聖女に異世界へ飛ばされた 【完結】

もち米

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はち

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ーーー30年前、私はもっと遠くの国にいたの。ちょうど16歳の誕生日の日だったわ。

実は私結婚していたのよ。
すごく格好良くて優しくて仕事ができるそんな人と。

結婚してまだ半年も経ってなかったけど、とても幸せだった。

でも、そんな幸せは続かなかった。
ある魔術師が魔力を暴発させて、巻き添えを喰らった私は遥か遠くのこの国に飛ばされてしまったから。

私は身一つでこの国に放り投げ出された。
それから私は大変だった。
幸いあなたたちと違って私は街から少し離れたところに飛ばされたから、すぐに寝床も食にもありつけたわ。

でもね、私は帰りたかったの。すぐに、帰りたくて、必死に王都に行くお金を稼いでいたわ。脇目を振らず。

…周りが見えていなかったのね。
王都に行くのは簡単じゃない、貴族と話をするのは安易ではないと何度も親切な方達が教えてくれたのに、私は自分がかつて貴族だったことを鼻にかけてその忠告を流したの。

だって、私も貴族だから貴族の方が話を応じないはずがないと思っていたの。浅はかよね。

そんな私は段々と街の人たちから避けられるようになった。
でも私は気づかなかった。だって私はとにかくお金が欲しかったから。

そしたら、ねえ、聞いてくれる?おかしいのよ。ある日突然、働けなくなったの。
あんたの働く場所この街にはねえ、さっさと王都にでもいきな。ってまた、身一つで投げ出されたわ。

待って、お金は?給付金は?と聞いたら、確かにあんたはよく働いてくれた。でも、アンタのせいで店の評判が下がって赤字なんだ。払えるものはない。と冷たく言われたわ。

私はその時初めて、自分が間違えたのだと思った。それから頭を下げてなんとかもう一度機会をくれないか頼んだけど、駄目だったわ…気づくのが遅すぎたのね。

私は絶望しながらも必死に何年もかけながら、ちょこちょこ仕事をもらってお金を貯めていった。丁度25年前くらいかしら…王都に行けたの。

私は嬉しかった。ようやく私は元の、旦那様のところへ帰れるんだと思ったから。

…でも、またしても私は失敗するの。
私は、愚かだった。この国では私はただの汚い平民だということに気づかなかった。

気づかなかった私は貴族に不躾に話しかけて、礼儀知らずな平民と言われた。
それでもやっぱり諦められなくて話しかけ続けたら、私は牢獄に入れられたわ。

貴族に対する侮辱行為という罪名で。
10年間ずっと薄暗くて寒くてネズミがいる、そんなところにいたわ。

やっと出れた頃は私はもう綺麗でも若くもない汚い平民の女だった。

私はもう旦那様に会えないと悟って、人が誰もいないこの草原地帯に住み始めたの。

私今でも思うわ。もっと冷静になって、周りを見て、もっと耳を傾けていればよかったって。そしたらもっと違う未来があったんじゃないかって。

ねえ、ルナ。焦りは禁物よ。
それは貴方を不幸にするもの。



ーーーだから、どうか今は心と体を休めて頂戴ね。





私はサーシャの言葉を噛みしめる。
サーシャの悲しそうな顔が忘れられない。
愛しい旦那様に二度と会えないなんて…もし、私もそうなったら…どんなに辛いだろう。

でも、サーシャはそんな風になって欲しくなくて私に話してくれた。

私はアランと共にエドワード様のところへ帰るために、焦る心を沈めてこの世界で生き抜かなければならない。

大丈夫、エドワード様は私たちを信じて待ってくれる。

私そう自分言い聞かせながら、サーシャが用意してくれた布団に包まる。

大丈夫大丈夫、きっと帰れる。


「…ダメだわ。なんだか現実味がなくてしみったれてしまう。いけない、アヴェーヌ家の娘として恥に値するわ!!!もっと気合を入れなさいルミナス!これは戦いよ、あの聖女マリアからの挑戦状。この戦いに負けたらそれこそアヴェーヌ家の恥!そもそもこんな女々しいのは私らしくないわ。」

そうここには大好きなお父様もお母様もそして可愛い弟妹もいないし、愛しいエドワード様もいない。

でも、優秀な執事ならいる。

「たかが1、2ヶ月どうってことないわ。武者修行と思えばなんてことないじゃない。大丈夫よ、アヴェーヌ・ルミナス。」

自分何度も言い聞かせる。
明日からは敬語でお淑やかなルナになるから、どうか今だけはアヴェーヌ家のルミナスでいさせて。


「まーったく、お嬢様は相変わらず逞しいことで。」

「あ、アラン?!」


なぜかここにいるはずないアラン声が。
驚き名前を呼べば、窓からふわりと入ってきた。

「寧ろ、お淑やかなルナではなくじゃじゃ馬なルナにしますか?」

「…聞いていたのね。」

睨むように言えば、彼は軽く笑った。

「冗談ですよ。でも、たまにはルミナス様と執事アランとして接しましょう。」

「…別にいいわ。」

「自分では気づいてないでしょうから教えて差し上げます。ルミナス様は今日1日でかなり混乱されていました。その証拠に私に敬語を使ったり使わなかったりしてたので。割と繊細なんですよねぇ、昔もお化けがいると信じていたり、庭で大事に育てていた苺が枯れたのが衝撃で3日寝込みましたもんねー」



ペラペラと喋るアランは、いやはや、あの繊細なお嬢様が寝込まないのは珍しいとか言っていた。

とりあえず、まあ、一発叩いていいのかしら?

私が拳を作りタイミングを図っているとアランは、「でも、」とまた口を開く。

「そんな心優しいルミナス様だから、俺は一生側に仕えると誓ったのです。」




「それはっ、ずるいのではっ?」

「本心ですよ、ルミナス様。
 大丈夫です。私が絶対にエドワード殿下の元へと導きます。」


そう力強く言ったアランはとってもカッコ良かったし、何故か信じられた。

私は、私はアランと共にエドワード様のいる世界へ帰る。




ーーーガチャ。



「誰ですか」

「っ!」







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