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さん
しおりを挟む「ルミナス様、どうかなさったのですか?」
私が一向に扉の前から動かないのを見かねて執事が声を掛けた。
「ねえ、アラン。エドワード様が怯えているの。どうしたらそれを拭えるかしら?」
「抜粋しすぎて分かりかねますが、ひとまずお直しをしながらでもよろしいのでは」
私は彼の言葉にそうねと言いつつ、扉を見つめる。
結局、さあ、行きますよというアランの言葉に後ろ髪を引かれる思いでその場を去った。
ーーどうか、どうかエドワード様が心配するような事は起こりませんように。
そう強く願いながら。
「はあ、一国の王子でもそんな心配するんですねぇ」
「アラン、口調が戻ってるわ。ちゃんとしなさい。」
「すいませんでしたぁ、ルミナス様しかいないから、つい口が滑りましたー」
少しおちょくったような言い方は、もはや聞き慣れてはいるものの腹が立つものは腹が立つ。私はバシッと彼を軽く叩いた。
「はいはいはい、それで?エドワード殿下がどうされたので?」
「聞く気はある?」
「2割くらいなら。」
相変わらずの軽口に、イラッとくるが彼との付き合いは長いので私は流すことにした。
「私と婚約破棄したいんですって」
私が意を決してそういうと、アランは目を見開き固まった。
そうね、流石のアランも婚約破棄だなんて聞いたら驚くものね。幼少期から私がエドワード様を慕っていたこと知っているもの。
そう私が少しアランを見直した時、アランは私の予想通り肩を震わせ始めた。
ああ、アラン。私のために泣かなくてもいいのよ。
「アラン、私の為にーーー」
「ぶわっはっはっはっはっはー!!!!」
ん?
「アラン?」
「け、傑作です!お嬢様!婚約破棄ですか?こんにゃくじゃなく?婚約破棄?あっはっはー!!!」
肩を震わせながら盛大に笑うアラン。
そして、拳を震わせている私。
侯爵令嬢たるもの、このような事で使用人を殴ってはいけないわ。
そう例え、100%相手が悪かったとしてもよ。
私は沸き起こる怒りを抑え込み、彼が笑いおさまるのを待った。
「ふぅ、いやぁ、申し訳ありませんお嬢様。
もしや、私はクビですか?」
「そうね、貴方が優秀な執事でなければ即刻暇を出したところよ。」
そう笑いながら言えば、彼は口元をひくつかせもう一度申し訳ありませんと謝罪した。
私はその謝罪に対し許しますと言ってから、敢えて、そう敢えて、なぜ笑ったのかを問うた。
「いや、言えませんって。言ったら今度こそ暇行きですもん。」
「いいから言いなさい!」
「ええ、じゃあ怒らないと誓いますか?」
「ええ、精霊に誓うわ。」
私がそう言えば、彼も納得しそして重たい口を開いた。
「いやぁ、そのお嬢様って割と世間や殿下の前では、お淑やかな感じですけど、家では全然お淑やかじゃないから、殿下にそれがバレたのかなぁって。割と使用人一同いつか婚約破棄される日が来るのではと噂してました!」
もはや最後の方は生き生きと喋っていたアランに、約束破って一発入れ込もうかと考えたがその前に扉をノックする音がした。
私が慌てて返事をすれば、「ルミナス、準備はできたかい?」とエドワード様のお声が。
その声を聞いてアランもスッと姿勢を整える。流石はアヴェーヌ家の執事。しっかりとしている。
私も彼の前に立ちながら、精霊を呼び出す。「お待たせして申し訳ありません。」と言いながらアランが開けてくれた扉の向こうにいたエドワード様に話しかける。
エドワード様はふわりと微笑み、「とても綺麗だ」と言った。
その瞬間頬に熱が集中するのを感じた。
あ、暑い。真夏ではないというのに、体がすごく熱い。
恐らく羞恥で赤くなっているだろう顔を見て、エドワード様は更に笑った。
「さあ、行こう。君の晴れ舞台だ。」
そう言って手を引いてくれたエドワード様は、本当に絵本から出てきた王子様のようで、私はこの時の感動とトキメキは一生忘れないと思った。
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