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【番外編】ジャン視点4
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大地を揺るがすような、音が響いた。魔物だ、逃げなければ、頭にけたたましい警戒音が鳴り響く。
だが、足がすくんで思うように動かない。その瞬間唐突に家族が魔物に襲われた景色がフラッシュバックした。家族なんて、生まれてからずっといないと思っていたのに…。
強大な魔物に追いかけられる俺達をを庇って犠牲になる両親と両親ごと踏みにじられる俺と妹。正直どうして俺だけが助かったのかわからない惨状だった。
ふと、目に入ったミランダ嬢が妹と重なって見えた。
守らなければ、今度こそ守らなければ。呪縛が解けたように身体が動く。
ミランダ嬢を抱えあげた。必死で特殊装備がしてあるという馬車に走る。絶対に指一本触れさせてなるものか。ミランダ嬢を馬車に無事乗せ終えた俺に息を吐く暇もなく、パーシヴァルの指示が飛んだ。
条件反射で、魔物にファイヤーボールをぶつけた。
魔物はファイヤーボールを受けながら俺をギロリとねめつけた。獲物を狙い定める目だ。先程フラッシュバックしたばかりの記憶でも、俺は魔物に狙われていた。
魔物が俺に気をとられている隙にパーシヴァルは馬車にエスメラルダ嬢を押し込んだ。
己の魔力で俺のファイヤーボールを打ち消した魔物が再び馬車に狙いを定めた。させるか、俺は魔物にファイヤーボールをぶつける。しかし、魔物は焔を纏ったまま馬車へ突進し始めた。
パーシヴァルがすらりと剣を抜き放った。
馬鹿な。こんな強大な魔物は見たことがない。一個師団を投入して、やっと屠れるかどうかのレベルの魔物だぞ。死ぬ気か?
しかし、パーシヴァルの背中からは悲壮な決意など一切感じられなかった。今、魔物を撃退しなければ、ここにいる全員がどうせ命を落とすだろう。
ただひたすらに愛する者を守りたいという強い想い。
いいぜ、パーシヴァル俺も逃げない。記憶の中で何も出来ずに家族がなくなっていくのを只見ているしかいなかった弱い俺はもういないんだ。
立ち向かおう、命の限り。
パーシヴァルの援護の為に俺は目眩ましのファイヤーボールを打ち続けた。パーシヴァルの剣の腕ならば、もしかしたら魔物を撃退出来るかもしれない。
そんな俺の目に信じられないものが飛び込んできた。
パーシヴァルの身体から強烈な魔力が溢れる。魔力の奔流が焔となって剣に纏わりついた。
正確無比な太刀筋で魔物の急所を切り裂く。一拍遅れて焔が炸裂した。強大な魔物が霧散する。
俺も含めて強大な魔力に皆、固まっていた。
当事者であるパーシヴァルさえもだ。そんな中ただ一人、目をキラキラさせながら、先程のパーシヴァルの技を『炎撃一閃』と名付け彼の負った火傷を無意識に癒したエスメラルダ嬢が怖い。
もしかしたら、彼女こそが最強なのかもしれない。
俺は現実から目を逸らすべくミランダ嬢の愛らしい顔を眺めた。
姉と違いびっくりして固まっている姿が可愛くて癒された。ミランダ嬢は、俺と同じ感覚らしい。
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