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よんじゅうはち
しおりを挟むその後もヘレスのままで、リヒトが出てくることはなかった。
ルシファーとアークに散々心配され、頭を撫でられた後は、ルシファーお勧め宿の風呂にゆっくり入り、部屋で店で出されるお茶を飲んでいた。
結局、部屋割りはなくなり個室になった。
ヘレスはアークと一緒だけど。
私は1人部屋で、リヒトの言葉を繰り返し脳内で思い返す。
ーー俺の加護が王妃になる時邪魔になると?
彼は確かにそう言った。
私が王妃になることをなぜ、彼が知っているのか、何故、彼は笑っていたのか、私には分からない。
何からも何者からも攻撃を受けない加護。
心強いけれど…とても厄介な加護。
ただでさえ、光の加護を得ている私は自身の怪我を修復できる能力がある。
なのに、これ以上、と考えところでそういえば、飛ばされた先で出会った狼の魔物はどうなったのかしら?
まさか、ついてきてはないよね?
なんて思いながら嫌な予感が当たらないように、思い出さないようにした。
「もう、限界か。そろそろ、私の身分を話すべきか。いや、しかし、それでは、」
「真剣に悩んでいるところ悪いが、魔王ルシファーにルナの本来の身分と名を教えてもらった。」
私が頭を唸らせていると、聞き覚えのある声が頭上からした。
顔をあげれば、そこには普段よりラフな格好をしたアークがいた。
アークは扉に寄りかかりそれ以上は近寄ってこなかったが、部屋から出る気もないようだった。
「…もっと、早くに気づくべきだった。」
「あーく、」
「あなたが無事でよかったーーールミナスさま。」
アークはそういうと私に恭しく頭を下げて、片足を床につけ、騎士の礼をした。
私はその美しい所作に目を奪われたが、すぐに表をあげよと言い放つ。
アークは頭はあげるが、目をふしたまま。声すら発さない。
「あーく、やめてくれ。私はルナだ!そんな礼も丁寧な言葉遣いも要らない!」
私が必死にそう言っても、彼は騎士の礼をしたまま動かない。
私は仕方なく、騎士のルナとしてではなく、侯爵令嬢のルミナスとしてアークと向き合うことにした。
「騎士アークよ、表をあげ私と会話することを許可します。」
「はっ」
「…今まで、身分を明かせずすみません。迷惑ならば私はこのままあなたたちの元から去ります。」
私がそういうと、アークは真っ直ぐ私を見ていった。
「…一度も迷惑などと、思ったことはありません。これからも。だから、どうか表向きはアークとルナとして悪女を捕らえに参りませんか?」
「…一つ約束をしていただけるなら」
「それはなんでしょうか?」
「約束すると誓わなければ話しません。」
アークは私の言葉に、誓いの言葉を口にする。そして、もう一度なんでしょうか?と聞く。
私は彼の誓いの言葉に嘘偽りはありませんか?と再度問うた。
彼は戸惑いながらも、偽りはありませんと真っ直ぐ私の目を見て言ったので、私も意を決して言葉をつむいだ。
「表や裏など関係なく、私のことはルナと呼び以前と変わらぬ関係であること。それだけですわ。」
にっこり笑ってそう言えば、アークはまさかそんなことが条件とはと言わんばかりに目を開いていた。
それがおかしくて、私はさらに笑ってしまうがアークが鋭く睨んできたので急いで引っ込めた。
「ーーールナよ、本当にこれでいいのか?」
「当たり前だ、今の私は騎士なのだから。」
私はアークにそう言って笑えば、アークも同じように笑ってお互いに拳をぶつけ、それを合図にアークを部屋を退出し、私はベッドに転がった。
どうか、明日はうまく行きますようにと願いながら私はまぶたを閉じた。
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