米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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化け物に食わせるB級グルメ

化物に食わせるB級グルメ④

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 空が白み始めてきた頃、水の神殿地下に集まったのは、本日作戦に参加する面々。
 聖域を占拠するリザードマン達を追い払う為に、15分前に神殿騎士達が出発していて、そろそろマリ達が出発する頃合いだ。

 先導するのはケートス。中には水の神が乗っている。
 その後に、グレンとアリア、モイスそして神殿騎士4名を乗せた舟が続き、マリ達が乗る舟も動き出す。
 マリが乗る舟の構成員はセバスちゃん、公爵、神殿騎士六人のメンバーから成り、グリューワインを入れた中型の舟を牽引している。ワインの舟の方は、その重みで沈みかねないので、公爵が魔法で浮力を付してくれているのだが、それでもオールを漕ぐ騎士達は結構きつそうだ。

「先遣隊はうまいことリザードマン連中を追い払ってくれましたかね?」

 マリの隣に座るセバスちゃんは、さっきから聖域の様子を気にしている。一昨日酷い目に遭わされたので、不安なのだろう。

「さっきモイスさんが千里眼スキルで見てくれた感じだと、昨日より数が減ってるみたいだし、騎士達の危険は少ないかも」

「モイスは舟に乗った今も、聖域を見続けているはずだよ。先遣隊が失敗したら必ず引き返すだろうから、前の舟の動きをよく見ていよう」

 マリと公爵は二人がかりでセバスちゃんを宥める。セバスちゃんは納得した風の返事をしつつも、まだ落ち着かないようで、首に下げた双眼鏡で前方を観察しだした。

「潮の流れは、一昨日みたいにおかしくない気がします。水の神が何かしてくれているのかもしれません」

 同乗する騎士のうちの一人が、マリに話しかけてきた。彼は一昨日の聖域行きに付き合ってくれただけでなく、昨日のカレーマン作りも手伝ってくれた。下っ端だから、雑用気味の事をさせられているのかもしれないが、一緒に過ごしている時間が長いから、親しみを感じる。

「大渦の方も水の神様が何とかしてくれるみたいだね。一昨日よりは危なくないんじゃないかな」

「えぇ。何とか作戦を成功させましょう」

「おう!」

 今のところ平穏な滑り出しだが、ここは海の上、いつ何が起こるか分からない。ピリピリとした緊張感が舟の中を包んだ。



 グレンが乗る舟の動きがおかしくなったのは、聖域の小島が肉眼で見える距離まで来てからだった。
 僅かに横に流される感覚がある。

(一昨日と同じ現象……)

 前方を泳ぐケートスが海中に潜る。異変が起きている潮の動きを止めるため、何かするつもりなのだろう。
 しかし、突如として神獣が消え失せたので、舟の中は少々騒がしくなる。

「水の神様のお姿が……!」

「ここは止まるべきか??」

 混乱する神殿騎士達だったが、舟が明らかに異常な動きを始めたため、だんだんとその声は静まりゆく。
 横向きに流され、急停止し、また流される……。自然とは違う、何らかの力がこの舟にかかっている。

「……モイスさん。小島のリザードマンはどうなってる?」

 前方に座るモイスに声をかけると、振り返りもせずに、返事が返される。

「2分程前に先遣隊の舟を追って行きよったわ。聖域はもぬけの空」

 カリュブディスと対面する準備は整ったようだ。後は出来るだけ速やかに作戦を実行するのみ。

「島に向かってもらえるかな? 50m程の距離で僕は海に潜る」

 モイスの隣に居るアリアにそう告げると、彼女は力強く頷いた。

「分かったわ。直進してちょうだい!! 作戦通りに行動するわよ!」

「「「了解です!!」」」

 彼女は舟に推進力を向上させる魔法を使い、グンとスピードが増す。
 急接近する島。モイスの言う通り、リザードマン達の姿は見えない。
 視線を前方から、海中へと移す。

 透明度の高い海水の中で、黒く、巨大な生物が舟の下を素早く移動した。

(居る……)

 それは二度、三度と舟の下を行き来する。こちらをターゲットにしているのは明らか。水の神が海の動きをコントロールしているようだが、カリュブディスが何時こちらに襲いかかるか、予測不明だ。

 身体ごと後ろを振り返る。マリ達が乗っている舟はかなり後方。
 カリュブディスが向こうに興味を持つ前に、グレンは充分な敵視を稼ぐ必要がある。

(島までは……70m程かな。この辺でいいか)

「行くよ」

 グレンは、アリア達に声をかけてから、身体一つで海の中に飛び込む。全身が濡れる不快感と、肌を突き刺す様な冷たさに顔を顰める。ニューヨークでの特殊訓練を思い出させて気分が悪いが、我慢するしかない。

 海底付近を移動する巨大な生き物が、グレンに気付き、近寄ってくる。

(ブライニクル!)

 超低温の海水を真下に落とす。カリュブディスへの挑発だ。
 海水をジワジワと凍らす。その冷たさに、化物は確実にグレンを排除しようと決めただろう。
 巨大な頭部がユックリと上を向き、口がパカリと開かれる。そこから溢れ出すのは一昨日も見た青白い光。

 爆発を起こしそうな程の大きさまで膨らんだのを見て、グレンは下方にシールドを張る。

__ゴォォォ!!!

 凄まじい衝撃派がシールドに当たり、グレンの身体は海面へと押し上げられた。
 ザザンッ! と海上に吹き上げれる。そのままでいたら二発目の餌食になるだけ。
 身体を捻り、横向きに飛ぶ。立ち上がる大量の海水を魔法で瞬時に冷却させ、氷の柱にした後、落下しながら水の剣をそこに突き刺す。剣まで凍らせ、身体の落下を強引に止めた。
 柄を両手で握りながら海面を見ていると、カリュブディスの頭部が現れた。
 数多のトゲを生やし、黒い鱗に覆われたその姿は、蛇__いや、東洋の龍に近い。
 発達したエラが、まるで蝙蝠の様にはばたく。

 グレンはその頭に、迷う事なく飛び降りた。


 
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