食材と共にキャンプカーに引っ込んだ。



「結局出発は明日の朝になったね」

「仕方がないよ。彼等は普段通り仕事をしていたわけだから」

 今日入手した食材でマリが作った料理を三人で囲み、ノンビリと会話する。土の神殿で張り詰めていた神経が緩んでいるのが、態度にも現れ、各々少しテーブルマナーが崩れている。

「このクリーミーな料理、とても美味しいよ。もしかして昼のザリガニを使っている?」

「うん。試験体066が解体して持って来てくれたから、お試しで作ってみた」

 黄金色のキングクレイフィッシュの身は、トマトクリームパスタにした。その味はワタリガニに近いのだが、もっと濃い様にも思える。高級食材と言っていいレベルだ。

「今日持って来れたのは一部。……残り九割程は浄化し終わったら渡してくれるみたい。パスタ美味しかった……」

 彼の前にあるパスタの皿は既に空になっていて、昼に買ったパンをオリーブオイルに浸して口に運び、顔を顰めている。

「こっちのサラダも食べて。さっき貰ったアボガドで作ったんだよ。野菜も食べないと、身体が弱まるよ」

 少年の皿に、トングでワザと大盛りにサラダを持ってやる。アボガドとトマトをワサビドレッシングで和えているので、結構サッパリ食べられるはずだ。

「ピリピリしてて楽しい……」
 
「タレが初めての味わいだね。フレイティアフォレストバター大好きなんだけど、引き締める様な味付けが最高だ」

 少年は相変わらずズレた感想を言い、公爵は大絶賛だ。マリも一口食べて、頷く。

「うん! 味は想定通りアボガド! 良かった!」

 レアネーの住人に振る舞う料理に使う前に食べてみようと思ったのは、期待した味と異なる事を恐れたから。レアネーは今、危機的な状況下にあるけれど、やっぱりマリが作るベストな味を食べてほしい。ちょっとしたプライドだ。

「……キッチンスペースの方から、凄い蒸気が上がってる……」

 試験体066はボンヤリしたアメジストの瞳をキッチンの方へと向けていて、マリは慌てた。

「あ! トウモロコシ蒸してたんだった!」

 キッチンスペースへと足を運び、ミトンを手に嵌めて蒸し器の蓋を開けると、盛大に湯気が立ち昇る。
 篭った湯気のお陰で周囲に素朴な香りが漂い、顔が自然に綻んだ。

 トングでグラスジェムコーンを取り出してみると、蒸された事でさらに発色が良くなり、透明感が出ていて、一粒一粒がまるで宝石の様に輝く。

(相変わらず可愛い!)

 少しだけ見惚れてからテーブルの上に持っていくと、男二人も思わず、っといった感じに笑った。

「これ、さっき買ってもらったやつだ……。責任持って食べないと」

「これまた珍しい。フレイティアレインボーコーンだね。地元で殆ど消費されるから、レアネーにはなかなか流通しないんだよ」

 この世界の果物や野菜には、やたら長い名前がつくらしい。なかなかしっくりくる名前が付くものだ。だが、このトウモロコシ、見た目はいいものの、味は結構微妙なのだ。

(ガッカリするかもね!)

 マリは一人性質の悪い笑みを浮かべ、豪快にトウモロコシに齧り付く。そして「あれ?」と首を傾げる。

「美味しい……?」

「何で不思議そうなの? フレイティアレインボーコーンが不味いわけないじゃない」

 スィートコーン並みの糖度だろうか? 十分すぎる甘さだ。スッキリした後味もいい感じで、上品な味わいと言えるかもしれない。

「これは嬉しい誤算かも」

 白髪の少年も「美味しい」と呟きながら齧り続けている。買う気にさせてくれた彼にちょっとだけ感謝だ。





「グスン……グスン……まっず……」

 どこからともなく、女性の泣き声が聞こえる。キャンプカーの中に女は自分しかいなかったはずなのに、どういう事なのか?

 辺りを見回してみると、足元には深い緑色の苔、生い茂る草木は先程踏み入った森よりもだいぶ密度が濃い。
 夜だったはずなのに、何故かそこかしこに木洩れ陽が落ち、いざなうがごとく、先へ先へと揺れる。

(食器洗って、男達にシャワーの使い方教えて、アイツの服を洗濯して……十時にはベッドに入ったよね? って事はこれは夢!?)

 あり得ない状況にやや混乱する。夢にしてはやけに意識がはっきりしているのが不気味なのだが、突っ立っていてもしょうがない。

「めんどくさいな」

 たぶん、声の主に会う必要がある。マリはため息を一つつき、足を進めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

処理中です...