1 / 7
1
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。
「あなたはリリアに執拗ないじめを行い、公爵令嬢としての品格を欠いた。故に、私はあなたとの婚約を破棄し、リリアを正妃に迎える!」
ああ、またか。これで何回目だろう。
「王太子殿下、申し訳ありませんが、私はリリア嬢に何もしておりません」
「言い訳は聞かぬ! 証拠ならリリアが持っている!」
リリアが震える手で差し出したのは、一通の手紙だった。そこには私の筆跡で「リリア、お前は目障りだ。婚約者を誘惑するなら、それなりの覚悟をしなさい」と書かれているらしい。
「……なるほど。ですが、それが本当に私の筆跡か、確認はされましたか?」
私の冷静な問いかけに、王太子の顔がわずかに引きつる。だが、リリアは怯えた様子で彼の腕にしがみついた。
「こ、こわいです……レティシア様が怖いことを言います……」
「レティシア! 貴様、リリアを怖がらせるとは何事だ!」
その場の空気が王太子側に傾く。私はため息をついた。まあ、どうせこのまま断罪されるのだろう。
「分かりました。婚約破棄、承諾いたします」
その瞬間、王太子とリリアの顔がぱっと明るくなる。
「おお、ようやく理解したか!」
「……ただし、一つだけお願いがあります」
「なんだ?」
「私に罪を着せた者たちが後にどのような報いを受けるか、ぜひ見届けたいので、断罪の場にはぜひご招待ください」
「なっ……!」
広間の空気が凍りつく。王太子とリリアの表情が引きつり、周囲の貴族たちがざわついた。私は穏やかに微笑みながら、王太子の顔をじっと見つめる。
「ふふっ……楽しみにしておりますね」
婚約破棄された翌日、私は自室でくつろいでいた。婚約破棄の衝撃が王宮に広がり、今日も侍女たちの噂話が聞こえてくる。
「ねえ、聞いた? 王太子殿下、実はレティシア様に未練があるとか……」
「嘘でしょ? あんな風に婚約破棄したのに?」
「でも、今朝も『本当にこれでよかったのだろうか……』って悩んでいたらしいのよ」
……なんですか、それは。
私は紅茶を一口飲みながら、窓の外を眺めた。王宮の庭園では、リリアが王太子と親しげに歩いている。だが、王太子の表情はどこか浮かないように見えた。
「まったく、何がしたいのやら」
私が呆れていると、ノックの音がした。
「レティシア様、訪問者がお見えです」
「誰?」
「第一騎士団長のカイル・ヴァレンタイン様です」
「カイルが?」
私は少し驚いた。彼は王国最強の騎士であり、王太子の親友でもある。そんな彼が、なぜ私のもとに?
しばらくして、部屋に入ってきたカイルは、真剣な目で私を見つめた。
「レティシア、婚約破棄の件……大丈夫か?」
「ええ、別に気にしていませんわ」
私が紅茶を勧めると、彼は苦笑しながら座った。しかし、次の瞬間、彼は低い声で囁いた。
「お前を陥れたのは、王太子とリリアだけじゃない。背後にもっと大きな勢力がいる」
「……!」
「お前は王太子にざまぁされたわけじゃない。本当は、王太子たちこそ利用されているんだ」
私は思わず息をのんだ。まさか、こんな展開になるとは……!
「レティシア、お前が望むなら、俺が守る」
カイルの真剣な瞳が私を見つめる。私は思わず、彼の手を取ってしまった。
「……ありがとう、カイル」
しかし、そんな穏やかな時間も長くは続かなかった。次の瞬間、扉が勢いよく開かれた。
「レティシア! 話がある!」
そこに立っていたのは――王太子アレクシスだった。
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。
「あなたはリリアに執拗ないじめを行い、公爵令嬢としての品格を欠いた。故に、私はあなたとの婚約を破棄し、リリアを正妃に迎える!」
ああ、またか。これで何回目だろう。
「王太子殿下、申し訳ありませんが、私はリリア嬢に何もしておりません」
「言い訳は聞かぬ! 証拠ならリリアが持っている!」
リリアが震える手で差し出したのは、一通の手紙だった。そこには私の筆跡で「リリア、お前は目障りだ。婚約者を誘惑するなら、それなりの覚悟をしなさい」と書かれているらしい。
「……なるほど。ですが、それが本当に私の筆跡か、確認はされましたか?」
私の冷静な問いかけに、王太子の顔がわずかに引きつる。だが、リリアは怯えた様子で彼の腕にしがみついた。
「こ、こわいです……レティシア様が怖いことを言います……」
「レティシア! 貴様、リリアを怖がらせるとは何事だ!」
その場の空気が王太子側に傾く。私はため息をついた。まあ、どうせこのまま断罪されるのだろう。
「分かりました。婚約破棄、承諾いたします」
その瞬間、王太子とリリアの顔がぱっと明るくなる。
「おお、ようやく理解したか!」
「……ただし、一つだけお願いがあります」
「なんだ?」
「私に罪を着せた者たちが後にどのような報いを受けるか、ぜひ見届けたいので、断罪の場にはぜひご招待ください」
「なっ……!」
広間の空気が凍りつく。王太子とリリアの表情が引きつり、周囲の貴族たちがざわついた。私は穏やかに微笑みながら、王太子の顔をじっと見つめる。
「ふふっ……楽しみにしておりますね」
婚約破棄された翌日、私は自室でくつろいでいた。婚約破棄の衝撃が王宮に広がり、今日も侍女たちの噂話が聞こえてくる。
「ねえ、聞いた? 王太子殿下、実はレティシア様に未練があるとか……」
「嘘でしょ? あんな風に婚約破棄したのに?」
「でも、今朝も『本当にこれでよかったのだろうか……』って悩んでいたらしいのよ」
……なんですか、それは。
私は紅茶を一口飲みながら、窓の外を眺めた。王宮の庭園では、リリアが王太子と親しげに歩いている。だが、王太子の表情はどこか浮かないように見えた。
「まったく、何がしたいのやら」
私が呆れていると、ノックの音がした。
「レティシア様、訪問者がお見えです」
「誰?」
「第一騎士団長のカイル・ヴァレンタイン様です」
「カイルが?」
私は少し驚いた。彼は王国最強の騎士であり、王太子の親友でもある。そんな彼が、なぜ私のもとに?
しばらくして、部屋に入ってきたカイルは、真剣な目で私を見つめた。
「レティシア、婚約破棄の件……大丈夫か?」
「ええ、別に気にしていませんわ」
私が紅茶を勧めると、彼は苦笑しながら座った。しかし、次の瞬間、彼は低い声で囁いた。
「お前を陥れたのは、王太子とリリアだけじゃない。背後にもっと大きな勢力がいる」
「……!」
「お前は王太子にざまぁされたわけじゃない。本当は、王太子たちこそ利用されているんだ」
私は思わず息をのんだ。まさか、こんな展開になるとは……!
「レティシア、お前が望むなら、俺が守る」
カイルの真剣な瞳が私を見つめる。私は思わず、彼の手を取ってしまった。
「……ありがとう、カイル」
しかし、そんな穏やかな時間も長くは続かなかった。次の瞬間、扉が勢いよく開かれた。
「レティシア! 話がある!」
そこに立っていたのは――王太子アレクシスだった。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄を求められました。私は嬉しいですが、貴方はそれでいいのですね?
ゆるり
恋愛
アリシエラは聖女であり、婚約者と結婚して王太子妃になる筈だった。しかし、ある少女の登場により、未来が狂いだす。婚約破棄を求める彼にアリシエラは答えた。「はい、喜んで」と。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~
かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。
だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。
だめだ。
このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。
これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。
私を悪女に仕立て上げるために間男を用意したようだ。その正体が誰だか知らずに。
サトウミ
恋愛
どうやら婚約者は、私を悪女に仕立てて婚約破棄するつもりのようだ。
女の私の方が優秀なのが気に食わないらしい。
私が紅蓮の勇者と不貞行為をしている、ということにしたいのだろう。
だけど愚かな婚約者は、紅蓮の勇者の正体を知らないようだ。
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
悪役令嬢は断罪の舞台で笑う
由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。
しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。
聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。
だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。
追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。
冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。
そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。
暴かれる真実。崩壊する虚構。
“悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。