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【後日談】叙勲

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勝利に国が沸いた。今は領土侵略を阻止しただけで、軍事費がかかった為国庫は厳しい。

 しかし、これからランス海峡の海産物が全て我が国のものになるから潤うとマリー先生がヨダレを滴しながら教えてくれた。

 海産物ちゃんと上納するから、マリー先生お願いだからヨダレを拭いて。



 今日は叙勲式だ。

 金品はあんまり配分できないので、地位や名誉を授けようなどと老宰相の考えそうなセコい案だ。

 各人に欲しいものを聞いて、納得ずくだとほくそ笑んでいた狸爺がヤバい。


「ジャン中尉。」


 おっ、ジャンが呼ばれた。

宰相達に欲しいもの聞かれてなかったのに。

 まあ、彼の魔力はかつてこの国最強と言われた前王太子を遥かにしのぐものだったし、独身で平民出身の彼をなんとかこの国に繋ぎ止めておきたい狸爺達の思惑を考えれば呼ばれて当然ともいえる。

 伯父上、あなたの穴を埋めたパーシヴァル様とジャンに足を向けて寝れないな。


「ジャンにロベールの姓と魔法伯の称号を与え、ミランダ王女の近衛騎士に任命する。」


 ミランダが、にんまり笑っている。

 魔法伯の地位と俸禄だけでも中々のものなのに近衛騎士でダブルでとなると、ミランダが成人する頃には一財産築けるな。

 領土がないものの、下手な領土を貰って手間と出費が嵩むより、まるまる俸禄が貰える方がいいに決まっている。

 あのドケチな老宰相にしては中々の大盤振る舞い。

しかもミランダ付き近衛騎士、何らかの作為を感じるぞ。


 まあ、ジャンがとても嬉しそうだからいいのか。

 ミランダの足元に片膝をついて騎士の誓いをしている。

 ミランダもジャンも精霊のように儚げな美形だからまるで一幅の絵画のようだ。

 後ろにいる貴婦人方がため息をついている。


 良かったな、ジャン。ミランダは、私のように君の誓いを悪用しないぞ。たぶん…。




「リチャード・マッキンリー将軍。」


 え?次はパーシヴァル様じゃないの?トリが将軍と思っていたよ。


「引き続きランス海峡警戒のため東部辺境伯に任じる。そして、我が孫娘達の家庭教師を勤めた才媛マリー嬢をアンドリュー王太子の養女として迎え入れ降嫁させる。」


「この上ない幸せに存じ上げます。」


 いつもは国王の前でも高慢なリチャード将軍が、国王の前で騎士の最敬礼をしながら感涙してる。

 普段は孤高の狼のように国王にさえ決しておもねる事のない彼が忠犬ハチ公のようだ。

 私には尻尾をぶんぶん振っているる犬にしか見えないぞ。

 さしものマリー先生は能面のようだが…。


 しかし、大好物の海産物が食べ放題だ。

きっとついていくだろう。

 そして、たらふく食べるに違いない。


 東部辺境領は戦争の影響でかなり疲弊しているが、マリー先生の手に掛かればあっという間に再生し豊かな領地へ変わるだろう。

 マリー先生、何気にチートだもんな。


 漫画の世界で、リチャード将軍が死ぬまで手放さなかったというポートレート、確かマリーってサイン入りだったが。もしや、このマリー先生だったのか?


 マリー先生は、感涙するリチャード将軍にツカツカと歩み寄った。

 ゴシップ好きの貴婦人達がざわめく。


 ビシッ

 鞭のしなる音がした。

マリー先生がリチャード将軍の側の床を鞭で叩いた。


「貴様、女々しいぞ。泣き止まぬか。」

 リチャード将軍がビシッと直立不動でマリー先生に最敬礼した。


「いいか、リチャード。私が嫁ぐからには、貴様には、男の中の男になってもらう。二度と人前で泣くな。」


「イエッサー。」


「東部辺境領をさっさと復旧させろ。」


「イエッサー。」


「私の前に毎日新鮮な海産物を、山程持ってこい。」


「イエッサー。」


 彼らの謎の力関係にひくかと思われた貴婦人方が何故か頬を染めて彼らのやり取りを固唾をのんで見ていた。

 この後宮廷に、男装の麗人が出演する女性だけの歌劇が流行ることになる。





「パーシヴァル・マッキンリー大尉。」


 パーシヴァル様のあまりの神々しさに貴婦人達がどよめく。肉食獣のように狙うのは辞めたまえ。

 私と共に平和に推し活しようよ。

 パーシヴァル様の格好良さを皆で語り合おうではないか。



 パーシヴァル様、たくさん活躍した分ご褒美をたくさんもらってね。私は推しの麗しい姿を堪能しながら祈る。


「リチャード将軍の後任として、将軍職に任じる。西部辺境地で後進の育成に当たれ。」


 辺りがざわめく。当たり前だ。一番の功労者なのに、明らかに褒賞が少ない。

 しかも西部はもともと痩せた土地で交通の便も悪く辺鄙だ。その上、最近では、魔物の被害も拡大していると聞いている。

 もはや褒美というよりは嫌がらせ、島流しに近い。

お祖父様、パーシヴァル様と結婚したいと申し出た私達への嫌がらせですか?


 しかし、パーシヴァル様に不満の色はない。




「そして、一番の功労者として我が王女エスメラルダ。」


 え、私?聞いてないよ。

 取り敢えず、王の前に進み出た。式典用の白いドレスが翻る。

 ほぅっと会場をため息がもれた。

そう私は主人公ダリアをやきもきやせる当て馬。


 原作でも絶世の美女として描かれているけど、原作スタート時点よりかなり若い今、自分で言うのも何だけど惚れ惚れする程美しいのよ。

 皆の者私を崇め奉ればよいわ。


 完璧な所作で王女としての礼をする。


「次期女王として此度の働き大儀であった。」


 いやいや、マリー先生に鼻先に人参ぶら下げられただけだけど…。


「褒美として、配偶者候補を授ける。」


 え、褒美?罰ゲームじゃない。私達の仲を引き裂くつもり?

 いらないし。逃亡してやる。

 私が思い切り顔をしかめたのがわかったのだろう。

国王が苦笑した。


「パーシヴァル・マッキンリー次期将軍を王女の配偶者候補とする。王女は、パーシヴァル将軍について西部辺境地を統治せよ。」


「ありがたき幸せ。」


 国王に王女としての最敬礼をする。

普通は西部辺境地なんて島流し同然だけど。

 パーシヴァル様と一緒なんて、パラダイスだわ。


「エスメラルダ、結果を出せ。出さぬなら、褒賞は無効となる。」


「肝に銘じます。」


 昨夜は結婚は保留って言ってたくせに、お祖父様もお父様も私に甘いわね。

 西部辺境地の状況がかなり厳しいものだとは充分わかってる。時間がかかることも。

 でも出してやるわよ、結果。しかも、最短で。


 鼻先に人参ぶら下げられると弱いのよね、私。

若くて美しいうちに花嫁衣装着たいじゃない?


 隣に並ぶパーシヴァル様を見る。

 高い鼻梁が素敵。彼は年を重ねても渋さが増して素敵よ。

 でも、花の命は短いのよ。

 うかうかしているうちに、若い女の子にかっさらわれるなんて嫌。

 掴んでやるわ、幸せ。断然ゲットよ、パーシヴァル様。


 心の中でガッツポーズを決めた私に、パーシヴァル様が手を差し出してくださった。


「よろしく、婚約者殿。」


 眼差しが艶っぽい。視線に貫かれて身体から力が抜ける。さっとその手で身体を支えてくれる。

 し・あ・わ・せー


 抱き締めるように引き寄せられて厚い胸板を堪能する。この瞬間なら、死んでも悔いはありませんとも。


 パーシヴァル様が私の耳元で囁く。熱い吐息が耳朶をくすぐる。


「結婚式が待ち遠しいね。早く結果を出そう。」


 パーシヴァル様が獰猛な肉食獣みたいに笑った。


 やっぱり私、結婚するまで死ねそうにない。いや、パーシヴァル様の元で天寿を全うするまで死にたくない。

 待ってろ、西部辺境地。パーシヴァル様と一緒にまとめてきっちり統治してやるからな。



 

 この西部辺境地の統治こそが偉大な女王エスメラルダの治世の根幹を形成することとなる。

 

勝利に国が沸いた。今は領土侵略を阻止しただけで、軍事費がかかった為国庫は厳しい。

 しかし、これからランス海峡の海産物が全て我が国のものになるから潤うとマリー先生がヨダレを滴しながら教えてくれた。

 海産物ちゃんと上納するから、マリー先生お願いだからヨダレを拭いて。



 今日は叙勲式だ。

 金品はあんまり配分できないので、地位や名誉を授けようなどと老宰相の考えそうなセコい案だ。

 各人に欲しいものを聞いて、納得ずくだとほくそ笑んでいた狸爺がヤバい。


「ジャン中尉。」


 おっ、ジャンが呼ばれた。

宰相達に欲しいもの聞かれてなかったのに。

 まあ、彼の魔力はかつてこの国最強と言われた前王太子を遥かにしのぐものだったし、独身で平民出身の彼をなんとかこの国に繋ぎ止めておきたい狸爺達の思惑を考えれば呼ばれて当然ともいえる。

 伯父上、あなたの穴を埋めたパーシヴァル様とジャンに足を向けて寝れないな。


「ジャンにロベールの姓と魔法伯の称号を与え、ミランダ王女の近衛騎士に任命する。」


 ミランダが、にんまり笑っている。

 魔法伯の地位と俸禄だけでも中々のものなのに近衛騎士でダブルでとなると、ミランダが成人する頃には一財産築けるな。

 領土がないものの、下手な領土を貰って手間と出費が嵩むより、まるまる俸禄が貰える方がいいに決まっている。

 あのドケチな老宰相にしては中々の大盤振る舞い。

しかもミランダ付き近衛騎士、何らかの作為を感じるぞ。


 まあ、ジャンがとても嬉しそうだからいいのか。

 ミランダの足元に片膝をついて騎士の誓いをしている。

 ミランダもジャンも精霊のように儚げな美形だからまるで一幅の絵画のようだ。

 後ろにいる貴婦人方がため息をついている。


 良かったな、ジャン。ミランダは、私のように君の誓いを悪用しないぞ。たぶん…。




「リチャード・マッキンリー将軍。」


 え?次はパーシヴァル様じゃないの?トリが将軍と思っていたよ。


「引き続きランス海峡警戒のため東部辺境伯に任じる。そして、我が孫娘達の家庭教師を勤めた才媛マリー嬢をアンドリュー王太子の養女として迎え入れ降嫁させる。」


「この上ない幸せに存じ上げます。」


 いつもは国王の前でも高慢なリチャード将軍が、国王の前で騎士の最敬礼をしながら感涙してる。

 普段は孤高の狼のように国王にさえ決しておもねる事のない彼が忠犬ハチ公のようだ。

 私には尻尾をぶんぶん振っているる犬にしか見えないぞ。

 さしものマリー先生は能面のようだが…。


 しかし、大好物の海産物が食べ放題だ。

きっとついていくだろう。

 そして、たらふく食べるに違いない。


 東部辺境領は戦争の影響でかなり疲弊しているが、マリー先生の手に掛かればあっという間に再生し豊かな領地へ変わるだろう。

 マリー先生、何気にチートだもんな。


 漫画の世界で、リチャード将軍が死ぬまで手放さなかったというポートレート、確かマリーってサイン入りだったが。もしや、このマリー先生だったのか?


 マリー先生は、感涙するリチャード将軍にツカツカと歩み寄った。

 ゴシップ好きの貴婦人達がざわめく。


 ビシッ

 鞭のしなる音がした。

マリー先生がリチャード将軍の側の床を鞭で叩いた。


「貴様、女々しいぞ。泣き止まぬか。」

 リチャード将軍がビシッと直立不動でマリー先生に最敬礼した。


「いいか、リチャード。私が嫁ぐからには、貴様には、男の中の男になってもらう。二度と人前で泣くな。」


「イエッサー。」


「東部辺境領をさっさと復旧させろ。」


「イエッサー。」


「私の前に毎日新鮮な海産物を、山程持ってこい。」


「イエッサー。」


 彼らの謎の力関係にひくかと思われた貴婦人方が何故か頬を染めて彼らのやり取りを固唾をのんで見ていた。

 この後宮廷に、男装の麗人が出演する女性だけの歌劇が流行ることになる。





「パーシヴァル・マッキンリー大尉。」


 パーシヴァル様のあまりの神々しさに貴婦人達がどよめく。肉食獣のように狙うのは辞めたまえ。

 私と共に平和に推し活しようよ。

 パーシヴァル様の格好良さを皆で語り合おうではないか。



 パーシヴァル様、たくさん活躍した分ご褒美をたくさんもらってね。私は推しの麗しい姿を堪能しながら祈る。


「リチャード将軍の後任として、将軍職に任じる。西部辺境地で後進の育成に当たれ。」


 辺りがざわめく。当たり前だ。一番の功労者なのに、明らかに褒賞が少ない。

 しかも西部はもともと痩せた土地で交通の便も悪く辺鄙だ。その上、最近では、魔物の被害も拡大していると聞いている。

 もはや褒美というよりは嫌がらせ、島流しに近い。

お祖父様、パーシヴァル様と結婚したいと申し出た私達への嫌がらせですか?


 しかし、パーシヴァル様に不満の色はない。




「そして、一番の功労者として我が王女エスメラルダ。」


 え、私?聞いてないよ。

 取り敢えず、王の前に進み出た。式典用の白いドレスが翻る。

 ほぅっと会場をため息がもれた。

そう私は主人公ダリアをやきもきやせる当て馬。


 原作でも絶世の美女として描かれているけど、原作スタート時点よりかなり若い今、自分で言うのも何だけど惚れ惚れする程美しいのよ。

 皆の者私を崇め奉ればよいわ。


 完璧な所作で王女としての礼をする。


「次期女王として此度の働き大儀であった。」


 いやいや、マリー先生に鼻先に人参ぶら下げられただけだけど…。


「褒美として、配偶者候補を授ける。」


 え、褒美?罰ゲームじゃない。私達の仲を引き裂くつもり?

 いらないし。逃亡してやる。

 私が思い切り顔をしかめたのがわかったのだろう。

国王が苦笑した。


「パーシヴァル・マッキンリー次期将軍を王女の配偶者候補とする。王女は、パーシヴァル将軍について西部辺境地を統治せよ。」


「ありがたき幸せ。」


 国王に王女としての最敬礼をする。

普通は西部辺境地なんて島流し同然だけど。

 パーシヴァル様と一緒なんて、パラダイスだわ。


「エスメラルダ、結果を出せ。出さぬなら、褒賞は無効となる。」


「肝に銘じます。」


 昨夜は結婚は保留って言ってたくせに、お祖父様もお父様も私に甘いわね。

 西部辺境地の状況がかなり厳しいものだとは充分わかってる。時間がかかることも。

 でも出してやるわよ、結果。しかも、最短で。


 鼻先に人参ぶら下げられると弱いのよね、私。

若くて美しいうちに花嫁衣装着たいじゃない?


 隣に並ぶパーシヴァル様を見る。

 高い鼻梁が素敵。彼は年を重ねても渋さが増して素敵よ。

 でも、花の命は短いのよ。

 うかうかしているうちに、若い女の子にかっさらわれるなんて嫌。

 掴んでやるわ、幸せ。断然ゲットよ、パーシヴァル様。


 心の中でガッツポーズを決めた私に、パーシヴァル様が手を差し出してくださった。


「よろしく、婚約者殿。」


 眼差しが艶っぽい。視線に貫かれて身体から力が抜ける。さっとその手で身体を支えてくれる。

 し・あ・わ・せー


 抱き締めるように引き寄せられて厚い胸板を堪能する。この瞬間なら、死んでも悔いはありませんとも。


 パーシヴァル様が私の耳元で囁く。熱い吐息が耳朶をくすぐる。


「結婚式が待ち遠しいね。早く結果を出そう。」


 パーシヴァル様が獰猛な肉食獣みたいに笑った。


 やっぱり私、結婚するまで死ねそうにない。いや、パーシヴァル様の元で天寿を全うするまで死にたくない。

 待ってろ、西部辺境地。パーシヴァル様と一緒にまとめてきっちり統治してやるからな。



 

 この西部辺境地の統治こそが偉大な女王エスメラルダの治世の根幹を形成することとなる。

 

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