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ごじゅうさん
しおりを挟むマリアは私の言葉に攻撃をやめた。
そして、憎々しげに私の顔を目を真っ直ぐ見てきた。
「アンタは生まれながらに何もかも持ってるわ!!!親に愛され、弟妹もいて、婚約者もいて、周りに愛されているアンタに私の立場や気持ちは理解できない!!!」
そう泣き叫ぶように言ったマリア。
そして、彼女は私には理解できない話をする。
「それは、エドワードだって思ってるわ!アンタが全て持って憎いってね。だって、エドワードは国王とその妻の子どもじゃないもの!あの子は今の妻の前の人との子、つまりは前妻の子。だから、あの子は恨まれ憎まれながら育った。エドワードは親から家族から愛されず育ったのよ!アンタみたいな脳内お花畑と一緒にいてどれだけ苦痛だったか…本当になにも知らないって愚かね。」
私を見て哀れむマリア。
私は彼女の言葉に、聞いたこともなくただ困惑することしか出来ない。
「貴方は彼の孤独を理解できない。痛みも理解できない。同じ境遇の私なら彼を理解できる。寄り添って痛みを分つことができる。私しか彼の心を理解できる人はいないの!」
確かに、私は理解出来ない。
1人の寂しさや血の繋がらない家族もいない。
虐げたれたことも後ろ指刺されたこともない。
マリアがいうように、エドワード様がそのような環境で育ったのなら私には理解もできないし、痛みを分かち合うこともできない。
だけど、
「それでも、私はお慕いしているわ。」
ーーーエドワード様を愛おしいと思う気持ちは、私は誰にも負けない。
そう言いたくて、マリアの目を真っ直ぐ見つめる。
「なにそれ、愛があれば乗り越えられる?笑わせないで!そんなものは理想よ!貴方に彼が支えられるの?本当にわかるの?彼が泣いた時、彼が嘆いた時、貴方はなにができるの?なにをしてあげられるの?ただそばにいて、泣くことしかできないくせに!心に触れることも優しくすることも出来ないくせに、そんな簡単に愛してるだなんて言わないで!」
「簡単ってなんで、そう言い切れるの?」
彼女が言いたいことは分かる。
何もかもを持っている私が心に傷を負ったエドワード様を助けられるのか、支えられるのかと言いたいのだろう。
逆に言いたい、聞きたい。
「貴方はエドワード様を支えられるの?そばにきて守れるの?貴方には何ができるの?」
辛い気持ちがわかって、同じ境遇であるだけで貴方に何ができるの?それで、エドワード様は幸せになれるの?
「私は、エドワード様の辛い気持ちや寂しい気持ちは分からないわ。私には常に誰かがいたから。もし、貴方がそばにいることでエドワード様が笑って幸せなら私はこのまま旅人ルナとしてここを去るわ。」
「なにそれ…余裕って言いたいの?愛された人間は傲慢で、強欲で、本当に見ていて不快だわ!!」
「だって、私はエドワード様を愛してるもの。あの人が挫けそうになるなら私が隣に立って支えるわ。あの人が寂しいのなら隣にいて楽しい話をするわ。あの人が、折れて弱ってしまったなら私が前に立って守るわ。私にはその力がある。あの人の隣に立てるように小さい頃から努力したわ。」
幼き頃に出会ったエドワード様に恋してから、私はずっと血の滲むような努力をしてきた。ずっと、他の子が楽しくお茶会をやっている間も、剣や魔法、淑女のマナーなど王妃に必要なことを学んできた。
「まるで、他の人間が努力していないような言い方ね。自己保身的で私そういう人大嫌い!!!私は、あの人のそばにいてあの人に必要とされたいの!私という人を生涯愛してくれる人が欲しいの、貴方には分からない感情でしょうけどね。」
マリアは私の顔を見て、不快そうに顔を歪ませながら、「だから、貴方がいると邪魔なのよね。せっかく異世界に飛ばしたのに、なんで戻ってきたの」といった。
私は戻ってきた経由は一切言わないと心に誓い、ただマリアを見据える。
生涯愛してくれる人ーーーそれは、とても魅力的な言葉だった。
「生涯愛してくれる人なら、なにもエドワード様じゃなくても、」
「なにを言ってるの?私はエドワード様を心から愛した上で、愛されたいと願ってるの。でも、貴方がいるから、エドワード様は私を愛さない。それが許せないの。貴方は私の物語に必要ないのよ。」
「な、ぜ、そこまで?エドワード様とはどんな関係なの?」
「庶民と王族。貴方は知らないだけ。私は知っているだけよ、この世界を。」
そう言ったマリアは遠くを見つめ「そろそろ来ちゃうわね。」と呟く。
私はその言葉も耳に入らず、ただ彼女が言った私が知らない世界を知っているというのを考えていた。
この世界を、とはどういうことなんだろうか。
「あーあ、本当は殺したいのに。貴方、随分強力な加護をお持ちで。でも、でもね、次会う時、その加護なんか消し飛ぶくらいの魔法を発動させるから。それまで、精々無様にいろんな人に愛されて生きなさい。
ーーーさよなら、ルミナス侯爵令嬢」
「待ちなさい!!!!!聖女マリア!!」
私が考えている間に、マリアは薄ら笑いを浮かべながら転移魔法で姿を眩ませた。
追いかけようとしたが、時はすでに遅く私は1人取り残されていた。
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