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第二部 四季姫進化の巻
十一章Interval~三姫の決意~
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榎の送別会を行った翌日。
早朝から、椿、楸、柊の三人は、示し合わせて外で落ち合った。
月麿が住処に使っていた、庵の前。
封印解除が終わってから、月麿はどこかへ引越したらしく、一度も姿を見ていない。
だが、四季姫絡みで何かある度に来ていた場所だから、今でも自然と集合場所になっていた。
「二人とも、気付いとったか? 昨日、榎の背後に、嫌な気配がまとわりついとった」
庵の脇にもたれ掛かり、柊は腕を組む。
椿と楸は、頷いた。
昨日の展望台での一件。榎が変な感じがする、と騒いだ時、三人も何らかの異変に気付いていた。
「一つでは、ありませんでしたな。かなり多い、複数の気配どした」
全員の意見は一致していた。人だとは思えない、嫌な威圧感だった。
「また、妖怪かしら。もう、戦わなくてもいいと思っていたのに」
「何が目的かは分かりまへんけど、放っておくわけにもいきまへんな。榎はんは責任感が強いどす。再び人間に仇す妖怪が現れたと知れば、きっと倒すまで京都に居残ろうとするはずどす」
「融通の利かへん奴やからな。すぐに無茶しよるし」
昨日は、榎にも気のせいだと思わせるために、あえてはぐらかした。
だが、榎の性格なら、きっと一人ででも、嫌な気配の正体を探ろうとする。
だから三人は、放っておけなかった。
「椿たちだけで、気配の正体を見つけて倒しましょう。えのちゃんに、心配を懸けさせちゃ駄目よ」
いつまでも、榎の力に頼っているわけにはいかない。三人の気持ちは、一つに纏まっていた。
「うちらが三人揃っとれば、どんな妖怪が出てきたって楽勝で倒せるんや。その辺り、ちゃんと榎には分かってもらわんとな」
「安心して、名古屋での生活に戻ってもらいたいどす」
三人は、決意を固めた。
直後。明るくなりはじめた夏の空に、奇妙な空気が漂いはじめた。
周囲の竹林が、ざわめく。
辺りを警戒しながら、庵に背を向けて身構えた。
既に、得体の知れない何かに、取り囲まれていた。
黒い、煤の塊が歩み寄ってきた。人の影みたいな形状をしている。
その数は、十体。三人に向かって、徐々に距離を詰めてきた。
「お前たちが、四季姫か。我らの長、鬼閻を屠った、憎らしき四季姫か」
「ただの小娘ではないか。しかも、一人足りぬぞ」
「本当に、こやつらが鬼閻を倒したのか」
鬼閻――。その名前が相手の口から出た瞬間、悟った。
この奇妙な連中は、悪鬼だ。
「新しい長の、ちんたらしたやり方では、待てぬ。我等が、鬼閻の仇をとろう」
悪鬼たちの目的は、四季姫への復讐か。なんとも、物々しい雰囲気だった。
「こんなに仰山、悪鬼がおるとはな。恐ろしい世の中やで」
柊が、表情を引き攣らせる。
「悪鬼さんたちにとっては、鬼閻を倒したうちらは、悪者なんどすな」
人間社会の平和のため、良かれと思って行った戦い。
その結果、とんでもない弊害を招いてしまった。
「鬼閻も、悪鬼の世界では慕われたお方やったんでしょう。見方が変われば、善悪は逆転するどす」
「だからって、椿たちも大人しくやられるつもりはないわ」
四季姫は、四季姫の正義に従って、正しいと思える行動を成し遂げた。
だからこそ、不満をもって批難してくる存在があったとしても、屈する気は毛頭ない。
妨害するものがいるならば、退治するまでだ。
「先日、鬼閻を倒した時ほどの力は、出せへんでしょう。気張らなあきまへんな」
以前は、朝から返してもらった前世の四季姫の力によって、なんとか鬼閻を倒せた。しかも、相手は長い封印で、かなり弱っている状態だった。
今回は、そんな幸運を望めそうになかった。
目の前の悪鬼たちを確実に倒せる保証などない。
でも、やるしかなかった。
「何がなんでも、倒してみせるわ!」
髪飾りを握りしめ、三人は四季姫に変身した。
早朝から、椿、楸、柊の三人は、示し合わせて外で落ち合った。
月麿が住処に使っていた、庵の前。
封印解除が終わってから、月麿はどこかへ引越したらしく、一度も姿を見ていない。
だが、四季姫絡みで何かある度に来ていた場所だから、今でも自然と集合場所になっていた。
「二人とも、気付いとったか? 昨日、榎の背後に、嫌な気配がまとわりついとった」
庵の脇にもたれ掛かり、柊は腕を組む。
椿と楸は、頷いた。
昨日の展望台での一件。榎が変な感じがする、と騒いだ時、三人も何らかの異変に気付いていた。
「一つでは、ありませんでしたな。かなり多い、複数の気配どした」
全員の意見は一致していた。人だとは思えない、嫌な威圧感だった。
「また、妖怪かしら。もう、戦わなくてもいいと思っていたのに」
「何が目的かは分かりまへんけど、放っておくわけにもいきまへんな。榎はんは責任感が強いどす。再び人間に仇す妖怪が現れたと知れば、きっと倒すまで京都に居残ろうとするはずどす」
「融通の利かへん奴やからな。すぐに無茶しよるし」
昨日は、榎にも気のせいだと思わせるために、あえてはぐらかした。
だが、榎の性格なら、きっと一人ででも、嫌な気配の正体を探ろうとする。
だから三人は、放っておけなかった。
「椿たちだけで、気配の正体を見つけて倒しましょう。えのちゃんに、心配を懸けさせちゃ駄目よ」
いつまでも、榎の力に頼っているわけにはいかない。三人の気持ちは、一つに纏まっていた。
「うちらが三人揃っとれば、どんな妖怪が出てきたって楽勝で倒せるんや。その辺り、ちゃんと榎には分かってもらわんとな」
「安心して、名古屋での生活に戻ってもらいたいどす」
三人は、決意を固めた。
直後。明るくなりはじめた夏の空に、奇妙な空気が漂いはじめた。
周囲の竹林が、ざわめく。
辺りを警戒しながら、庵に背を向けて身構えた。
既に、得体の知れない何かに、取り囲まれていた。
黒い、煤の塊が歩み寄ってきた。人の影みたいな形状をしている。
その数は、十体。三人に向かって、徐々に距離を詰めてきた。
「お前たちが、四季姫か。我らの長、鬼閻を屠った、憎らしき四季姫か」
「ただの小娘ではないか。しかも、一人足りぬぞ」
「本当に、こやつらが鬼閻を倒したのか」
鬼閻――。その名前が相手の口から出た瞬間、悟った。
この奇妙な連中は、悪鬼だ。
「新しい長の、ちんたらしたやり方では、待てぬ。我等が、鬼閻の仇をとろう」
悪鬼たちの目的は、四季姫への復讐か。なんとも、物々しい雰囲気だった。
「こんなに仰山、悪鬼がおるとはな。恐ろしい世の中やで」
柊が、表情を引き攣らせる。
「悪鬼さんたちにとっては、鬼閻を倒したうちらは、悪者なんどすな」
人間社会の平和のため、良かれと思って行った戦い。
その結果、とんでもない弊害を招いてしまった。
「鬼閻も、悪鬼の世界では慕われたお方やったんでしょう。見方が変われば、善悪は逆転するどす」
「だからって、椿たちも大人しくやられるつもりはないわ」
四季姫は、四季姫の正義に従って、正しいと思える行動を成し遂げた。
だからこそ、不満をもって批難してくる存在があったとしても、屈する気は毛頭ない。
妨害するものがいるならば、退治するまでだ。
「先日、鬼閻を倒した時ほどの力は、出せへんでしょう。気張らなあきまへんな」
以前は、朝から返してもらった前世の四季姫の力によって、なんとか鬼閻を倒せた。しかも、相手は長い封印で、かなり弱っている状態だった。
今回は、そんな幸運を望めそうになかった。
目の前の悪鬼たちを確実に倒せる保証などない。
でも、やるしかなかった。
「何がなんでも、倒してみせるわ!」
髪飾りを握りしめ、三人は四季姫に変身した。
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