米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

文字の大きさ
92 / 156
水の神殿の事情

水の神殿の事情①

しおりを挟む
 マリ達は塔から50m程離れた所にキャンプカーを停め、下車した。塔の入口付近に、物々しく武装した人々がいる。こちらを警戒しているのか、集まり、何やらかを話し合っている。

 直ぐにそちらに行かず、今来た一本道を振り返る。鯨はやっぱり追いかけて来ていない。

「ケートスが追いかけて来なくなったのは、マリお嬢様がオイルサーディンを投げたからというのは本当なんですか!?」

 マリがキャンプカーを降りる前にした話は、セバスちゃんには信じがたかったらしい。つぶらな目をパチパチさせている。

「だってオイルサーディンを投げたら、ケートスが止まったんだ」

「あの美味い食べ物にそれほどの殺傷力があるだなんて……! 今日から『白鯨殺しのマリ』と名乗るといいでしょう!!」

「嫌だよ。っていうか、死んではいないんじゃない? 死体になってたら、プカーって浮くでしょ?」

「神獣の死に方は分かりません……」

「まーね……」

 セバスちゃんと会話していると、塔の入口付近に居た者達が、鎧をガチャガチャ鳴らしながら駆け寄って来た。マリは似た鎧を、土の神殿で見ている。恐らく、今来た者達は神殿騎士なのだろう。
 その中から、育ちの良さそうな焦げ茶色の髪の男が進み出る。

「貴方達、白鯨に襲われていましたね!? 看板に注意書きがあったはずなのに、何故ここまで来たのです?」

「あー看板……」

 マリは、一本道に入る手前で目撃した、看板だったであろう物を思い出す。

「壊れていたけど」

「な!? 直ぐに見に行かなければ!! 誰か行ってください!」

 それに応え、神殿騎士の男女二人が、どこかに駆けて行く。焦げ茶色の髪の男は、眉を八の字にしたまま、マリ達に視線を戻す。

「貴女達は何用で水の神殿にいらしたので?」

 少し離れた所で沖の方を見ていた公爵が、近づいて来た。

「僕はフレイティアを治めるイリア・ダルザスだ。王家から、ケートス討伐の件で派遣されたんだけど、連絡をもらってないかい?」

「貴方はフレイティア公爵ですか!? 少しお待ちください! 今フレイティア公爵が仰った件の連絡を貰っている人はいますか?」

 神殿騎士が、同僚らに問いかける。しかし、誰も伝達を受けていないのか、揃って首を傾げている。

「連絡が上手く伝わってない……?」

「……のようですね」

 セバスちゃんと二人でコッソリ呆れていると、塔の方から若い女の声が聞こえてきた。

「マリ! フレイティア公爵! セバスさん!」

 金髪縦ロールを揺らし、女性が一人駆け寄ってくる。数日前に会った水の神殿の神官アリアだ。知人の顔を見て、マリはホッとした。

「アリア! 無事に水の神殿に帰って来れてたんだね。よかったよ!」

「ええ! まさか貴女達が来てくださるだなんて思ってもみなかったわ!」

 アリアは数日前に別れた時よりも顔色がずっと良い。そして、マリ達との再会を心から喜んでくれているみたいだ。

「アリア。プリマ・マテリア本部から、僕達が来ると連絡を貰ってない?」

「プリマ・マテリアから連絡は貰ってますわ。でもこちらにいらっしゃるのは、未来の最高神官様と勇者二人、Sランクの冒険者四名、そして王都の騎士達としか……」

 公爵の問いに答えながら、アリアの目が大きく見開かれていく。

「まさか、貴方達の中に勇者がいらっしゃるの!? もしかしてセバスさん!?」

「え、ええ!? 違います! 私は勇者っぽい見た目かもしれませんが、勘違い!」

 セバスちゃんは激しく首を振り、否定する。アゴの脂肪がブルンブルンするのは愛嬌だ。
 何故アリアがセバスちゃんが勇者だと思ったのかは、考えない事にし、グレンの背中を押す。

「勇者はグレンだよ」

「……まぁ、一応……」

「あら! そうなのね!」

 アリアは肩透かしを食らったかのような表情になったが、直ぐに感じ良く「大神官に会わせるわ」と、塔の中に案内してくれた。神殿騎士等はアリアに任せればいいと思ったらしく、散って行った。


 塔は外側がかなり神々しかったが、内部も負けていなかった。芸術的価値を感じさせるくらい作り込まれている。
 吹き抜けの空間に、大理石で出来た巨大な魚の石像が積み上げられていて、天井から流れ落ちる水がそれを伝い、この階の水路を潤す。
 水の流れる音や、高めの湿度のおかげで、ちょっとした癒しが感じられる。

 地下に空間が広がっていた土の神殿と違い、ここは上にも下にも、人が過ごすためのスペースが設けられていて、各階の床が互い違いに設置されている。

 人力エレベーターに乗り、上の階まで行く。連れて来られたのは、四阿(あずまや)の様に優美な柱で区切られた小部屋だった。

「今大神官を呼んで来ますわね」

 アリアはマリ達を残し、再び人力エレベーターで上に昇って行った。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

処理中です...