75 / 87
腹を裂いて無理やり赤子を引き釣り出したい
しおりを挟む
あたしはもうなにも考えるのも感じるのも嫌なので、そのままベッドに潜りこみ無理やり眠った。
目が覚めた。あまりの痛さに。下腹部が尋常じゃない程痛い。お母さんを呼ぼうと思ったけど声が出ない。取りあえずベッドから出てリビングまで辿り着きたいのだが、そもそも起き上がることが出来ない。
死ぬんだ。そう一瞬で判断した。是が非でもふうわだけは産みたい。そう思ってあたしは僅かばかりに残された力を振り絞ってベッドから出ようとした。まずはなにがなんでもあたしの異常事態をお母さんに伝えなければ。とりあえず足をベッドから出したいのだが、蹲った姿勢でいないとお腹の痛みがおさまらない。体をくの字に曲げたまま腰を動かしてなんとか足を、体をベッドの外まで押し出した。そうだ。これだけお腹が痛いとなればふうわになにかが起きているのかもしれない。少しずつ体を動かしながら神様にふうわの無事を祈った。最近のあたしは神頼みばかりだが、この願いだけはなにがなんでも叶えて頂きたい。
足をなんとか床に着け、続けて膝をつくことが出来た。痛みを抱え込み膝を引きずりながら部屋を出て、手すりに掴まりながらどうにかリビングまで辿り着いた。こんな姿勢はおなかの中のふうわに優しいはずがないのに。一体あたしの命はあと何時間もつのだろう。不幸中の幸い、リビングに入ってすぐに母に発見してもらえた。いつものおっとりとしたお母さんからは想像も出来ないくらい迅速にあたしをおぶって車の助手席に乗せて病院へ車を走らせてくれた。その間、あたしはお母さんと言葉を交わしたかどうかさえ覚えていない。
気が付いたときにはあたしは病院のベッドの上にいた。今日二度目のエコー検査だ。そして触診。誠に不思議な事にその頃にはあたしの下腹部の痛みは殆ど無くなっていた。先生曰く、もういつ出産になるか分からない、先程あたしを襲った激痛もおそらく子供がお腹から出る準備をしているからこそ引き起こされたのではないかということだ。なんだ陣痛というやつか、と思いながらも心のどこかで、あの異常な痛みはそれだけが原因なのではないのかもしれないという不安に覆われた。不安というものはとても不思議なもので一度現れると中々その姿をかき消すことはできない。理屈で消せるものではないのだ。不安から解き放たれるには、自然とそれが消え去るのを待ち続けるという方法しかあたしは知らなかった。
その後二時間程病院で待機したが再びおなかの痛みがやってくることは無かった。母に尋ねたら陣痛とはどうやらそういうものらしい。嫌だな。ふうわが生まれるまで何度もこんな目にあうのかしら。
可能であれば今すぐ陣痛がきて産んでしまいたい。むしろ、陣痛などこなくてもこのお腹を捌いてふうわを取り出したい。まあ、子供を産むのは自然な形が良いのだろうからそんなことは許されないとは分かっちゃいるけど。
結局その日は一旦家に帰ることになった。そして、帰宅してからも再び陣痛がくることも無かった。いよいよ明日は先生に告げられている出産予定日だ。なんとか今日は生きながらえた。どうか明日も無事に生きられますように。そしてなるべく早くふうわを産むことが出来ますように。
目が覚めた。あまりの痛さに。下腹部が尋常じゃない程痛い。お母さんを呼ぼうと思ったけど声が出ない。取りあえずベッドから出てリビングまで辿り着きたいのだが、そもそも起き上がることが出来ない。
死ぬんだ。そう一瞬で判断した。是が非でもふうわだけは産みたい。そう思ってあたしは僅かばかりに残された力を振り絞ってベッドから出ようとした。まずはなにがなんでもあたしの異常事態をお母さんに伝えなければ。とりあえず足をベッドから出したいのだが、蹲った姿勢でいないとお腹の痛みがおさまらない。体をくの字に曲げたまま腰を動かしてなんとか足を、体をベッドの外まで押し出した。そうだ。これだけお腹が痛いとなればふうわになにかが起きているのかもしれない。少しずつ体を動かしながら神様にふうわの無事を祈った。最近のあたしは神頼みばかりだが、この願いだけはなにがなんでも叶えて頂きたい。
足をなんとか床に着け、続けて膝をつくことが出来た。痛みを抱え込み膝を引きずりながら部屋を出て、手すりに掴まりながらどうにかリビングまで辿り着いた。こんな姿勢はおなかの中のふうわに優しいはずがないのに。一体あたしの命はあと何時間もつのだろう。不幸中の幸い、リビングに入ってすぐに母に発見してもらえた。いつものおっとりとしたお母さんからは想像も出来ないくらい迅速にあたしをおぶって車の助手席に乗せて病院へ車を走らせてくれた。その間、あたしはお母さんと言葉を交わしたかどうかさえ覚えていない。
気が付いたときにはあたしは病院のベッドの上にいた。今日二度目のエコー検査だ。そして触診。誠に不思議な事にその頃にはあたしの下腹部の痛みは殆ど無くなっていた。先生曰く、もういつ出産になるか分からない、先程あたしを襲った激痛もおそらく子供がお腹から出る準備をしているからこそ引き起こされたのではないかということだ。なんだ陣痛というやつか、と思いながらも心のどこかで、あの異常な痛みはそれだけが原因なのではないのかもしれないという不安に覆われた。不安というものはとても不思議なもので一度現れると中々その姿をかき消すことはできない。理屈で消せるものではないのだ。不安から解き放たれるには、自然とそれが消え去るのを待ち続けるという方法しかあたしは知らなかった。
その後二時間程病院で待機したが再びおなかの痛みがやってくることは無かった。母に尋ねたら陣痛とはどうやらそういうものらしい。嫌だな。ふうわが生まれるまで何度もこんな目にあうのかしら。
可能であれば今すぐ陣痛がきて産んでしまいたい。むしろ、陣痛などこなくてもこのお腹を捌いてふうわを取り出したい。まあ、子供を産むのは自然な形が良いのだろうからそんなことは許されないとは分かっちゃいるけど。
結局その日は一旦家に帰ることになった。そして、帰宅してからも再び陣痛がくることも無かった。いよいよ明日は先生に告げられている出産予定日だ。なんとか今日は生きながらえた。どうか明日も無事に生きられますように。そしてなるべく早くふうわを産むことが出来ますように。
1
あなたにおすすめの小説
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
窓のない部屋の、陽だまりみたいな君
MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。
そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。
そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。
完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。
「五分だけ、ここにいさせてくれないか」
一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。
次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。
住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
お城のお針子~キラふわな仕事だと思ってたのになんか違った!~
おきょう
恋愛
突然の婚約破棄をされてから一年半。元婚約者はもう結婚し、子供まで出来たというのに、エリーはまだ立ち直れずにモヤモヤとした日々を過ごしていた。
そんなエリーの元に降ってきたのは、城からの針子としての就職案内。この鬱々とした毎日から離れられるならと行くことに決めたが、待っていたのは兵が破いた訓練着の修繕の仕事だった。
「可愛いドレスが作りたかったのに!」とがっかりしつつ、エリーは汗臭く泥臭い訓練着を一心不乱に縫いまくる。
いつかキラキラふわふわなドレスを作れることを夢見つつ。
※他サイトに掲載していたものの改稿版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる