聖女に異世界へ飛ばされた 【完結】

もち米

文字の大きさ
58 / 61
4

ごじゅうはち

しおりを挟む







「あら、私もその転生者よ、ライ。文句ある?」








高らかに笑い、自信満々に言うのは聖女マリアだった。


ライは少しだけ動揺したが、すぐに気を引き締めて「ふぅん、キミもそっち側だったのか、」と言った。

「ええ、私は前世の記憶を持ち、この世界へ来たわ。憧れのゲーム、真実の愛は理さえ覆す…通称真愛ゲーム!!!!!私はヒロインに転生したと思い、エドワード様と結婚できると思ったわ。でも、でも、こんなことあり得る!?エドワード様も転生者だったなんて!」

クワっと両目を見開いて勢いよく言い放つマリアは、少しばかり疲労していた。

隣にいるエドワード様は、少し気まずそうに遠い方向を見ていた。

「どおりで、スムーズに事が進まないわけだわ!だって、エドワードはヒロインより悪役令嬢が好きだったんだもの!」

「いやまて、普通に考えたらルミナスは悪役令嬢ではないだろう!?」

「いいえ!私を悪い魔女だと言いふらし、地獄に落としたのは他でもないルミナスでしょうが!アンタ、ちゃんとクリアしたの?!」

「あれ、そんな設定あったっけ?」

「はい、さようなら。話なんないわ。とにかく!いい?私はもうエドワード様と結婚する気はないわ!さっさとそのアバズレを返しなさい!」

さっきから、彼女の口から出るアバズレという言葉は私のことだろうか?
あだ名が何かかしら?よく庶民の間で流行る貴族とは違う愛称?

聖女マリアは私と親しくなりたいと思っていると言うことね。


「アバズレという愛称ということね、私はなんという愛称を作ればいいのかしら?マリアはそうね、美しいものね。美しいと言ったら空かしら?花もいいわ、宝石でも…迷うわね」


そう私が言えば、私以外のみんなが口を揃え「愛称じゃないから!!!!!」と言った。

あら、愛称ではないの?


「なんで、私がアンタを愛称で呼ぶのよ!蔑称よ!アンタのことを下に見てるの!分かったかしら?」

「でも、前より気さくになったし話も続いてるわ!是非、お友達になって一緒にお茶会しましょう?」

「脳内お花畑なの?!私はアンタが大嫌いなの!お茶会なんてするわけないでしょ!」

「でも、大嫌いというのは信頼できることだわ。私は貴方を心底嫌いってわけではないもの。それに貴方は私の足らぬところを指摘して叱ってくれるわ。」

王妃候補の私には腹を割って話せる友などいない。もちろん、上辺だけの親交はある。

だけど、マリアのように立場をものともせずに意見を言う人は私の周りにはいなかった。

だから、私は貴方にそばにいて欲しい。

友達になりたい、と思ってしまった。


「…うざったいたらありゃしないわ!私はアンタが大嫌い!それ以上でもそれ以下でもないわ!!!!さあ、ライ。離しなさい!それは私のよ!」

「なあに、マリア。ルミナスが好きなの?キミってば散々エドワード様って言ってたのに、もういいわけ?」

「はあ?嫌いだっつんてんでしょ!何回も言わせないで!え、え、エドワード様はっもういいのよ!私と同じ転生者って時点で私は興醒めなの!!」

まあ、顔は最高に好みなんだけどねと付け加えるマリアに、エドワード様がにこやかに首を振り距離をとった。

その様子を見ていたライが私を捕まえていた手をパッと離し、マリアの元へ瞬時に移動する。


「な、なによ?!」

急に目の前に現れたライに、マリアは動揺したがすぐに冷静になり見据える。
そんなマリアを見て、嬉しそうに笑ったのはライだった。


「ほんとに、エドワードどうでもいい?王子サマと結婚したいって言わない?」

「い、言わないわよ!どうみたって相思相愛でしょ!世界の理が崩れることはないわね、絶対に!」

「ほんとに?ほんとにもうこの先一生思わない?」

「しつこいわね、思わないわよ!聖女の、私の名に誓ってエドワード王太子殿下を好きになることも求婚することもこの先絶対ないと宣言するわ!」

そう強く言って、文句ないでしょ!と鼻息を荒くしてライに詰め寄るマリア。

そんな近づいたマリアに少し驚いたように目を丸くしたがそのまま彼女の唇に、自身の唇をくっつけて「良かった。じゃあ、オレと結婚しよ。マリア。」と甘く囁いたのは、出会ってから初めて見た優しい笑みをしたライだった。







「これ、私たちいるか?」

「ヘレスたちぜんぜん出番ない!!」

「まあ、なんかうまくまとまったみたいだね~よかった世界滅ぼさずに済んだよ。」

「物騒なことさらりと言わないでください、父さん。」



エドワード様の後ろでコソコソと気配を消すものがいたことは、マリアも私も忘れていた。


のちに、それをライとエドワード様から聞かされて2人で顔を赤く染めたのは懐かしい話。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...