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「君のような聡明な女性を、アレクシスが手放したのは彼の失策だ」
エドワードは微笑みながら私を見つめた。
「だからこそ、私は君を迎え入れたい」
言葉は優雅だが、彼の瞳は本気だった。
「レティシア、お前はこいつの話を真に受けるな」
カイルの腕が私の肩を引き寄せる。
「隣国の王子が、善意だけで求婚してくるはずがない。何かしらの思惑があるに決まっている」
「警戒心が強いな、騎士団長殿」
エドワードは肩をすくめながらも、余裕の笑みを崩さない。
「だが、理由がどうであれ、私は彼女に興味がある。それが真実だ」
「興味で求婚などするな」
「そう言うが、カイル。お前は彼女の何だ?」
その問いに、カイルは一瞬黙った。そして、少しだけ顔を伏せる。
「俺は……」
「ふふ、どうやらまだ自覚が足りないようだな」
エドワードは愉快そうに笑ったが、その視線は私に向けられていた。
「レティシア、君の意思を聞こう。カイルと王太子がどう言おうと、最終的に決めるのは君だ」
彼の言うことは正しい。私は彼らに従う義務はない。
私はゆっくりと紅茶を口にし、冷静に答えた。
「申し訳ありませんが、求婚を受けるつもりはございません」
「そうか」
エドワードは軽く笑い、肩をすくめた。
「君がすぐに頷くとは思っていなかった。だが、これからも君を口説くつもりだ。覚悟してくれ」
「……」
「そして、もうひとつ。君の周囲に危険な影が忍び寄っている。私が言っているのは、それを防ぐための提案でもあるんだ」
彼の表情が真剣なものに変わる。
「『彼ら』は君を消そうとしている。君が気づかないうちに」
「……」
それが何を意味するのか、私にはまだ分からない。ただ、確実に何かが動き始めている。
翌日、私は庭園で紅茶を楽しんでいた。
最近は貴族たちの態度も変わってきている。婚約破棄直後は私を避ける者が多かったが、今では私に対して妙に気を遣うようになっていた。
(まるで、私が逆転する未来を見越しているような……)
そんなことを考えていると、前方からリリア・エヴァンスが現れた。
「レティシア様……」
彼女は少し怯えた表情で私を見つめていた。
「何のご用かしら?」
「私は……私は、あなたに謝らなくてはなりません」
「……」
謝罪。
それは王太子からも聞かされていたことだった。しかし、改めて本人の口から聞くと、やはり違和感が拭えない。
「なぜ急に?」
「私は……本当は、ずっと怖かったのです」
リリアは小さく唇を噛んだ。
「私が何か間違えれば、すぐに誰かが私を切り捨てる。そう思うと、周囲の期待に応えるしかありませんでした」
「だから、私を貶めたの?」
「違います……私は、本当に信じていたのです。あなたが私を憎んでいるのだと……」
彼女の声が震える。
「でも、婚約破棄が決まったあと、私は気づきました。私は誰かに操られていただけなのだと」
「操られていた?」
「……私は、王太子殿下に近づいたときから、ずっと誰かに見られていました。気づいたときには、あなたが悪役に仕立て上げられ、私は王太子殿下の庇護を受ける立場になっていた……」
彼女の話が真実かどうかは分からない。
だが、王太子とリリアがただの愚か者ではなく、何者かに利用されていた可能性があるとしたら――。
「レティシア様、どうか、私と協力していただけませんか?」
リリアの目には真剣な光が宿っていた。
「私は、私を操っていた者の正体を突き止めたいのです」
リリアの話を聞いた後、私はカイルとエドワードにも相談することにした。
応接間で向かい合う三人。
「リリアが言っていた『誰かに操られていた』という話だが、俺も気になっていた」
カイルは腕を組みながら考え込む。
「婚約破棄は王太子とリリアの独断ではなく、より大きな何かの計画の一部だった可能性がある」
「エドワード、あなたは何か知っている?」
「俺の国でも、君の婚約破棄についての報告は入っていた。どうやら、君が失脚することを望んでいた者がいるらしいな」
「誰が……?」
「それはまだ分からない。ただ、ひとつ確かなことがある」
エドワードは鋭い目を私に向けた。
「君の命を狙う者がいる。だからこそ、俺は君を守りたいと思っている」
「……」
「もちろん、俺だけでなく、カイルもな」
「それは当然だ」
カイルの言葉に、私は少しだけ安心する。
だが、問題はこれからどう動くかだ。
「私は、リリアの話を信じるべきかしら?」
「今の時点ではまだ信用できないな」
カイルが冷静に言う。
「だが、彼女が鍵を握っているのは確かだ」
エドワードも頷いた。
「もし彼女の話が本当なら、王太子もまた駒に過ぎなかったということになる」
そうなれば、事態はさらに複雑になる。
「私たちが動けば、相手も必ず動くわね」
「ああ。だが、レティシア。俺たちがついている。お前を一人にはしない」
「そうだな。君を失うのは惜しいからな」
二人の言葉に、私は小さく笑った。
「ありがとう。でも、私はもう決めたわ」
私は静かに、だが確かな決意を込めて言った。
「このままでは終わらせない。誰が黒幕なのか、必ず突き止めてみせるわ」
その瞬間、窓の外で何かが光った。
次の瞬間、爆発音が響く――!
エドワードは微笑みながら私を見つめた。
「だからこそ、私は君を迎え入れたい」
言葉は優雅だが、彼の瞳は本気だった。
「レティシア、お前はこいつの話を真に受けるな」
カイルの腕が私の肩を引き寄せる。
「隣国の王子が、善意だけで求婚してくるはずがない。何かしらの思惑があるに決まっている」
「警戒心が強いな、騎士団長殿」
エドワードは肩をすくめながらも、余裕の笑みを崩さない。
「だが、理由がどうであれ、私は彼女に興味がある。それが真実だ」
「興味で求婚などするな」
「そう言うが、カイル。お前は彼女の何だ?」
その問いに、カイルは一瞬黙った。そして、少しだけ顔を伏せる。
「俺は……」
「ふふ、どうやらまだ自覚が足りないようだな」
エドワードは愉快そうに笑ったが、その視線は私に向けられていた。
「レティシア、君の意思を聞こう。カイルと王太子がどう言おうと、最終的に決めるのは君だ」
彼の言うことは正しい。私は彼らに従う義務はない。
私はゆっくりと紅茶を口にし、冷静に答えた。
「申し訳ありませんが、求婚を受けるつもりはございません」
「そうか」
エドワードは軽く笑い、肩をすくめた。
「君がすぐに頷くとは思っていなかった。だが、これからも君を口説くつもりだ。覚悟してくれ」
「……」
「そして、もうひとつ。君の周囲に危険な影が忍び寄っている。私が言っているのは、それを防ぐための提案でもあるんだ」
彼の表情が真剣なものに変わる。
「『彼ら』は君を消そうとしている。君が気づかないうちに」
「……」
それが何を意味するのか、私にはまだ分からない。ただ、確実に何かが動き始めている。
翌日、私は庭園で紅茶を楽しんでいた。
最近は貴族たちの態度も変わってきている。婚約破棄直後は私を避ける者が多かったが、今では私に対して妙に気を遣うようになっていた。
(まるで、私が逆転する未来を見越しているような……)
そんなことを考えていると、前方からリリア・エヴァンスが現れた。
「レティシア様……」
彼女は少し怯えた表情で私を見つめていた。
「何のご用かしら?」
「私は……私は、あなたに謝らなくてはなりません」
「……」
謝罪。
それは王太子からも聞かされていたことだった。しかし、改めて本人の口から聞くと、やはり違和感が拭えない。
「なぜ急に?」
「私は……本当は、ずっと怖かったのです」
リリアは小さく唇を噛んだ。
「私が何か間違えれば、すぐに誰かが私を切り捨てる。そう思うと、周囲の期待に応えるしかありませんでした」
「だから、私を貶めたの?」
「違います……私は、本当に信じていたのです。あなたが私を憎んでいるのだと……」
彼女の声が震える。
「でも、婚約破棄が決まったあと、私は気づきました。私は誰かに操られていただけなのだと」
「操られていた?」
「……私は、王太子殿下に近づいたときから、ずっと誰かに見られていました。気づいたときには、あなたが悪役に仕立て上げられ、私は王太子殿下の庇護を受ける立場になっていた……」
彼女の話が真実かどうかは分からない。
だが、王太子とリリアがただの愚か者ではなく、何者かに利用されていた可能性があるとしたら――。
「レティシア様、どうか、私と協力していただけませんか?」
リリアの目には真剣な光が宿っていた。
「私は、私を操っていた者の正体を突き止めたいのです」
リリアの話を聞いた後、私はカイルとエドワードにも相談することにした。
応接間で向かい合う三人。
「リリアが言っていた『誰かに操られていた』という話だが、俺も気になっていた」
カイルは腕を組みながら考え込む。
「婚約破棄は王太子とリリアの独断ではなく、より大きな何かの計画の一部だった可能性がある」
「エドワード、あなたは何か知っている?」
「俺の国でも、君の婚約破棄についての報告は入っていた。どうやら、君が失脚することを望んでいた者がいるらしいな」
「誰が……?」
「それはまだ分からない。ただ、ひとつ確かなことがある」
エドワードは鋭い目を私に向けた。
「君の命を狙う者がいる。だからこそ、俺は君を守りたいと思っている」
「……」
「もちろん、俺だけでなく、カイルもな」
「それは当然だ」
カイルの言葉に、私は少しだけ安心する。
だが、問題はこれからどう動くかだ。
「私は、リリアの話を信じるべきかしら?」
「今の時点ではまだ信用できないな」
カイルが冷静に言う。
「だが、彼女が鍵を握っているのは確かだ」
エドワードも頷いた。
「もし彼女の話が本当なら、王太子もまた駒に過ぎなかったということになる」
そうなれば、事態はさらに複雑になる。
「私たちが動けば、相手も必ず動くわね」
「ああ。だが、レティシア。俺たちがついている。お前を一人にはしない」
「そうだな。君を失うのは惜しいからな」
二人の言葉に、私は小さく笑った。
「ありがとう。でも、私はもう決めたわ」
私は静かに、だが確かな決意を込めて言った。
「このままでは終わらせない。誰が黒幕なのか、必ず突き止めてみせるわ」
その瞬間、窓の外で何かが光った。
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