聖女に異世界へ飛ばされた 【完結】

もち米

文字の大きさ
6 / 61
1

ろく

しおりを挟む





「なんて事なの?ここは?どこ?」


私は目の前にいる動物を見ながら呟く。
先程まで私はホールにいたはず。

夢のはずがない。
だって、私の服を見れば分かるーーー煌びやかなドレスだもの。


お父様にいただいたドレスにアクセサリー。
そして、エドワード様から幼少期にいただいたペンダント。

私は、一体聖女マリアに何をされたの?


膨大な魔力をこの体が受けたのは感じた。


「どうしましょう…この服だと動きづらいし…ああ、こういう時アランがいてくれたら。」


「お呼びですか?お嬢様」


「アランがいてくれたら服とか出してもらえたのに。残念だわ、本当に。」


「洋服ですか?それでは乗馬する時の騎士の服でいいですかね?」


……私はとりあえずゆっくり振り返る。

すると、そこには「はい、ありましたよ~ルミナスお嬢様~」と言って私に動きやすい服装を渡してきた。

おかしいわ。私だけだと思っていたのに。


「…ねえ、しれっといるけれど何故お前がいるの?」

「あれ?気付いてなかったんですか?てっきり気付いてるものだと。」

アランはなんて事もなくそう言い、顎に手を当てそうですねぇと言い事の経緯を話し始めた。





まず、聖女マリアは膨大な魔力を使い私を異界へと追放した。

エドワード様と精霊が助けようとしたが間に合わず、たまたま近くに控えていたアランが駆け寄り私の腕を掴んだ瞬間一緒に飛ばされた。


という事らしい。


「なるほど、じゃあアランは巻き込まれたのね。」


「そういうことになりますね。
  ーーーまあ、都合いいですけど。」


「異界だなんて困ったわ…ん?アラン何か言った?」


「いいえ、なにも。お嬢様着替えまだです?手伝いましょうか?」


「いらないです!!!もう終わるから待ってて!!!!ハウスよ!アラン!」


私は茂みで必死に着替えながらアランそう声を掛ける。
困った執事だ。確かにいつもは侍女が手伝ってくれるが、一人で着替えられないというわけではない。

私はようやく着終わり、ドレスとアクセサリーをアランに渡す。

アランはそれを空間魔法を使い、ポイッと収納した。




「まあ、一人より2人の方がいいでしょう。まずはこの世界のことを知る必要があります。」

そう真剣な表情でいうアラン。
そうね、聖女マリアが恨み込めて送った世界だもの。もしかしたら、魔物がたくさんいたり、変な魔法を使う集団いたりするかもしれない。

油断は出来ない。かと言ってじっとしていられない。

「そこでまずは、」

「ま、まずは?」

「あそこにある家にいる人にいろいろ聞きましょう~」

急にコロっと表情変えたアランに、私は肩の力が抜けた。アランはそんな私を見てバカにしたように笑った。


「アッハッハー!まさか何も考えなしに草原を駆け抜けるなんてことしませんよぉ~!まずは知ることが先ですし、え、まさか…お嬢様はこの草原を駆け抜けるおつもりで…?」


「そんなわけないでしょ!いいから行きますよ!!」


いや、その通りです。なんて言えない私はとりあえず顔を下に向けアランの背中をぐいぐいと押した。

本当に人をからかうのが相変わらず好きな執事だ。


しかし、同時に私は安心もした。
知らない世界でただ1人生きていくのは無理だ。私は耐えられず、または何も出来ず野垂れ死んでいただろう。


まあ、贅沢を言えばエドワード様か精霊だったらとは思うけど。


「あ、そうだ。この世界での呼び方どうしましょうか?」

「え?ルミナスではダメなの?」

「はあ、やれやれ、これだから箱入りお嬢様は。お勉強なさってるはずでしょう?」

「…なるほどね、そういう事。そもそも家名があるのは貴族のみ。ルミナスなんて珍しい名前目立つものね。…そうね、私はこの世界ではルナと名乗るわ。」

私はボケた頭をフル回転させ、アランの言葉を理解する。

アランはさすがお嬢様と笑い、そして「私はアランと名乗ります。別に珍しくもなんともありませんしね。」と言った。

しかし、私たちの関係がお嬢様と執事では難しいため、血の繋がりがない兄妹という設定にする事にした。


まあ、貴族の家では当たり前だし、平民になったとしてもそういうことがあると知識では知っている。

それに伴い、私はアランをアランと呼び、アランは私をルナと呼ぶこととなった。


アランは無礼を働き申し訳ありませんと頭を下げた。


「アラン、仕方ない事よ。まずはこの世界で生き抜き、元の世界へ帰れる方法を探すことが優先。」

「そうですね、まずは生き抜く事。ですがたくさんの無礼を働くことを先にお詫びします。

そして、ルナ。これからよろしくお願いしますね。」


「ええ、よろしくお願いしますアラン。」





こうして、私たちは兄弟の仮面を被り、一軒の家へと足を進めた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

処理中です...