米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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水の神殿で待ち受ける脅威

水の神殿で待ち受ける脅威①

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 王城での謁見が終わり、帰る事が許されたマリとグレンは、そのまま城下町を歩く。
 公爵とモイスは別件で国王と話があるからと城に残り、セバスちゃんは多額の報奨金をキャンプカーに運ぶ為、公爵家の使用人の馬車で、郊外へと向かった。

 人混みの中で、マリとグレンは注目を集める。
 マリは、持っているドレスの中で一番地味な、パステルピンクのシフォンドレスを着て行ったが、ミニスカートだったため、ご婦人方に目を剥かれるし、グレンは何着か服があるのだが、洗濯の関係で、ちょうど入院患者みたいな服の日だった。

 ため息をつきつつ、黒のライダースジャケットを羽織って、肩を隠す。

「……意外だった」

 後ろからポツリと投げかけられた言葉にマリは立ち止まり、振り返る。グレンはボンヤリしていたのか、そのまま歩き、マリにぶつかりそうになったが、接触寸前で飛び退いた。

「意外って、何が?」

「……てっきりアレックスさん? を選ぶのかと思ってたから。それと、セバスさんから二人は婚約関係って聞いてたのに、解消してしまうし」

「この世界に来たのは、アイツと婚約を解消するためだったしね。それに、勇者として適正があるかどうかは、婚約とは関係ないと思うけど!」

「それはそうかもしれないけど」

「アレックスを真の勇者として選んでほしかった?」

「いや……。嬉しかったんだ。マリさんが公平に見てくれようとしてるのが分かって……。それと、婚約解消したのも……よかったなって」

「何でアンタが私の婚約関連の話で喜ぶわけ? 変な奴」

 マリが顔をしかめて見せると、グレンは困った様に笑った。
 理解不能な男は気にしない事にし、前を向き、再び足を踏み出すと、何かを思いっきり膝蹴りしてしまう。

「うぐぅ!?」

 丸っこいものが路面に転がる。
 よく見ると、身長の低い人間だった。ムクリと起き上がったその姿は、ズングリとしていて、髪も顎髭もモジャモジャしている。おまけに顔がオッサンだ。

「痛てぇな、このアマ! 前見て歩け!」

「あー……、ごめんね」

「チッ! 今日の売れ行きが良くなかったら、慰謝料請求するからな!」

 悪態をつき、人混みに消えて行く後ろ姿をジロジロと観察する。

(耳が尖ってた……。ああいう人種もいるんだな)

「ドワーフ族の男だ」

 グレンがマリの隣に来て、馴染みの無い言葉を口にした。『ドワーフ』とは一体なんだろうか?

「彼らは、王都よりかなり東にある集落で、鉱山で採掘したり、金属を加工したりしながら生活している」

「前代の勇者が行ったから、知ってるの?」

「うん。剣を一振り打ってもらうために行ったみたいだ。ドワーフにしか出来ない特殊な加工技術があるみたいで……」

「凄い種族なんだ……」

 今の男は感情を露わに怒り狂っていたが、意外と有能おじさんなのかもしれない。

 二人並んで大通りを歩くと、あちらこちらにドワーフの姿を見つける。ぶつかった男もそうだが、大荷物を背負っている者が多い。商売目的で王都に来ているのかもしれない。
 大通りの中の一つの店に目が止まる。そこからドワーフ族の男が一人出てきたからという事もあるが、開いたドアから、大剣が幾つも飾られているのが見えたからだ。たぶんあの店は、武器を売っているのだろう。

「グレンって、水の剣ばっか使ってるけど、あれって魔法で出してるんだよね?」

「そう」

「金属で出来てる剣は要らない?」

「王都に出回ってる量産型の剣は、たぶんあまり性能が良くない。僕の水の剣よりも切れ味が悪いんじゃないかな。二十年前の記憶だから、状況が変わってる可能性もあるけど……」

「そうなんだ? 性能が優ってる剣ってある?」

 思い出すのは、コルルの姿をしいた魔王が持っていた剣だ。魔王がアシュヴィルスと呼んだあの剣は、グレンの胴を切り裂いた。あの戦闘を見ていて、水の剣が少し頼りなく思えてしまった。
 何か役立つ物を買ってあげたい。
 クラブ通いのオッサンが、女性に高額な物品を買い与える感覚かもしれない。

「オリハルコンという鉱物を使った剣はかなりの切れ味らしい。過去に聖剣と呼ばれていた代物も大抵はオリハルコンから作られている」

「へぇ! 水の神殿に行くまでの道中で手に入るなら、そのオリハルコンの剣を買っていこう!」

「手に入る場所は水の神殿と方向が逆。オリハルコンはドワーフ族にしか加工出来ない鉱石だから」

「あーそうなんだ……」

 水の神殿の状況を考えたら、準備が整い次第、王都から真っ直ぐ向かわなければならない。逆方向に行くなんて、もってのほかだ。
 ガッカリしていると、グレンに腕を掴まれる。

「ん?」

「ここ、公爵が紹介してくれた店……」

 一つ目の目的地である、美味しいレストランの前まで来ていたようだ。
 マリは剣の事はいったん忘れ、王都料理を堪能しようと考えを切り替えた。




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