転生したら...俺カッパだよ

七味とうがらし

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ワコクの街

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 テンシンまではまだかなりある、団長さんもステファニーさんの現状を聞いて安心したのか随分旅のペースが緩やかになっている。

「次の街はワコクでしたかいのぅ」

「そうだな、倭刀って言う剣を使ってる奴らが多い所だな」

「ほう、倭刀ですかの、それは片刃で反りの有る剣ですかな?」

「おう、それだよ、あの貧弱な剣だよ、俺達の戦い方には向かねぇ代もんだな、」

「あれは団長さんのバスタードソードのように力で叩き切る剣ではないですからのぅ」

「ほう、そうなのかい、」

「あれは切ると言う事に特化した剣ですからのぅ、あと剣を振るう技術が無いと、扱いの難しい剣ですじゃ」

「そうか、ちょっとワコクのギルドで遊んでいきたいな」

悪そうな笑い顔でこちらに向いた、



ここはワコクの街の冒険者ギルド、小柄な老人が倒れている虎獣人に向かって

「峰打ちじゃ、安心なさい、稽古はこんなもんで良いじゃろう」

と、言うと

「つええ、はんぱねぇ、手も足もでねぇ...」

虎獣人その場で土下座しながら

「師匠!俺に剣を教えてくれ!頼むこの通りだっ」

「う~んそれは構わんが、一体何のために剣をふるうのじゃな?」

「俺には守りたいものが有るんだ、俺の家族を、俺のパーティーを、俺たちの街を守りてえんだ」

「個人の欲望の為ではないのじゃな、良かろう基本だけは教えましょう、そこからは自分に合った技を作りなさい」

「はい!師匠、宜しくお願いいたします、」

「あの~よかったら儂も教えて頂けませんかのぅ」

「あなたも、ですか?、剣術が必要なのですか?」

「え?それは...」

「かなりの使い手と見たのですが、更に力を欲するのですか?」

俺は言葉に詰まった、そしてありのままを告げる事にした、

「何処か二人きりでお話出来る所は御座いませんでしょうか?」

「では私の執務室でお話をお聞きしましょう、」

俺はギルドマスターの執務室に通された。

「改めまして、私はこのワコクの街のギルドマスター、ツキカゲと申す、」

「ご丁寧に有難う御座います、わたくし...」

おもむろにローブのフードと防塵眼鏡バンダナマスクを外す

「川田修一と申しますカッパでございます、」

驚きの表情を見せるツキカゲ、だがすぐに平静を取り戻す、

「何故カッパがこのような事に?」

「実はわたくし転生者なのです、どうやら誤ってカッパに転生してしまったのですよ、」

「それは難儀な事で、」

「それでこのカッパの体と言うのはすぐに食材となってしまう脆い体なのです、それで少しでも長く生き残れればと、思い力を求めました、」

「ほう」

「あと私はこの世界に転生した意味を知る事が出来たのです、」

「それは?」

「この世界をより良き世界にする事です、」

「その言葉...貴方魔法が使えるのですか?」

「はい、」そう言って爪の先に火を灯す。

「では貴方もG・O・D様にお逢いになられたのですね」

「はい、G・O・Dさんの導きにより今ここにいるのだと思います、なので真実を打ち明けさせてもらったのです」

「そうですか、よくぞ真実を打ち明けてくれましたな、よろしい、その正直さ 確かに受け止めました、明日から道場に虎獣人の方々と一緒に来てください、」

「有難う御座います、ではわたしからそのお礼と言う事でツキカゲ先生の左手の義手を治させてください」

「やはり義手だとバレましたか、しかし無くしてしまったものはもう戻りませんから、良い義手を作る技術があるのですか?」

「いいえ、欠損部位を再生する事が出来るのです、」

「なんと、その様な事が...」

早速準備を始める、今が夕刻、おそらく深夜までかかるだろうからその準備と信頼できるお弟子さんを2名お借りして打ち合わせをする、

幸い再生薬とスライムの核は俺が全部アイテムBOXに仕舞っておいたので十分材料は有る、頑丈な拘束台は執務室のテーブルが丁度良かったのでここでやる事にした、

そしてツキカゲ先生が魔法使いにしたい弟子をピックアップして、呼んだらすぐに執務室に入って来れるようにした。

栄養補助食品の魚とエビのすり身を用意、余分に出しておこう、漏斗型のマウスピースに消毒用のキツイ酒、冷却用の氷もだ、そんな時、

「師匠!」

そう言って少年剣士が執務室に飛び込んできた。

「師匠、俺にもその再生治療手伝わせてください、」

「いや大丈夫じゃよ、カワタさんと彼らにやってもらう事になっておるからの」

「でも、師匠の腕は俺のせいで...」

「そこの少年剣士よ、ならば手伝ってくれんかのぅ」

俺は少年の心の痛みを感じ取った、まるで動物の念話のような物を感じ取ったんだ、この少年心の底からそれを望んでいるのだろう、それで俺は手伝うのを許可したんだ、

「有難う御座います」と少年剣士は深々と礼をしていた、

少年剣士にも細かい手順を伝える、二人のお弟子さんも再度聞いて確認をしていた、真面目なんだねここの人達って、

っでちょっと俺驚いたことがあったんだ、全員白装束なんだよ、いや、死なないからね、と心の中で呟いちゃったけどね

「では準備に取り掛かります、拘束具を、」

右手と胴体、両足と頭を固定する、

「欠損部位の冷却は済んでいます」少年剣士が言う

この道場のナンバー2が執刀する、何度か素振りをしている、このお弟子さんもかなり出来る感じがしたが、現状ママ・モーリヤの方が上を行っている様であった、

「師匠!いざ!!!」そう言って欠損部位端面より3.5cmの位置を寸分たがわず切る、

ツキカゲ先生は顔をしかめるがうめき声一つ上げていない、

俺は手早く薬草とスライム核で作った薬と混ぜ合わせ、軟膏を作る、

そして傷口に塗布していく、

薄皮が出来そこから徐々に皮膚と骨が再生していく、

「少年剣士よ、お師匠様の腕のマッサージを頼む、血の巡りを良くして再生速度をあげるのじゃ」

そう言うと少年剣士は一生懸命にマッサージを始める、

もう一人のお弟子さんが栄養補助食品の流動食を次々投入していく、

施術から2時間半程の事、

「来ましたな、」俺はそう言ってツキカゲ先生の胸部を皆に見せる、

皮膚の下で魔導蟲が蠢いて産卵管を乳腺に刺して卵を産み付けている、それが落ち着いた所で、

俺が胸部を切り卵を集める、そして卵の保存液に入れて保存する、まあ保存液と言っても只のツキカゲ先生の血肉なんだけどね、

っで集め終わった俺はツキカゲ先生の胸部を治癒していく、その間少年剣士が軟膏を塗りマッサージを行っているんだ。

俺は今回10名に魔導蟲を移植する事になっている、9名は終わったんだが、最後の一人が来ていない様だ、

「ツキカゲ先生一人まだ来ていないようですが、」

「いや、もうここに居ります、」

「ひょっとして彼ですか?」

一心不乱に欠損部位再生軟膏の塗布とマッサージをしている少年に向かって

「ハンペイタ、次はおぬしの番じゃ、」

「ハンペイタ君そこのベッドで横になって待っていてくれるかな?」

俺はそう言ってナンバー2の彼に軟膏塗布とマッサージを交代してもらう。

「では、ハンペイタ君いきますぞい」

胸部を切開し心臓の近くに魔導蟲の卵を置く、そして治癒魔法で傷口を塞ぐ。

「これで半年ほどで魔法が使える様になりますから、お師匠様にしっかり教わってくださいね」

俺はそう言うと少年剣士は泣きながら何度も頭を下げていた、

「さあかなり戻ってきましたよ、あとは指の長さを揃えるくらいですが、気を抜かずに頑張って行きましょう、」

予定より30分位早く終わりそうだ、これも一生懸命マッサージした結果なんだろうなと思いながらまた、俺のデータベースに新しい数値が入力された、

「ツキカゲ先生、どうですか?違和感とかないですか?」

俺は聞いてみる、

「以前と変わらない、いや、以前よりも力に溢れている様だ、」

「それはきっとお弟子さん達の思いがこもっているのでしょう」

おれは感じたままの事を言う、

「そうですね、我が弟子たちの心がこもっているようですね」

ツキカゲ先生が俺の正面に来て両手を握りながら言った、

「カワタさん、有難う、ハンペイタを救ってくれて、私ではハンペイタの負った心の傷を治すことが出来ませんでした」

「いえいえ、そんな事は有りませんよ、彼はもう一人前の男じゃないですか、きっと自分で何とか出来たと思いますよ、」

「どうも私はかわいい弟子には過保護になってしまうのです、」

「いいお弟子さんと良いお師匠さんですね」 俺はちょっと羨ましかった、そんな関係が。

「では、ツキカゲ先生、明日からの稽古宜しくお願いします、」

「カワタさん宿はもう決めてあるのですか?」

「いえ、これから探そうかと、」

「夜も更けておりますのでどうですか?今日はうちに来ていただくと言うのは」

「それは有難いことです、が虎の団が居りますし...」

「全員泊まれるだけの布団は有りますから大丈夫ですよ」

「そこまで言って頂けるなら、お断りするのは失礼かと、では御厄介になります」

「では行きましょうか、」そう言ってギルドの裏手の1区画に回ると、大きな武家屋敷がそこにあった、

「こちらが自宅になっております、」

玄関を入り靴を脱ぐ、廊下を歩いている、20m程行き障子を開ける、テーブルがあり座布団が置いてあった、

上座からツキカゲさん、団長、俺、残りの虎獣人の順で座っていく、更に門弟さん達がやって来て総勢50名程が集まりツキカゲ先生の欠損部位再生治療の成功と10名の魔法使いの誕生を祝う宴が始まった。

そうしてツキカゲ一門との夜は更けていった。







続く
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