聖女に異世界へ飛ばされた 【完結】

もち米

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★じゅうさん

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私は確かに30年前、この世界に来たわ。
そして、21歳の時に牢獄に入れられそこから10年間は日の光を浴びることなく過ごした。

やっと出れたのは31歳の時。
自業自得とは言え、自分の姿と年齢に絶望したわ。

31歳なんて、子供が3人いてもおかしくない歳だもの。

旦那様だってきっともう新しい人と幸せになってるはず。そう思ったら悲しくなって、道の端っこで泣いていたわ。

そしたら「大丈夫?悲しいことでもあったの?」って優しい声が聞こえたの。

顔を上げるとそこには優しい声が似合う優しそうな顔の女の人が立っていた。

彼女は何も言えず固まっていた私の隣に座り込み、「話、よければ聞く。楽になるよ」と言って私の話を聞いてくれたの。

それが、街にいるって話したナターシャ。

ナターシャはこの世界の大魔法士の一人でね、凄い人なの。

そんな凄い人と私は仲良くなって友達になったわ。

一年過ぎた頃よ、ナターシャが突然、元の世界に戻りたい?って聞いてきたの。

その時はびっくりしたし、なんで知ってるの?って怖くなったわ。

でも、「ボクはね、君と似たような人を見たことがあるんだよ。その子は死んでからこの世界に来たみたいだけど。その子に色々聞いたんだ。この世界には時々シャルンのような人たちが来るんだって。」と優しく言われて、私はひどくほっとしたのを覚えてるわ。

私だけじゃない、そういう風に思ったら心を肩の力がスッと軽くなった。

「ねえ、シャルン。その子に頼べば君を元の世界へ返せるよ。どうする?」

私はナターシャの言葉に一瞬だけ迷ったけれど、行くことを決めたの。

もう一度、旦那様に会いたかったから。

術の発動は一度きり、あちらの世界の思入れのあるものがきっかけになり、発動可能になる。そして、1日経たずして、帰りたいと願ってしまったならまたこの世界に戻ってきてしまう脆い魔法でもあると言うことを知らされた。

つまりは、帰りたいと願わなければ元の世界にずっといられる。ということだった。

それを聞いて少し迷ったわ。
だって、ナターシャとせっかく仲良くなったのに、二度と会えないなんて寂しすぎるから。

でも、何度も何度も考えて私はナターシャに二度と会わないという選択をした。

ーーーーでも、私はここにいるわ。
そう帰りたいと願ってしまったの。この世界に。

私にとって戻った元の世界は、とても辛いものだったの。時が経ちすぎて、変わっていた街並み、服装、それから、旦那様。

一番悲しかったのは、旦那様に新しい奥様がいたことよ。そうね、仕方ないと思うわ。
だって、10数年の音沙汰ない女を待つ理由なんてないもの…。

私は凄くショックで、茂みに隠れて泣いていたわ。でもね、でも、そんな私のところへある小さな天使がきたの。

白いワンピースに軽くウェーブのかかった輝く金髪。そして、美しいエメラルドの瞳。

それは、教会にいる天使のようだったわ。

私はいつの間にか涙が止まって、その天使を見つめていた。


「ねえ、どうしたの?悲しいの?」

優しい声と柔らかな手が私の心を癒してくれた。私は情けないけれどまた泣いてしまった。

涙が止まるまで天使は優しく頭を撫でてくれた。私は泣き止んだ時、少し恥ずかしくてゆっくり顔をあげたの。

呆れた顔してるかな?なんて、思ったけど天使様は優しくただ笑っていた。


「…あのねっ悲しいことあったらたくさんたくさん泣くの!そしたら、たくさん笑うの!そしたらね、幸せが降ってくるんだって!」

「幸せ?」

「うん!神様が幸せをくれるんだよ?それでね、悲しかったのも全部あったかいになるの!」

「そうなんだ…」

天使様の言葉はたどたどしくて、人間の私には分からなかったけれど、天使様のコロコロ変わる表情に私は目を奪われていた。

そして、私たちは少しばかりお話をした。


「そっかぁ、大事な人に大事な人ができて悲しいのね。」

「…うん、」

「大事な人は?なんて言ったの?」

「会ってないの。怖いから」

「こわい?怒るの?そんなのルミナスがメッて怒るから大丈夫よ!」

そういう天使様は一生懸命、拳を振っていた。その可愛さに思わず笑ってしまった。

天使様はあっ!と言って私に顔を近づける。私は突然のことで身動き取れず固まり、「な、なに?」と聞く。

すると、天使様は柔らかくそして美しく笑ってこう言った。

「やっと笑ったね!!!」

良かったねぇと続けていい、私の頭を撫でる天使様。ああ、先ほど言っていた泣いた後に笑うと神様に幸せがもらえると言う話の事かと、数秒後に気づく。

「じゃあ、とりあえずその大事な人に会お!」

「あ、だめ、会えない、」

「こわいから?ルミナスがいるよ?」

「…ごめんなさい。」

天使様は私の情けない姿に怒るわけでも呆れるわけでもなく、ただ不思議そうに見つめるだけだった。

「…じゃあ、ルミナスがかわりに言う?」

「えっだ、だめっ!言うなら自分でっ!」

と言葉を紡いだ瞬間、突然の時間切れがきた。私の周りに魔法陣が現れ、光り始めたのだ。

そうーーー私は異界へと再び帰る。
帰りたいと願ってしまったから。




「???どうしたの?」

「ルミナ…じゃなくて、天使様、これを!!!!!」

「これは?」

「大事な人に貰った大事なもの!コレを渡してほしい!」

「え、ルミナスが??」

天使様はなぜ自分が上げるのか分からないようだった。私は手短に元の世界へ帰らなければならないから渡せないと言った。

それを聞いて、天使様は力強く頷き掌に乗った指輪を大事に握りしめた。

「これ、ちゃんと渡すわ!うちにはなんでもわかる凄い人がいるから!!」

「ええ、お願いね…!」

「…もう会えないの?」

天使様はもうだいぶ指先が薄くなっている私を見て、悲しそうに眉を潜めた。
そんな表情でさえ美しいなんて、天使様は本当に神の使いなのかもしれない。

「もう会えない。さよなら、天使様。」

辛いけれど、優しく温かく美しい天使様にキッパリと別れを告げる。
すると、天使様はポケットから何かを取り出し私の体に押し付けた。

私は慌てて返そうとしたが、強く押さえつけられたのと、私の掌に温かい滴が零れ落ちてきた為、動きを止めて天使様を見た。

「これ!ルミナスの大事なの!かしてあげる!」

「天使、さま…」

「だから、だからまた返しにきてね!!!ぜったーーーー」


ボロボロと涙を零す天使様を見つめていたら、転移が始まったらしい。
私は天使様の言葉を最後まで聞き取ることができず、異界へと戻ってきた。

戻ってきたとき、なぜかナターシャはいなかった。そこにいたのはナターシャが紹介してくれたユフィという名前の少女が立っていた。

「ご、ごめんね!ナターシャじゃなくて!!!!私もね、待っててって言ったんだけど…」

「あの、ナターシャはどこに?」

「あ、あのあの、ううーんと、」

ユフィは言葉を濁し目を泳がせる。
それだけでナターシャの状況がわかってしまって、私は悲しくなったわ。

「言ってやれよ、なんで戻ってきたんだ!ってものすごく怒ってたって。」

「あーーー!!!テト!だめ!いつも出てこないせに!!!」

彼女が必死に私を見ながら気遣っているが、正直バレバレなのでそれ以上悲しくはならなかった。

私はその後、すぐに宿屋に行って、得たものと失ったものを振り返った。手の中には天使様から貰った立派な懐中時計があった。

ナターシャとはほぼ絶縁状態だったけど、5年後に仲直りしたの。ユフィとテトは相変わらず雲のようでね、なかなかつかまらないのよ。魔法少女だからかしら?

話したのも、そうねぇ、最近だと3年前かしら?

それで私は暫くして名前を変え、ここに住み始めて、少しずつだけどこの世界が好きになっていったわ。



今では私の大事な故郷の一つよ。





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