米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

文字の大きさ
130 / 156
火の神殿へ

火の神殿へ②

しおりを挟む
 夕食後、各々就寝の準備をしている時に異変は起きた。
 何故かキャンプカーが斜めに傾いている感じなのだ。しかもその傾斜はきつめになったり、緩くなったり、ゆっくりと変化する。
 ソファに座って寛いでいた公爵も違和感に気付いたようで、立ち上がり、首を傾げている。

「あれ? 何かおかしいね」

「そうなんだよね。車体が変な動きしてる」

「キャンプカーは平坦な場所に停めたはずなのにな」

 窓を開けて外を見てみるが、地面は何もおかしくないようだ。

「マリお嬢様、タイヤがパンクしているかもしれないので、外に出て見て来ます」

「え、これパンクなの?」

 セバスちゃんは縞柄の寝間着姿で外に出て行く。そのプクプクした背中を見ながら、マリはそれはないだろうと、首を傾げる。
 この世界は当然ながら自動車用に道が舗装されているわけではない。今まで走って来た道の中には、タイヤに悪そうな地形が幾らでもあったのに、タイヤも車体もダメージを食らう事はなかった。それどころか、ガソリンのメーターもビクともしないし、走行中の揺れもほとんどなくて、日本車も真っ青な性能なのだ。
 それはすべてマリのスキル『キャンプカーマスター』の影響によるもののようなので、今の状況もパンクが原因ではない様に思われる。

「セバス君だけだと、モンスターが現れた時に危険だから僕も見に行こう」

 窓の外の様子を見ていた公爵は、セバスちゃんの事が心配になったのか、彼の後を追った。マリも気になるので、付いて行く。
 何故かグレンも窓から下りて来て、結局4人でキャンプカーの周囲を見て回った。

「パンクではなさそうですね」

「あそこを見て。地面の一部が盛り上がっているよ。ここに停まっている間に地形が変わってしまったのかな?」

 セバスちゃんと公爵が言う様に、キャンプカーの下の地面が部分的に盛り上がっていた。
 しゃがみ込んで、そこを見てみると、その部分はさらに上昇した。

「むむ……」

 地面が隆起する現象があるのを知っているが、こんな局所的に、しかも短時間で見てわかる程に変化するなんて普通じゃない。何が起こっているかは不明だが、取りあえずここを離れるべきだろう。

「キャンプカーをバックさせて、ここから動かしてみよう」

「……マリさん、ちょっと待って。これ、もしかしたらモンスターかもしれない」

 キャンプカーに戻りかけたマリに待ったをかけたのはグレンだった。

「え!? モンスター!?」

「うん。岩の姿をした奴がいるんだ。ボールダーというんだけど……」

「あぁ、確かにボールダーはこの付近を生息地にしていたかもしれない。マリちゃんとセバス君、ちょっとキャンプカーから離れてくれるかな。僕とグレン君で処理しよう」

「分かった。二人ともよろしく!」

 マリ達が遠ざかると、公爵は手に持つ杖で凸部分をつつき始めた。
 すると……。

 キャンプカーの周囲がボコボコと波打ち始める。
 異様すぎる光景だ。

 地面から飛び出して来たのは、沢山の丸っこい岩。普通の岩と違い、人間の顔の様な造作で、目や口とおぼしき部分を開閉している様子があまりにシュール。
 動きは鈍そうだが、防御力が高いようで、激しい攻撃を受けても直ぐに壊れない。

「くぅ……。銃火器を持ってキャンプカーを出るべきでした」

「しょうがないよ。流石にキャンプカーの下にモンスターが潜んでいるなんて想像出来ないし」

 加勢出来ないもどかしさはあるが、ここは仕方がない。

 それにしても、グレン達は随分慎重にボールダーを相手どっている様に見える。一個一個確実に壊していくという動きをしているのだ。何か気を付けなければならない事でもあるのだろうか?
 マリの疑問は直ぐに解けた。

 公爵の攻撃を受けていたボールダーが一瞬のうちに真っ赤に染まり、爆発した。
 しかも一個だけで終わらず、周囲に転がるボールダーに飛び火し、爆発が伝染していく。

「うわ!? グレン! 公爵!」

 二人の状況を心配し、マリはもうもうと煙が立ち込める中に飛び込もうとしたが、セバスちゃんに腕を掴まれ、止められる。

「危険すぎます。まだボールダーとやらが残ってるかもしれませんよ!」

「でも……」

「大丈夫。生きてるよ」

 マリの心配を他所に、グレンと公爵は咳き込みながら煙の中から出て来てくれた。
 見たところどこも怪我をしていないようなので、マリは胸を撫でおろす。

「あー良かった」

「……数日前から風の魔法が使えなくて、煙を払えない」

 風の神の事はマリから他の三人に伝えているので、たぶんグレンの発言は、それを前提にしているのだろう。
 自然界の風も吹かないため、煙は暫くこのままだ。

「ボールダーの欠片って、火薬としての需要が結構あるから、拾っていったら結構な額で売れるよ」

「そうなんだ。じゃぁ、拾っておこうか」

 公爵が言うくらいだから、かなりいい値段で売れるのかもしれない。金の用途は幾らでもあるし、そのうちの一つは自分達で稼いだ金の方がいいのは明白なので、稼げる時に稼いでおきたい。


 暫くすると、煙が薄くなり、キャンプカーの無事が確認出来た。
 車体の下のボールダーも爆発したのか、綺麗に無くなっていたし、キャンプカー自体も走行出来たので、もう何の問題もない。

 ニューヨークから食料を持って来る時に使用した段ボール箱を運び出し、四人がかりでボールダーの欠片を拾い集める。全部で10箱分になったので、結構場所をとってしまった。
 まぁ、早めに売り払ったらいいだけだ。

 その後の道中も厄介なモンスターにちょいちょい絡まれ、旅程は予定通りとはいかなかった。
 火の神殿付近まで辿り着いたのは、結局王都を出発してから二日後の午後。
 事前にモイスに予定を入れていたわけだが、大丈夫だろうか?

 青空を貫く様にそびえる火の神殿の尖塔を眺めながら、マリは固まった筋肉をストレッチで伸ばす。
 隣で、マリの真似をして体を動かしていた公爵は、楽しそうに道の向こうに視線を向けている。

「さ~て、モイスは僕達に気付いてくれているかな?」

 公爵の心配は杞憂だったようで、道の向こうから赤毛の男性が乗る馬がこちらに向かって走って来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...