聖女に異世界へ飛ばされた 【完結】

もち米

文字の大きさ
34 / 61
2

さんじゅうさん

しおりを挟む




「さあ、魔王城へようこそ!」



キラキラと輝かしいほどの笑顔とは裏腹に、後ろにある扉の魔力は禍々しかった。

…魔王ってどんな人?魔物だろうか
やはり、禍々しい魔力を纏った人ならざる姿をしてるのでは?

想像だけで体が震える。
アークはというと、全く恐れておらずむしろ「いやぁ、魔界語とかってあんのか?私はそういうところ全く勉強してないからなぁ…どうしたら、うーん。」となにやらとても楽しそうな頭をしていて実に羨ましい。

「まおー!あけてー!」

ヘレスの声かけに応じるように扉がゆっくりと開く。

私は腹をくくり、震える手と足をなんとか奮ってアークと共にヘレスの後ろを歩いた。





中はわりと綺麗で広く、まるで貴族の屋敷のようだった。
しかし、歩いても特に使用人もいなければ人の気配、魔物の気配さえしなかった。

まさか、この広さで1人で住んでいるのか?


なんと、贅沢なんだ。
いやでも、わりと隅々まで綺麗で掃除が行き届いている。埃もなければ洗い立てのようなカーペット、磨き立ての置物達。

私たちが感じてないだけで、もしかしているのだろうか?


「ヘレス。」

「なあに、おねーちゃん!」

「今ここに、私たち以外に誰がいる?」

「えー?ヘレス達以外は誰もいないよ!」


なんだ、やはり私の考えすぎかと安堵したがーーーでも、とヘレスが続けた言葉にゾッとした。




「違うところで、いーっぱいヘレス達のこと見てるよ!!」




にこっと笑うヘレス。
私は顔から血の気が引くのを感じた。

いっぱいとは?
たくさんの魔物が私たちを見ている?


私の顔色が良くないのを察したのかヘレスが思いきり、魔法を発動し突風が起こった。


「わっなんだ?!ヘレス!」

「ダメ!おねーちゃんいじめるのだめ!今すぐ辞めないと、やっちゃうから」

「へ、ヘレス?」

アークの心配をよそにヘレスは私のところへやってきて、頭を優しく撫でてくれた。

「大丈夫!ヘレスがおねーちゃん守るから!こわくないよ!」

「ヘレス…ありがとう。」

「んふふっどーいたしまして!」

ヘレスがぎゅーっと抱きしめ、ふわりと香る花の匂いに私は安心した。

ヘレスが味方なうちは大丈夫。
そう思えば体の震えもおさまった。


私は抱きしめてくれたヘレスにお礼を言って、惚けてるアークと共に魔王の部屋へと足を進めた。




「さて、はいるよー!」

豪華な扉を思いきりなんの躊躇もせず開け放つヘレス。
アークがちょっと待て!心の準備をさせてくれ!と言っていたが時遅し。

私達は魔王のいる部屋へと入っていた。



魔王はというと部屋の中央にあった高そうな机のそばにある椅子に座り、優雅に私たちを見て笑っていた。

サラサラと長い黒髪、キラキラと輝く銀色の瞳。唇も薄く、鼻も小さい。
そんな整った顔立ちに、「ようこそ、我が城へ」と優しく微笑まれた。


あれ?見たことあるような?

私はその笑顔に見覚えがあった。


確かあれは…私が小さい頃に、会ったことがある調べ物が得意だったー…なんか綺麗なお兄さんがいたような…?笑顔もキラキラしてて、眩しかったような…、


私が一生懸命考え、思い出そうしていると突然魔王が立ち上がり、私のところまで軽やかに歩いてきた。


「え、あ、の、」

私の前でピタリと立ち止まった魔王。
そして戸惑う私を見て、魔王は笑みを深め嬉しそうに目元を和らげながら、そっと優しく抱きしめた。






「久しぶりだね、かわいいルゥ」






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

処理中です...