悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)

ほーみ

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「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」

 王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。

 ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。

「あなたはリリアに執拗ないじめを行い、公爵令嬢としての品格を欠いた。故に、私はあなたとの婚約を破棄し、リリアを正妃に迎える!」

 ああ、またか。これで何回目だろう。

「王太子殿下、申し訳ありませんが、私はリリア嬢に何もしておりません」

「言い訳は聞かぬ! 証拠ならリリアが持っている!」

 リリアが震える手で差し出したのは、一通の手紙だった。そこには私の筆跡で「リリア、お前は目障りだ。婚約者を誘惑するなら、それなりの覚悟をしなさい」と書かれているらしい。

「……なるほど。ですが、それが本当に私の筆跡か、確認はされましたか?」

 私の冷静な問いかけに、王太子の顔がわずかに引きつる。だが、リリアは怯えた様子で彼の腕にしがみついた。

「こ、こわいです……レティシア様が怖いことを言います……」

「レティシア! 貴様、リリアを怖がらせるとは何事だ!」

 その場の空気が王太子側に傾く。私はため息をついた。まあ、どうせこのまま断罪されるのだろう。

「分かりました。婚約破棄、承諾いたします」

 その瞬間、王太子とリリアの顔がぱっと明るくなる。

「おお、ようやく理解したか!」

「……ただし、一つだけお願いがあります」

「なんだ?」

「私に罪を着せた者たちが後にどのような報いを受けるか、ぜひ見届けたいので、断罪の場にはぜひご招待ください」

「なっ……!」

 広間の空気が凍りつく。王太子とリリアの表情が引きつり、周囲の貴族たちがざわついた。私は穏やかに微笑みながら、王太子の顔をじっと見つめる。

「ふふっ……楽しみにしておりますね」




 婚約破棄された翌日、私は自室でくつろいでいた。婚約破棄の衝撃が王宮に広がり、今日も侍女たちの噂話が聞こえてくる。

「ねえ、聞いた? 王太子殿下、実はレティシア様に未練があるとか……」

「嘘でしょ? あんな風に婚約破棄したのに?」

「でも、今朝も『本当にこれでよかったのだろうか……』って悩んでいたらしいのよ」

 ……なんですか、それは。

 私は紅茶を一口飲みながら、窓の外を眺めた。王宮の庭園では、リリアが王太子と親しげに歩いている。だが、王太子の表情はどこか浮かないように見えた。

「まったく、何がしたいのやら」

 私が呆れていると、ノックの音がした。

「レティシア様、訪問者がお見えです」

「誰?」

「第一騎士団長のカイル・ヴァレンタイン様です」

「カイルが?」

 私は少し驚いた。彼は王国最強の騎士であり、王太子の親友でもある。そんな彼が、なぜ私のもとに?

 しばらくして、部屋に入ってきたカイルは、真剣な目で私を見つめた。

「レティシア、婚約破棄の件……大丈夫か?」

「ええ、別に気にしていませんわ」

 私が紅茶を勧めると、彼は苦笑しながら座った。しかし、次の瞬間、彼は低い声で囁いた。

「お前を陥れたのは、王太子とリリアだけじゃない。背後にもっと大きな勢力がいる」

「……!」

「お前は王太子にざまぁされたわけじゃない。本当は、王太子たちこそ利用されているんだ」

 私は思わず息をのんだ。まさか、こんな展開になるとは……!

「レティシア、お前が望むなら、俺が守る」

 カイルの真剣な瞳が私を見つめる。私は思わず、彼の手を取ってしまった。

「……ありがとう、カイル」

 しかし、そんな穏やかな時間も長くは続かなかった。次の瞬間、扉が勢いよく開かれた。

「レティシア! 話がある!」

 そこに立っていたのは――王太子アレクシスだった。

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