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文通

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 パーシヴァル様と文通ができるなんて。なんて幸せなのかしら。
 私は毎日代わり映えのない日常だけど、必死で話題を掘り起こした。
 大好きな乗馬のこととか。

 パーシヴァル様のお手紙は、士官学校の日常なだけあってとても楽しいものだった。
 お父様から伺った士官学校の話ではなかなかに大変な日常だと聞いていたけれど。そのお手紙から伝わってくる日常は、すごく楽しそうなものだった。

 ああ、素敵。男性なのに端麗な文字にも惚れ惚れしてしまう。今日は良い夢をみれそうだわ!

「お姉様。見て見て。」
 小さな熊のブローチを持ったミランダがこちらにやって来た。
 宝石は一切使われていないようだけど。なにか?

「これね。ジャン様が、お手紙に同封してくださったのよ!」
 この格上妹ポジめ。なんたること。
プレゼントだと。

 熊が途端に素晴らしく尊いものに見えてきた。
ものの価値は素材じゃなく、ストーリーなのね。

 私の宝石箱には、素晴らしく美しい宝飾品がゴロゴロしてるけど。その熊一匹に完全敗退したわ。

「お姉様、私ね。ハンカチを刺繍して送って差し上げたのよ。そうしたらほら。」
 なんと。そのような裏技で推しグッズを手に入れたとは。

 お主も悪よのう。
して、ミランダ。どのようなハンカチを?君は刺繍が苦手では?

「あ、お姉様ったら、大丈夫よ。ちゃんと家庭教師のマリー先生のお手本の方を送ったから。」
 みんなー。ここに小悪魔じゃなくて、サタンがいますよー。ミランダよ、この憐れな下僕にもお知恵を。

 エスメラルダは、悪魔に魂を売り渡したのだった。


 マリー先生のご指導のもと、せっせと刺繍に没頭する。刺繍なんて、何の役に立つのかしらなんて思ってたけど。推しに献上出来る喜びと、上手くいけば推しグッズゲットの打算に打ち震える。
 急に熱心に取り組み始めた私にマリー先生はうろんげな目を向けたけど、深くは追及してこなかった。

 私が精根込めて造り上げた力作を手紙に同封する。マリー先生が、まるで怨念のこもったものを見るような恐怖に満ちた目で見ていたけど。私、気にしないわ。私は、素敵な推し事が出来て幸せなのよ。


 パーシヴァル様、このハンカチ捨てないでね。そして、あわよくばこの憐れな私に何かプリーズ。

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