米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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夕空の下で食べるスパイスカレー

夕空の下で食べるスパイスカレー⑤

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 午後4時頃。水の神殿の騎士達に緊張が走る。
 昼過ぎに取り逃がした神獣、ケートスが再び神殿付近に現れたからだ。危害は加えていない。だた、飛び道具や魔法を使い、嫌がらせを行ったため、報復される可能性は充分にある。
 神殿内に居る術師や神官に報告しに走る者達、外に残り、武器を構える者達。
 考える事は皆同じ。今度こそは終わりかもしれない……、と。

 白く、神々しい生き物はユックリと岸辺に近付く。
 騎士達は、神獣を刺激しないよう、無詠唱で障壁を張り、来るであろう攻撃に備える。

 ケートスはパカリと、その大きな口を開けた。騎士達が初めてみる挙動だ。
 何が来る? 衝撃波か? それとも……。

 一同、固唾を飲んで見守る中、神獣の口から飛び出て来たのは、衝撃波などではなかった。見慣れない服装の、太った男__つまり人間が出てきたのだ。

「痛た……、痛いな……。もっと安全に出て来たいものだ」

 しかも喋り、動く。
 この男は、神官や神殿騎士達と共に聖域に向かったはずだ。戻りがあまりに遅いため、ちょうど捜索部隊を派遣すべきかと話し合っていたのだ。それが、何故、先程消えたケートスの口の中から現れたのか?
 神獣が吐き出したのは、そのデブだけではなかった。次々に人間を出し続ける。1、2、3……全部で9人!
 聖域に行った全員が、地面に転がり、うめき声を上げている。

 慈悲の心がある騎士は彼等に駆け寄って、気を遣う。
 その者が聞き出した内容を要約すると、どうやら聖域で危険な目にあい、この神獣に命を救われたらしい。

__なんだ、神獣は我等の味方だったのか……。

 騎士達は神獣に対しての考えを改めざるを得なかった。

 しかし、これだけで終わらなかった。更なる衝撃が水の神殿を襲ったのだ。

 人間を吐き出し終わったケートスが口を閉じると、今度は背中がパカリと開いた。どういう身体の構造をしているというのか……。

 開いた巨大鯨の背中から、この世の者とも思えぬほど美しい人物が現れた。
 薄群青色の長い髪を緩くまとめ、大事な所が見えてしまいそうなくらい、しどけない服装だ。
 鯨の背中だった何かは、その巨体と水の神殿の敷地を繋ぎ、麗しき者はシャナリ、シャナリとそこを渡る。

「ご覧になって! あの方! もしや!?!?」

「「「キャァァアアアアアアア!!!! 素敵ぃぃぃいいいいい!!!」」」

 神殿騎士達は、突如として上から聞こえて来た叫び声に、「何事か」と騒めく。見上げると、神殿の屋上に神官達が集まっていた。
 叫び声__否、黄色い声を上げているのは神官達なのか? 彼女達は普段禁欲的かつ清楚。清らかな乙女(とかつて乙女だった者)に道ならぬ想いを抱く騎士もいるのだ。だというのに……。

 その乙女達(とかつてそうだった者達)の中で、最もイカれた奇声を発しているのは、嘆かわしい事に、この神殿の大神官様だった。

「ネプトゥーヌス様!! あぁ! お会いしとうございました! このイドラ、貴方様の帰りを日夜待ち焦がれ……、ウンヌンカンヌン」

 神殿の屋上から飛び降りようとする大神官は、周囲の神官達に止められ__いや、ラリアットを食らわされ、姿を消した。
 男神を巡る争いの火蓋がきって落とされた。そこに清らかさなど、微塵もない!!!

 若い騎士は、カオスな光景を見守りつつ、同僚に話しかける。

「なぁ、相棒。俺は今日の事を生涯忘れえないだろう……」

「あぁ、私もさ。仲間が神獣のゲロになり、その神獣は実は神の乗り物だった」

「そして神官達は、神のファンにすぎなかった……だろ?」

「これが本当の神の試練……か」

 この日の出来事を、後世に語り継ぐべきか、揉み消すか。
 騎士達の考えは、信仰心の強弱で二分されたのだった。



 マリは水の神殿の敷地で、ケートスに吐き出された後、グレンを連れてキャンプカーに戻った。

 水の神は神官達に大人気らしく、あっという間に取り込まれてしまった。そして何故か神官達の殴り合いが始まった。清らかな神官服姿の女達の壮絶なバトルは、見ていて楽しかったが、神に夕飯を用意するように命じられているので、ノンビリとしていられなかった。
 他の命令を受けたのなら、ムッとしたかもしれないが、求められているのは料理。悪い気はしない。
 絶対に「美味い」と言わせてやりたい。

 サッとシャワーを浴び、着替えをしてからキッチンスペースに入った。

 作ろうとしているのはスパイスカレー!
 大きめのフライパンでクミンシードやカルダモン、八角等をサラダ油でジュワジュワと炒める。
 王都で大量のホールスパイスが手に入ったので、近々カレーを作ろうと考えていた。神に出すのはどうかと迷いはしたが、彼はオイルサーディンを食べれるくらいだから、カレーも問題ないだろうと決めつけてしまった。

「凄く良い香りがする……」

 グレンが首にタオルを掛けて、キッチンスペースに現れる。マリの次にシャワーを使っていたのだ。
 髪が濡れたままで風邪をひいてしまいそうに見える。

「水の神の為にカレーを作るよ!」

「カレー?」

「うん。食べた事無い?」

「どういうモノかは分かるんだけど、味わった事は無いな」

「そーなんだ! 大目に作るから私達が食べる分もあるよ。作るの手伝って!」

「うん。勿論」

「……と、その前に、ドライヤーで髪を乾かしてよね」

「ぷ……。ちょっと待ってて」

 グレンは、嬉しそうに返事をし、一度キッチンスペースを出て行った。
 



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