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新たな冒険
新たな冒険⑤
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マリは自分と、試験体066改めグレンのステータスを見比べ、状況を考察する。
グレンのスキルが一つ無くなったのは、おそらく“スキル喰い”という名のスキルによるとみて間違いないだろう。
数時間前、グレンの根源らしきモノに働きかけた時、一時的に身体が怠くなった。あれはこの世界の人々が良く陥る魔力不足の状態に似ている気がする。このスキルを発動するためには、大量の魔力を必要なのだ。
そして、マリのレベルが5上がったのは、他人のスキルを自分の経験値に変換してしまったからなのかもしれない。
マリは唸る。このスキルは他人から警戒されそうな性質だ。あんまり大っぴらにしない方が良さそうである。
(セバスちゃんは気付くだろうな。まぁ、その時に説明したらいいか)
グレンはレベルダウンしていないし、消したスキルは、普段の戦闘では使用しない物だ。実害は無いのだと、自分に言い聞かせる。
(そうだよ。私はアイツに死んでほしくないし……)
友人に普通の人生を歩ませてあげたいと思う。
ニューヨークに戻ったら、彼にとっての本当の試練が待ち構えるだろう。多少の支援をするつもりだし、悩みがあったら聞いてあげたい。今まで辛かった分だけ、楽しんでほしい。
マリの率直すぎる言葉を真っ直ぐ受け止めてくれる人は貴重という事情もあるし、ようやく出会った対等に関わり合える人を、つまらないスキル如きで失いたくない。
(それにしても、このスキルって、モンスターにも効くのかな? スキルを消して得られる経験値と、普通に倒して得られる経験値ではどっちが多いんだろ?)
自分の思考が、すっかりこの世界に染まってしまっている事に気がつき、呆れる。
早くニューヨークに戻った方がいいのかもしれない。
(王都に行って、アレックスと会って、勇者を選ばないといけないんだっけ? グレンとアレックスの二択か)
こちらの世界に来てから、セバスちゃんやレアネー市民の心配ばかりしていた。だから改めて自分のジョブに紐付けられた使命を思い出すと、気が滅入る。
(最初から勇者として創られたグレンは、普通の人生を歩みたいんだよね? アレックスはヒーローに憧れてる? 適当にアレックスを勇者に選んで、婚約解消して、元の世界に帰してもらったらいいのかな? っていうか、私たち帰れるよね? こわ……)
そろそろニューヨークに戻る事を考えたい。だけど、頭の中に一人の少女の姿がチラつき、迷いもある。
魔王の器にされたコルルだ。彼女とはほんの僅かな関わり合いしかない。しかもその間、彼女は魔人に洗脳されていた可能性が高くて、正気の彼女と交流したわけではない。
だけど、放っておいたままニューヨークに帰ったら、すごくモヤモヤしそうなのだ。
彼女の身体から魔王を追い出し、普通の生活に戻してあげられないのだろうか? “勇者”がどちらになるか分からないが、彼女を任せてしまう事に抵抗がある。
(私が出しゃばっても、何も出来ないと思うけど……)
憂鬱になってきて、ため息を一つ。
虚無感に勝てず、運転席で、丸くなっていると、キャンプカーのドアが開く音が聞こえた。
ようやくグレンと公爵が帰って来たようだ。
「ただいま~! 大漁だよ!」
「ただいま……、遅くなってごめん」
二人を出迎えに行くと、それぞれ溢れそうな程魚が入ったカゴを携えていた。魚の種類はイワシに似ている。新鮮なイワシの味を想像し、両手を握り合わせてしまいそうになるが、ぐっと抑える。
「お帰り~。朝食出来ているから早く食べよう」
「良い匂い……」
「パンケーキ焼いたんだ。グレンの名前の元となった人のお店の味に近付けてみたの。味わって食べてよね」
「へぇ、楽しみだな」
「あ、魚はカウンターに置いてくれる?」
グレンは嬉しそうに頷き、自分と公爵のカゴの二つを持って行った。
「この世界でもイワシが取れるんだね。っていうか、海まで行ったの?」
「そうそう。この林を抜けてすぐなんだ。マリちゃんの世界ではイワシって呼ばれてるんだね。こっちではプロメシスサーディンだよ」
「プロメシスって、今居るヴァルテーの隣の領地の名前なんだっけ?」
マリはカーナビで地図を見ていたので、一応周辺の領地の名前は把握している。
「よく把握してるね。感心感心。プロメシス伯領は、そう、隣なんだ。プロメシスには水の神殿があるんだけど、今水の力の氾濫が起こってて、海洋生物とかが他の地に逃げてるって噂があるんだよ」
「公爵はそれを確かめるために、釣りに行ったの?」
「それも目的の一つかな。土の神殿に現れた金ピカのアイツの事もあるし」
「あ~、あれ、プロメシスから来てくれたんだ……」
レアネー市民に大いに役立ってくれた、ザリガニは、この近くから土の神殿にやって来たらしい。自分が味わったモンスターを例に出されてしまっては、プロメシスという地に親近感を覚えずにいられない。
二人で会話しながらテーブルに行くと、セバスちゃんがフライパンを持っていた。
「パンケーキのタネが残ってましたから、一枚追加で焼きました。全員で熱々を四分の一づつ食べましょう」
「流石セバスちゃん! 気が利く!」
パンケーキが冷めてしまう事を残念に思っていたのだが、セバスちゃんが、気を遣ってくれたようだ。
グレンのスキルが一つ無くなったのは、おそらく“スキル喰い”という名のスキルによるとみて間違いないだろう。
数時間前、グレンの根源らしきモノに働きかけた時、一時的に身体が怠くなった。あれはこの世界の人々が良く陥る魔力不足の状態に似ている気がする。このスキルを発動するためには、大量の魔力を必要なのだ。
そして、マリのレベルが5上がったのは、他人のスキルを自分の経験値に変換してしまったからなのかもしれない。
マリは唸る。このスキルは他人から警戒されそうな性質だ。あんまり大っぴらにしない方が良さそうである。
(セバスちゃんは気付くだろうな。まぁ、その時に説明したらいいか)
グレンはレベルダウンしていないし、消したスキルは、普段の戦闘では使用しない物だ。実害は無いのだと、自分に言い聞かせる。
(そうだよ。私はアイツに死んでほしくないし……)
友人に普通の人生を歩ませてあげたいと思う。
ニューヨークに戻ったら、彼にとっての本当の試練が待ち構えるだろう。多少の支援をするつもりだし、悩みがあったら聞いてあげたい。今まで辛かった分だけ、楽しんでほしい。
マリの率直すぎる言葉を真っ直ぐ受け止めてくれる人は貴重という事情もあるし、ようやく出会った対等に関わり合える人を、つまらないスキル如きで失いたくない。
(それにしても、このスキルって、モンスターにも効くのかな? スキルを消して得られる経験値と、普通に倒して得られる経験値ではどっちが多いんだろ?)
自分の思考が、すっかりこの世界に染まってしまっている事に気がつき、呆れる。
早くニューヨークに戻った方がいいのかもしれない。
(王都に行って、アレックスと会って、勇者を選ばないといけないんだっけ? グレンとアレックスの二択か)
こちらの世界に来てから、セバスちゃんやレアネー市民の心配ばかりしていた。だから改めて自分のジョブに紐付けられた使命を思い出すと、気が滅入る。
(最初から勇者として創られたグレンは、普通の人生を歩みたいんだよね? アレックスはヒーローに憧れてる? 適当にアレックスを勇者に選んで、婚約解消して、元の世界に帰してもらったらいいのかな? っていうか、私たち帰れるよね? こわ……)
そろそろニューヨークに戻る事を考えたい。だけど、頭の中に一人の少女の姿がチラつき、迷いもある。
魔王の器にされたコルルだ。彼女とはほんの僅かな関わり合いしかない。しかもその間、彼女は魔人に洗脳されていた可能性が高くて、正気の彼女と交流したわけではない。
だけど、放っておいたままニューヨークに帰ったら、すごくモヤモヤしそうなのだ。
彼女の身体から魔王を追い出し、普通の生活に戻してあげられないのだろうか? “勇者”がどちらになるか分からないが、彼女を任せてしまう事に抵抗がある。
(私が出しゃばっても、何も出来ないと思うけど……)
憂鬱になってきて、ため息を一つ。
虚無感に勝てず、運転席で、丸くなっていると、キャンプカーのドアが開く音が聞こえた。
ようやくグレンと公爵が帰って来たようだ。
「ただいま~! 大漁だよ!」
「ただいま……、遅くなってごめん」
二人を出迎えに行くと、それぞれ溢れそうな程魚が入ったカゴを携えていた。魚の種類はイワシに似ている。新鮮なイワシの味を想像し、両手を握り合わせてしまいそうになるが、ぐっと抑える。
「お帰り~。朝食出来ているから早く食べよう」
「良い匂い……」
「パンケーキ焼いたんだ。グレンの名前の元となった人のお店の味に近付けてみたの。味わって食べてよね」
「へぇ、楽しみだな」
「あ、魚はカウンターに置いてくれる?」
グレンは嬉しそうに頷き、自分と公爵のカゴの二つを持って行った。
「この世界でもイワシが取れるんだね。っていうか、海まで行ったの?」
「そうそう。この林を抜けてすぐなんだ。マリちゃんの世界ではイワシって呼ばれてるんだね。こっちではプロメシスサーディンだよ」
「プロメシスって、今居るヴァルテーの隣の領地の名前なんだっけ?」
マリはカーナビで地図を見ていたので、一応周辺の領地の名前は把握している。
「よく把握してるね。感心感心。プロメシス伯領は、そう、隣なんだ。プロメシスには水の神殿があるんだけど、今水の力の氾濫が起こってて、海洋生物とかが他の地に逃げてるって噂があるんだよ」
「公爵はそれを確かめるために、釣りに行ったの?」
「それも目的の一つかな。土の神殿に現れた金ピカのアイツの事もあるし」
「あ~、あれ、プロメシスから来てくれたんだ……」
レアネー市民に大いに役立ってくれた、ザリガニは、この近くから土の神殿にやって来たらしい。自分が味わったモンスターを例に出されてしまっては、プロメシスという地に親近感を覚えずにいられない。
二人で会話しながらテーブルに行くと、セバスちゃんがフライパンを持っていた。
「パンケーキのタネが残ってましたから、一枚追加で焼きました。全員で熱々を四分の一づつ食べましょう」
「流石セバスちゃん! 気が利く!」
パンケーキが冷めてしまう事を残念に思っていたのだが、セバスちゃんが、気を遣ってくれたようだ。
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