【完結済】当て馬氷の女王は生涯独身~全権力を行使して推しグッズを収集してみせますわ~

降魔 鬼灯

文字の大きさ
44 / 45

最終話

しおりを挟む
色気駄々漏れのパーシヴァル様は、立ち上がって私の前で片膝をついた。

 おとぎ話の王子様のような姿にきゅん死寸前だ。


 顔をあげたパーシヴァル様はさっきまでとうってかわって急に真面目で真剣な顔になったから、私もきちんと座り直す。


「エスメラルダ、貴方を愛している。

私の愛と忠誠を貴女に捧げ、この命ある限り私の全てをかけて生涯貴方を守り抜くと誓う。

 私と結婚して欲しい。」


 私は迷うことなく頷いた。

推しのプロポーズなんて断れる訳がない。もし断ったなら、一生魘うなされて眠れなくなるに違いない。


「パーシヴァル様の愛を受け取ります。先程の誓いの言葉を生涯かけて一言一句違える事なく誓い続けてくれますか?」


「エスメラルダ、もちろんだ。君を愛している。」


 言質は取ったぞ、パーシヴァル・マッキンリー。

彼は有言実行の人だ。一度口に出した事は絶対に守る。

 故に、出来ない事は絶対に口にしない。


 しかし、念には念を入れておこうではないか。

私は、書庫を漁って執念で見つけ出したアメリア女王の日記に書かれてあった誓約の呪文を発動した。


 誓約の呪文の発動条件は相手からの自分への『愛』の一言。

 漫画のパーシヴァル様は女王に愛と忠誠を捧げていた。でも、主人公ダリアと出会った彼の誓いの言葉からは『愛』の一文字が消えた。

 たった一言、されどそれは大きな一言だ。

だから悪用して誓約してみようかな、なーんて悪いことは考えてなどおりませんでしたとも。はい…。

 


「私エスメラルダは、パーシヴァル様の愛と誓いの言葉を礎として、私の一生涯をかけて、お互いを愛し、助け、守り合う事を互いの魔力に賭けて誓います。」


 互いの魔力が複雑に絡み付いて混じり合うのがわかる。お互いの身体が青白く発光して誓約が発動したのがわかった。


「エスメラルダ…。」 

呆然と佇んでいたパーシヴァル様が我に帰ったように

私をその胸にがっちりと抱きしめた。


 パーシヴァル様ごめん。

騙し討ちのように誓約しちゃった。

 でも、これで念願のパーシヴァル様生配信が可能になった。いつでも、お互いを見放題だわ。


 って、あれ?私も見られちゃいます?

あ、ヤバいかも。

 恥ずかしすぎなんですが、パーシヴァル様は紳士なので、見たりなんてしないよね。大丈夫な筈…。


 ということで、無事誓約でがっちりしばった事だし、疑問点を解決していくか。


「パーシヴァル様、戦争が終わったから私の事を考えていただけたのですか?」

 去年の私の逆プロポーズはどう思っていたんだろう。


「去年は、戦争中で無事帰れるかもわからなかったし、あなたが王女となり、ゆくゆくは女王となられると聞いて動揺していた。」

 パーシヴァル様でも、動揺するんだ。


「戦争は終結したし、きちんと功績も残せた。国王と宰相、アルバート王太子にも求婚の了承は取り付けた。」

 先程の長いお父様達との会議でそんなこと話していたのね。


「私にはガリアだけでなく、ランス、イスパニア、ロマノフの王位継承権がある。

 貴女との結婚の為に障害となるランス以外の全ての王位継承権を放棄する。

 ガリア国籍を捨てランス国籍だけを遺す。この条件でならと了承をもらった。」



 漫画のパーシヴァル様は旧ガリアの王族であることと、その血に流れる複数の王家の血に誇りを持っていた。

 その誇りを棄てる覚悟を決めた上で私に求婚してくれていたんだ。

 なのに私は、姑息にも騙し討ちで誓約し束縛した。自分のしでかしたことに大きな罪悪感を覚える。


「エスメラルダは迷うことなく独断で私の求婚を受け入れくれたね。」


「はい。」

当たり前です。いざとなったら、パーシヴァル様と愛の逃避行するつもりでしたわ。


「嬉しかった。あなたも私の為に全てを棄てる覚悟があるとわかって。あまつさえ、あなたの誓約には胸を締め付けられるくらい嬉しかった。」


 パーシヴァル様、私はあなたの胸だけでなく全身を魔力で締め上げて縛りましたよ。その感触を喜びと誤認しているのでは?

 まあ、パーシヴァル様がいいなら、一生騙されて貰いましょう。



 私は美しくしたたかな当て馬なのですから。


             


                     了


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

貧乏令嬢ですが、前世の知識で成り上がって呪われ王子の呪いを解こうと思います!

放浪人
恋愛
実家は借金まみれ、ドレスは姉のお下がり。貧乏男爵令嬢のリナは、崖っぷち人生からの起死回生を狙って参加した王宮の夜会で、忌み嫌われる「呪われ王子」アレクシスと最悪の出会いを果たす。 しかし、彼の孤独な瞳の奥に隠された優しさに気づいたリナは、決意する。 「――前世の知識で、この理不尽な運命、変えてみせる!」 アロマ石鹸、とろけるスイーツ――現代日本の知識を武器に、リナは次々とヒット商品を生み出していく。 これは、お金と知恵で運命を切り開き、愛する人の心と未来を救う、一人の少女の成り上がりラブストーリー!

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

【完結】余命半年の元聖女ですが、最期くらい騎士団長に恋をしてもいいですか?

金森しのぶ
恋愛
神の声を聞く奇跡を失い、命の灯が消えかけた元・聖女エルフィア。 余命半年の宣告を受け、静かに神殿を去った彼女が望んだのは、誰にも知られず、人のために最後の時間を使うこと――。 しかし運命は、彼女を再び戦場へと導く。 かつて命を賭して彼女を守った騎士団長、レオン・アルヴァースとの再会。 偽名で身を隠しながら、彼のそばで治療師見習いとして働く日々。 笑顔と優しさ、そして少しずつ重なる想い。 だけど彼女には、もう未来がない。 「これは、人生で最初で最後の恋でした。――でもそれは、永遠になりました。」 静かな余生を願った元聖女と、彼女を愛した騎士団長が紡ぐ、切なくて、温かくて、泣ける恋物語。 余命×再会×片恋から始まる、ほっこりじんわり異世界ラブストーリー。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

処理中です...